第四話 カルロ商隊現わる(改稿1)
領内の種撒きも終った6月になり、いよいよボーナ伯爵の軍勢が攻めて来た。狭い渓谷の道を数珠つなぎになって。しかし、渓谷の賄賂の出口には、深い堀と城壁が、立ちはだかっていたのである。
隘路のため、渓谷の出口では、50人ほどでいっぱいになり、城壁からの投石機による1.5リットルのペットボトルの火炎瓶と、ボウガンの攻撃になすすべも無く、出口から500メートルのところまで下がって、動くことができなくなった。
そして結局、3日後には退却して行った。
それから、また1ヶ月後。僕がグラン達と、村はずれの農機具小屋で、秋の収穫に備えて、脱穀機や精米機の検討をしているところへ、
「ミコトさまぁ~、ミコトさまぁ~。大変ですぅ。」
屋敷で働いている侍女のジーナが、大声で叫びながら走って来る。
「どうしたのジーナ、誰か怪我でもしたの?」
この領地で大怪我をした者を治療できるのは、僕しかいない。
「いいえ、はあ、はあ、そうではありませんが、外から、はあ、商隊が来たそうです。
それで、領主様がミコト様をお呼びです。渓谷の城壁までおいでください。」
「そうか、わかったよ。すぐ行くよ。ミーナ運転を頼むね。」
ミーナの運転するパジェロミニに乗り、急いで渓谷の城壁に駆けつけると、城壁の外に10台ほどの馬車と、40人ばかりの商隊がいた。
「おお、ミコト来たか。商隊が取引を求めてきたが、護衛の奴らがどうも怪しい。ボーナ伯爵の手の者が紛れ込んでいると思うがどうだ。」
「《MAP》で見ると)商隊の護衛の者達は、皆、敵意がある赤○になっています。おそらくボーナ伯爵の手の者でしょう。」
「そうか、惜しいがこの商隊は追い返そう。」
「父上、敵意を持つ者だけ、追い返しましょう。手向えば倒します。」
「うん? 方法は任せるが、気を付けるのだぞっ。」
僕と従者3人で、門を出て商隊の前に出る。
「武器を捨ててください。でなければ、ここは通せません。」
「俺達は、この商隊の護衛だ。武器をもたないと役にたたん。このまま通してほしい。」
「そこの者の剣に、ボーナ伯爵の紋章があるのは、なぜですか?」
「なに、ばかなっ?」
「手向えば、容赦しません。おとなしく帰ってください。」
でも、護衛達は、僕達に剣を抜いて切りかかってきた。その護衛達には、城壁の上から一斉にボウガンの矢が降り注ぐ。僕と従者達は剣で、護衛達の左右の腕の腱を切り、武器を使えなくした上で放置する。
「申し訳ありません。商人のカルロと申します。ボーナ伯爵領で捕まり、護衛の者達を取り上げられ、シルベスター領に同行せよと、脅迫をされました。」
「ボーナ伯爵は、この領地を奪おうとしているのです。でも、この城壁で攻められずにいるのです。とりあえず、中に入ってください。取引もしたいですから。」
「ありがとうございます、助かりました。」
カルロ達は、門をくぐり街道に出ると、広くて平らな路面や、整然とした農地と灌漑用水路、そして青々と育つ作物に驚いていた。
今までに全く見たことのない景色を見て、驚愕しながら、案内するガルバに、いろいろ尋ねている。ガルバの奴、テキトウすぎるだろ、そんな説明じゃ。誤魔化すにしても、もっと信憑性を持たせないとっ。
カルロと年配の男性の二人と、館で、父上とガルバ、僕で商談だ。
「初めてお目にかかります。王都でロイズ商会をしておりますガリバー·ロイズの息子、カルロ·ロイズと申します。隣にいるのは、商隊長をしておりますベンと申します。
この度は、ボーナ伯爵に捕らえられていたところを助けていただき、誠にありがとうございました。」
「いや、謝ることはない。ボーナ伯爵が我が領を攻めようとして、そち達が利用されたのじゃ。気にすることはない。」
「そのように言っていただくと助かります。」「儂の隣におるのは、嫡男のミコトじゃ。それと家宰のガルバじゃ。」
「ミコト様、ガルバ様、よろしくお願いします。
ところで、領地を拝見して驚いたのですが、ずいぶんと農作物が豊かでございますね。
収穫のおりには、私どもと取引をお願いできませんでしょうか?」
「うむ、こちらとしても、大きな商会との取引は望むところなので、よろしく頼む。」
「えぇ、是非にお願いします。収穫後の時期に、商隊を寄越しますので、お待ちください。」
「カルロさんにお願いがあるのですが、よろしいですか?」
「なんでしょう、ミコト様。私にできることでしたら、なんなりとお申し付けください。」
「王都で我が領に、移住者を募集してほしいのです。農民だけでなく、店や宿をやる商人、物を作る職人、そして職をさがしている者達も。
移住に応じてくれる人には、一人につき10銀貨(10万円)を出します。家族にも一人につき5銀貨出します。赤ん坊でもです。
こちらにくれば、家も与えます。必要とする者には、店や工房も。
ただ、今はボーナ伯爵のことがありますから、少人数での移動で、目立たないようにお願いします。」
「畏まりました、そのような好条件であれば、すぐさま多くの者達が、応募するに違いないです。私におまかせください。」
カルロには、栽培を始めたばかりだが、胡椒や唐辛子、山椒などの調味料と、領民に配っている小麦を売って、移民の資金とした。
まあ、秋には収穫できる作物だから、異世界からの調達品だけど、許されるでしょう。
カードローンが増えてるかも知れないけど、秋の売上で補完しますっ。