第六話 別視点 従者達から見たゲリラ戦(改稿1)
書き下ろしなので、順次、改稿しております。大幅な改稿でストーリーが変わっても、驚かないでください。
俺とミコトは、幼い頃からの遊び仲間で、領主様の息子だが、少しも偉ぶらねぇで、二つ年上の俺のことを、タメ口で脳筋トールと呼びやがる。
もう、付き合いも俺が7才、ミコトが5才の頃からだから、かれこれ10年にもなろうか。
ミコトには、同じ年のグランとシェリフという仲間がいて、ガキ大将だった俺とは距離を置いていたが、ある時、グランの妹ミーナの髪の色が、珍しい赤毛だったので、つい馬鹿にしてしまった。
泣き出したミーナを見たミコトは、それまで見たこともない怒りの形相で、俺に挑み掛かってきた。
「謝れっ、ミーナに謝れっ。ミーナの髪の色は、神様が決められたことだ。お前がいい悪いを言う権利はない。
謝らないなら、そんなふうにしか人を見れない、お前の目を片目にしてやる。」
そう言って、死にもの狂いで、俺に挑み掛かってきた。本気だ、本気で俺の片目を狙ってやがる。俺は、領主の息子を本気で、怒らせてしまった。
そして恐怖に震えた俺は、地面に頭を擦りつけて、謝った。俺は馬鹿だ、弱い幼い娘を考えもせずに、いじめてしまった。
俺が土下座して謝る姿に、ようやく泣き止んだミーナに、ミコトは言った。
「ミーナ、ミーナの髪の色は、神様が選んでくれた色だよ。僕はきれいだと思うし、ミーナの両親だって、グランもシェリフもそう思っているのだから、自慢してもいい。」
それから俺は、心を入れ替えた。不合理に立ち向かうミコトの姿に、心酔したからだ。
俺が15才の成人を迎え、貧乏農民の次男だったために、仕事をさがしに領外へ出ようとした時、ミコトが引き留めてくれて、領主の従者に推挙してくれた。
領主様の前で、「こいつは、間違いに気付いたら、土下座をして謝れる男です。従者として、領民を守れる男です。」そう言ってくれた。
従者になってから、俺はミコトのことを『若っ』と呼んでいる。領主様の息子だから、皆からは『若様』と呼ばれているが、俺だけ親しみを込めて『若っ』だ。
今回、ボーナ伯爵領軍を迎え撃つため、若が出陣すると聞いた時、どんなことがあっても、ついて行こうと決めた。
幼い頃から智慧者の若のことだから、2,000の軍にも、引けをとることはねぇだろが、時々、後先考えずに無茶をする癖がありやがるから、俺が守らねばならねぇ。
俺達は、若の後をついて、鬱蒼とした山の中を進み、夜に暗い中で小型のパワーショベル3台を駆使して、穴を掘り木杭を打ち込んでその上に偽装をした落し穴を作る。
また、パワーショベルでロープを引き、弾力のある木をしならせて、木のつたを使い、竹の矢を何本も仕込んだ罠を作る。矢にはマムシとかいう蛇の猛毒を塗った。
俺は、頭にライトという、照明の付いた軽いが頑丈な、ヘルメットという帽子を被り、防寒防水だという衣服に、防弾チョッキという衣服を着込み、登山靴にゴム手袋という装備で、パワーショベルも、若が成人の儀で授かったギフトで自由に呼び出せるし、しまえるのだとか。
考えると頭が混乱して、何が何だか解らなくなるので、俺達は、《若》というギフトだと思うことにした。
俺達は、夜中に作業して、朝方には敵方から離れ、昼間に睡眠をとることを繰り返した。
そして5日目の夜、本陣にいる指揮官に対して、襲撃を掛けることになった。
またまた、若のギフトで、空を飛ぶ不思議なものを呼び出し、強力な火炎瓶を持たせて、本陣の指揮官を襲撃した。
皆は、若から渡された赤外線スコープという、夜でも明るくしかも間近に見える道具で襲撃の成果を見守っていたが、強力だという火炎瓶で指揮官を襲ったのを見て、唖然とした。
退却して行くボーナ伯爵軍を見届けた後、俺達は帰途についた。
今回俺達が使った装備は、衣服も含めて、パワーショベル以外は、全て各人に支給された。
言い忘れたが、2連装のボウガンと、伸縮して80センチから320センチまで伸びる、軽金属製の槍とともに。