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第二十話 ドワーフ大玄洞へ到着する

 ハフトン村を出て一日、ようやくエルフの森が切れて山岳地帯に馬車は入ったわ。

 天蓋山脈がその雄大な姿を見せているわね。

 山脈の中央部にドワーフ大玄洞の入り口があるはずよ。


 ゲスマンさんが旅に同行したがったのだけれども、馬車で寝ることが出来るのは三人だし、物資が足りないので断ったわ。

 逃避行中だと十分なお相撲の指導もできないしね。

 今は一刻も早くアリアカに入らないと。

 ドワーフさんたちの協力を得られれば良いのだけれどね。


「お嬢様、大玄洞の入り口です」


 アデラの声に、リジー王子と一緒に窓からのぞき込むと、大きな洞窟の中に街道が続いていた。

 さすが技術立国のドワーフ大玄洞ね、馬車が入れる道が洞窟に続いているなんて。

 エルフの森共和国との国境は夜半に越えたのだけれど、ドワーフ大玄洞の領地の方が道が良いわね。

 やっぱり鉱物資源を輸入したり、できあがった製品を輸出したりで道は大事なのでしょう。


 アデラが馬車を止めた。

 いかめしいドワーフさんが二人、槍を持って近づいて来た。

 門番さんかしらね。


 ドワーフさんというのは主に洞窟に住む小柄でがっしりした種族よ。

 鉱物を掘り出して加工する事に長けているのよ。

 伝説に残るような、魔剣や聖剣、魔甲冑は彼らが作った物が多いわね。


 リジー王子と一緒に馬車を下りる。


「私はアリアカ王国、皇太子のリジー、彼女は皇太子妃候補のフローチェだ」

「これはこれは、ドワーフ大玄洞にようこそいらっしゃいました」

「エルフの森共和国でクーデターが起こり、少数の者で避難してきたのだ、玄洞長に面会したい」


 門番ドワーフさんたちは警戒を解いて笑顔を見せた。


「それは災難でしたな。エルフの森共和国の政変はこちらでも聞いてはいます、ですがかの国とは国交が無く情報がありません。出来れば事情を教えて頂けるとありがたいです」


 エルフさんたちと、ドワーフさんたちは民族的に仲が悪いのよ。

 文化的に相容れないらしいわ。

 隣国同士なのに公式には国交が無く、でも物資の流通だけがあるらしいわ。

 大玄洞からは工業製品、エルフの森共和国からは穀物や食糧ね。


「エルフの森共和国の宰相ミキャエルが魔王軍を引き入れ兵を興したようです」

「魔王軍の手を借りるとは、なんという愚かな」

「菜っ葉食いどもめが」


 伝令のドワーフさんが駆けてきて、門番さんに耳打ちした。


「玄洞長がお待ちです、ささ、馬車のままどうぞ、私が先導します」

「よろしく頼む」

「ははっ」


 ちょっと兜と甲冑が豪華なドワーフさんが馬車の前を駆けだした。

 私たちが馬車に戻ると、アデラが馬を走らせた。


「ワンワンワン!」


 ワン太が洞窟の壁を見上げて吠えた。

 ハチの巣状にかなり洞窟の壁面が高い所まで住居になっているみたいね。

 オレンジの魔導灯の中を馬車はひた走った。


「凄い場所ね」

「そうだね、こんな事でもなければ訪問できなかった場所だよ」

「全部済んだら、ここにもまた来たいわね」

「そうだね、大玄洞はドワーフの居留地として最大の場所だからね」


 ドワーフさんたちは千年以上の時をかけて、天蓋山脈の掘り抜いて大都市を築いているのよ。

 彼らは一人一人が勇敢な戦士で職人よ。

 ここを魔王軍に落とされたら、ドワーフの工業力に頼っている人間の国の戦闘力も落ちてしまうわね。


 馬車が大玄洞の深部まで到達すると、大きくて豪華な彫刻で飾られた石造りの玄関の前で止まったわ。


「リジー王子、お嬢様、ドワーフ大玄洞の宮殿窟ですよ」

「まあ、豪華な彫刻ね」

「すごい技術力だね」

「ワンワワン!」


 ドワーフの戦士たちがドラゴンと戦っているわね。

 躍動感がある彫刻だわ。


「ささ、こちらへ、リジー皇太子」

「うむ」


 リジー王子はマントをひるがえして颯爽と歩くわ。

 見事な建築物を背景にすると、王子は伝説の英雄みたいね。

 素敵だわ。

 はぁどすこいどすこい。


 門番隊長さんに案内されて、宮殿窟の中に入ると大きなホールになっていたわ。

 奥まった豪華な石作の椅子に白髪の立派な老ドワーフがいたわ。


 ちなみに、ドワーフさんたちはふさふさとしたひげで小柄で腕がぶっといので、個人個人の見分けがあまりつかないわね。

 髪とか髭の色で識別するしかないのよね。


「おうっ、リジー王子、久しいな」

「ヨルド大玄洞長、ごぶさたしております」

「最後に会ったのが立太子の儀の時だから、一年ぶりぐれえか、次はフローチェさんとの結婚式かと思っていたぜ」

「ええ、その時はご招待いたしますよ」

「おう、楽しみにしてんぜ」


 白いお髭のお爺ちゃんドワーフはカカカと笑った。

 相変わらず豪快なお方だわね。


「菜っ葉食いの国で何かあったっていう話だな、詳しく教えてくれ」

「はい、宰相ミキャエルが魔王軍を世界樹の街に引き込んでクーデターを起こしました。現在、エルフの森共和国はエルフ革命軍の手中にあります」

「妖精王はどうしたい? あれはチャラい馬鹿だが、魔法力だけはとんでもねえ、木っ端エルフに負けるような奴じゃあねえぞ」

「解りません、急病で倒れたと言ってましたから、監禁されているのかもしれませんね」

「ちっ、難攻不落の世界樹の街も敵を引き込まれたらどうにもなんねえか。大玄洞も調略に気をつけないとな」

「ミキャエル宰相は、魔王軍と合同で大玄洞を攻め、その後アリアカに侵攻すると言ってました、とにかく私たちはアリアカに早急に帰り、王に急を告げます」

「そうか、まったく難儀な国だぜ。解った、緊急事態だ、ドワーフ大玄洞は全力を持って友好国アリアカのリジー皇太子に協力する」

「ありがとうございます、ヨルド大玄洞長」


 良かった、ドワーフ大玄洞の協力が得られそうね。

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