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第二十三話 晩餐会のドワーフ料理

 大玄洞の魔導灯の光度が順々に落ちていくわ。

 ここの魔導灯は外の光と連動していて、夜間は半分ぐらいになるのよ。

 洞窟の中は昼夜が解らないから、こうやって灯りで洞民に時間を教えるのね。

 もっとも暗くなると言っても昼間の半分ぐらいの光量で、あたりが見えなくなるほどでは無いのよ。


 ヴァルナルさんに案内されて迎賓窟へ戻るわ。

 大玄洞の道は迷路みたいだから、地元の人と一緒じゃないと絶対に迷うわね。


「おかえりなさいまし、お嬢様」

「ワンワン!」


 ワン太を胸に抱いたアデラが貴賓室の前でお出迎えしてくれたわ。


「アデラも休めた?」

「はい、ワン太と一緒にお昼寝してすっきりです」


 アデラには御者をやってもらって大変でしたからね。

 彼女がいなければ世界樹の街から出られなかった所よ。

 いつもありがとうね。


「大玄洞長のお使いが来まして、これから晩餐を一緒にどうか、との事です」


 あら、どうしましょうね。

 ドワーフの下町で庶民料理をたべましょうかと思っていたのだけれど、首長からのお呼びなら断っては失礼になるわね。


「そうだね。せっかくの外交の機会だし、晩餐会に出よう」

「そうですわね、リジー王子、私に異存はありませんわ」

「わかりました、伝えてまいります」


 アデラからワン太を受け取って、ソファーに座ってくつろぐわ。


「明日、魔導列車に乗れば、半日ほどでアリアカ国境だね」

「まあ、魔導列車は速いのね」


 さすがに前世の新幹線ほどの速度は出ないでしょうけど、機関車ぐらいの速度はでるようね。

 助かるわ。


 ワン太の背中をなでなで。

 ああ、素晴らしい手触りでおちつくわ。

 はぁもふもふもふもふ。


「ワン太も大人しくて良い子だね」

「ええ、ずっと飼っていたいぐらいですわ」

「ワンワン!」


 僕も僕もという感じにワン太は鳴いた。

 本当にペットのいる生活は癒やしですわね。



 しばらくすると、アデラがやってきて、晩餐会のお部屋に案内してくれた。


「晩餐の形式は、コースかしら」

「いえ、大皿で取り分ける系の宴会みたいですよ」


 晩餐会のホール窟は魔導灯がこうこうと輝いていて、ゴージャスな空間だった。


「やあ、リジー皇太子、フローチェ皇太子妃候補、今晩はささやかながらドワーフ料理でおもてなししますわい。お楽しみくだされ」


 立食式ではなく、テーブルに座って大皿料理から好きなだけ取って楽しむタイプの宴会みたいね。

 エルフの森共和国では見られないお肉料理がどさどさというか、お肉料理しか無いわね。


「ヨルド大玄洞長、素晴らしい晩餐会へのご招待、ありがとうございます」

「菜っ葉食いの国では碌な物を食べられなかったでしょう。ささ、心ゆくまでご馳走をおたべください」


 ヨルド大玄洞長は手ずからリジー王子のカップに透明な液体をついだ。


「これはドワーフの火酒ですな。宴会の最初にはこれ、と決まっております」


 大玄洞長は私のカップにも火酒をついでくれた。

 うわ、凄くお酒くさい。

 アルコール度数がすごそうね。


「それでは、アリアカ王国とドワーフ大玄洞の未来に、乾杯っ」

「「乾杯!」」


 一口飲んで見て、喉が焼けたわ。

 ウイスキーよりも酷いお酒ね。


「「ごっほごっほ」」


 リジー王子と二人で咳き込んだわ。


 晩餐会は穏やかに進行していくわ。

 お酒はワインに変えてもらいました。

 火酒なんか、ドワーフ以外飲めないわよ。


 でも、大玄洞長の奥さんも、お子さんも、かぱかぱ飲んでいるわね。

 末席にヴァルナルさんとマミアーナさんもいるわ、大玄洞長の一族なのかしらね。


 ああもう、顔が熱いわ。

 リジー王子も真っ赤ね。

 それでも、久しぶりのガツンとしたお肉は美味しいわね。


「牛や豚はどこで育ててらっしゃるの?」

「大玄洞の外に牧場がありましてな、家畜はそこで育てておりますぞ」


 やっぱり、家畜さんには太陽の光が必要ですものね。

 お野菜なんかも外で作ってるのでしょう。

 パンに必要な穀物はエルフの森共和国からの輸入でしょうね。


 ドワーフ大玄洞とエルフの森共和国は仲が良くないけれど、貿易は盛んなのよね。

 不思議な関係だわ。


 ドワーフ料理は基本的に甘塩っぱいわね。

 味が濃いのでお酒必須で、ドワーフさんは火酒をストレートでグイグイやって、甘辛肉をバクバク食べているわ。

 ダイナミックな食欲で見ていて気持ちがいいわね。


「エルフの森共和国の革命軍の侵攻は大丈夫でしょうか?」

「なに気にすることあねえよ、リジー王子、エルフの軍隊はあきれるほど弱ええ。問題は魔王軍だが、あいつらは強いが洞窟内に暴れ込むほどじゃあねえ」

「大玄洞は大丈夫ですか」

「ああ、こっちの方はエルフの森口と呼ばれてるが、大玄洞の反対側は魔王領と接してる、よく攻めて来ちゃ追い返してるぜ。洞窟の中のドワーフほど強ええ戦士はいねえのよ」


 大きな肉をがぶりと噛みちぎりながらヨルド大玄洞長はニヤリと笑ったわ。

 確かに、洞窟特化の魔物もいるけど、圧倒するほどの数を集められないわね。

 魔王軍は魔物の各氏族の集合体だから、洞窟戦に強いアラクネ族を集めれば強いのだけど、万も集めると氏族が全滅する恐れもあるのよね。


「我々がアリアカに入りましたら、軍隊を編成して戻りますので、ご安心ください」

「おお、兵を挙げて菜っ葉食いの国を攻めるのか、ドワーフ大玄洞もいっちょ乗ってもいいぜ」

「頼もしいですね」

「エルフの森共和国の本当の主力は森の中にこもってる爺の魔法使いだ、あいつらが出てくるとやっかいだが、若年の軍隊と魔王軍の派遣ならどうって事ねえからさ」


 今回のクーデターは基本的にエルフの軍だわ。

 ハフトン村のお爺さんたちを見る限り、軍に手を貸す老人はいなさそうね。


 アリアカ軍とドワーフ軍が世界樹の街に侵攻して妖精王を助け出したら、話は終わりそうね。


「ワンワン!」


 テーブルの下でご馳走をぱくついていたワン太が鳴いた。

 そうね、再侵攻の時にこの子の家族を探して帰さないとね。


 明日、魔導列車で国境までいけば、この騒ぎも終わりだわ。

 もう一番、アリマ関とお相撲を取りたい所だったけれども。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 現実にも96%というほぼほぼエタノールなスピリタスというお酒が 消防法の管轄でガソリンと同等の管理を要求されるという
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