表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地方公務員の異世界奮闘記  作者: 風猫(ふうにゃん)
第一章 異世界転生 紛争の渦中へ
7/23

第七話 ボーナ伯爵領の領民救済作戦(改稿1)

 第一話から、全面的に改稿中です。終わり次第、続きを投稿しますので、しばらくお待ちください。

 その年の秋、シルベスター領内では、張り巡らされた灌漑用水路と、規則正しく植えられた正条植えのおかげで、大豊作となったが、近隣のボーナ伯爵領、その隣のワークス侯爵領やライズ男爵領では、干ばつの被害で例年の半分以下の収穫しかない飢饉の状況となっていた。 


 ワークス侯爵領やライズ男爵領では、税としての作物の納入を免除し、また、他領から食糧を購入して領民に支給するなど、救済措置が取られたが、ボーナ伯爵領では、全く救済措置が行なわれず、それどころか、今年のほとんどの収穫を、領民から税として徴収したため、早くも、飢餓に陥る領民が続出していた。


「ボーナ伯爵には、困ったものじゃのう。領民が飢えているというのに、王城に助けも求めず、ただ無策のまま放置しておる。」


「うちの領民達も、隣の領民のことですから、知人や親戚もおりやす。食糧を分けてやりたいが、持ち込めば領兵に取り上げられちまうってんで、八方塞がりで悲鳴が聞こえるようですぜっ。坊、なんとかしてやらな。」


「う〜ん、食糧の持ち込みは、無駄でしょう。ボーナ伯爵の兵士に取り上げられ、領民の元へは届かないでしょうね。

 飢えた人達をこちらに避難させるほかありませんね。問題は、領境の設けられた関所と領兵でしょうか。難民の数は、どのくらいになると予想されますか?」


「農民ばかりでなく、街の住民も加わると、少なくとも7〜8千人はいると見込まれやすね。」


「なんと、ボーナ伯爵領の兵士達を除いた大半ではないか。それでは、避難ではなくて、領民の乗っ取りになってしまうぞっ。」


「父上、それだけの人々が、飢えて死のうとしているのです。このまま見過ごして良いものでしょうか。」


「しかし、仮にボーナ伯爵領に攻め込むとしても我が領の兵力は、最大限集めても300人そこそこしかおらん。対して、ボーナ伯爵領は、10倍以上の兵力だぞっ。」


「父上、領兵達にも家族がいるでしょう。その家族も苦しんでいるはずです。

 それに、カルロ達が流した噂で、人々の不信も高まっています。

 僕がボーナ伯爵領の兵士達を説得してみます。うちの兵士を50人ばかり、連れて行かせてください。」



 ボーナ伯爵領の関所に着くと、200人程の兵士達が守備を固めていた。僕は、通販で購入した拡声器を使い、関所の兵士達に呼び掛けた。

「ボーナ領の兵士達よっ、お前達は何を守っているのだっ? このままでは領民のほとんどが飢えて死に絶えるぞ。お前達の家族だって例外ではない。来年の秋には耕す者がいなくなった畑に何も実らず、お前達の食糧も尽きる。


 隣のワークス侯爵領やライズ男爵領では、領主が領民に税を免除し、さらに食糧を配給しているのだぞっ。

 それがどうだ? ボーナ伯爵は、自分の面子のために王城への救援要請もせず、しかも今年の収穫のほとんどを取り上げて領民の飢餓を放置しているのだっ。

 領民を見殺しにし、領地を疲弊させる伯爵は、いずれ王城から罷免されるだろう。

 お前達も伯爵に従った者として、処断される。少なくとも領兵を解雇され路頭に迷うことになるだろう。

 それでいいのか? お前達のすべきことは領民や家族を守ることではないのか?

 我らは、飢えに苦しむ人々を救済に来た。元凶である非道なボーナ伯爵を取り除きに来たのだ。」


 領兵の指揮官の一人が叫び声を上げた。

「えぇい、何をしておるっ。この者達を打ち取れっ。さもなくば、伯爵様に打ち首にされるぞっ。」


「そうかなっ。非道な伯爵に従うお前を、ここにいる兵士は、どう思っているかなっ。

 兵士達よっ、民を苦しめる伯爵に加担する、民の敵である指揮官を討てっ。

 そして、自分達の力で、自分達を守るのだっ。

 あとのことは、シルベスター男爵が引き受けるっ。」


「「「ウオー、領民の皆を守るのだぁー。」」」 


 威張り散らすしかできない指揮官は、僕の声に煽動された周りの兵士に襲いかかられ、動かない死体へと変わり果てた。

「者ども続けっ、これよりボーナ伯爵を討伐に参るっ。」

「「「ウオー。」」」


 領主の館に辿り着くまでには、多くの領民達が加わり、数千の群衆に膨れ上がった。

 領主館の前で、立ち塞がる兵士達に、再び、ボーナ伯爵の無能を訴える。

 阻止しようとした指揮官達は、反乱した兵士達によって、なす術もなく討ち取られた。

 そして、領主館になだれ込んだ、暴徒と化した群衆によって、ボーナ伯爵はなぶり殺しにされてしまった。


 僕は、伯爵の最後を見届けると、興奮覚めやらない群衆を落ち着かせるために、再び拡声器を握った。

「聞けっ、飢えて苦しむ人々を救うのだっ。皆で協力しろっ。

 まず、できるだけ馬車を用意しろ。病人や女子供、老人を馬車に乗せ、順次、シルベスター領に向わせるのだ。

 着き次第、食べ物を与え、養生させる。


 馬車の御者達は、折り返しシルベスター領から、食糧を積んで戻って来い。そのように手配はする。


 これより兵士達は、シルベスター男爵の兵士となれっ。

 最初の仕事だっ、街道と領内に狼藉者が出ないよう警戒につけっ。食糧の荷馬車が届き次第、領民に配給を行えっ。直ちに取りかかれっ。」


 僕は、従者1名にシルベスター領へ、先駆けをさせ、炊き出しの準備と、病人や老人、女子供の受入の準備。そして、食糧の輸送の手配を父上に伝言させた。

 一方、持って来た食糧と、ボーナ伯爵邸から運び出させた食糧を、街の広場で炊き出しをさせた。

 当面、シルベスター領に送り込んだ女子供達の体力の回復を待ち、僕がボーナ領で食糧の補給と配給を担いながら、農地の改良を進めることにした。


 さて、僕達から王城へは報せなどしないけど、このことを知ったら、何と言ってくるかな。

 場合によっては、防衛戦だな。ボーナ領の兵士達は、皆、シルベスター領に組み入れたし。

 いざとなれば、シルベスター領に住民皆を避難させて、シルベスター領で孤城すれば良いか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ