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地方公務員の異世界奮闘記  作者: 風猫(ふうにゃん)
第二章 ワークス侯爵領の代行編
18/23

第五話 豊穣の秋と、収穫祭

 まだ残暑が見え隠れする9月、畑には『たわわ』に実った小麦、大麦、ライ麦が穂を垂れている。

 見た目だけでも、平年の倍以上の収穫だと、民達が大騒ぎしているようだ。

 領都では、備蓄のための倉庫の建設が進んでいるが、代官達から当初の計画では、とても足りそうもないと、悲鳴が上がっている。

 

 大丈夫っ、僕はちゃんと見越して、当初計画の3倍の備蓄倉庫を建設してるから。

 並行して、春に編成したワーライシル(三領合同)職人組合では、ワークス侯爵領とライズ子爵領で使用する、農機具生産が急ピッチで、進められている。

 

 大量の長柄鎌も、千歯扱きも、水車小屋に設置する製粉機も、来週から納品されるように、手配済なのです。

 それを今日の定例代官会議で発表したら、『そんな大事なこと、早く知らせてくださいっ。』って、お叱りを受けたけれど、代官達の誰も困ってるなんて、言ってなかったもんっ。


「皆さん。ミコトさんてっ、皆さんのはるか上のことを、考えていられる方なので、私達がたとえ、諦めるしかないと『ボヤク』ようなことでも、お耳に入れれば、とんでもない答えが返ってくる方なのですっ。」

 ユリアさんが、フォローにならないフォローを言っていた気がします。



 とにもかくにも、月末には、用意した農機具の大活躍もあって、1週間で収穫作業が終りました。

 結果、多少農地の拡大の影響もあり、麦類の収穫量は、平年の4.1倍を記録しました。

 これに、ジャガイモやトウキビなどの導入穀類を加えると、実に5倍を超える大豊作となったのです。

 

 そして続けての『重大発表』。以前まで税率が5割でしたが、『ユリア様の領主就任を記念して』今後、特別な場合を除き、4割に改正と発表されたのです。


 ユリア様の、領民からの人気が、絶大なものになったのは、言う間でもありません。

 飢餓の時の難民救済に駆けずり回り、その後も気さくに、人々に話し掛けるユリア様が、領民達から嫌われる訳がありません。

 ということで、ユリア様の領主代行を、早期に領主に昇格させて、僕の領主代行補佐期間を短縮するという、『代行補佐』脱出計画も順調です。



 決算期間の年末まで、まだ間がありますが、服飾組合の貴族向けドレスの販売は、ワークス領が担っていますし、併せて、スイーツや特産品の販売は、初年度ですが、ワークス侯爵領の年間税収の3割に達しています。

 そのような理由で、今年の税収は、豊作でもあり、税率を引き下げたにもかかわらず、前年の2.5倍に達する見込みです。



 ワークス侯爵が心配しておられるだろうからと、ユリアさんから、無線で、領内の状況をお知らせしたら、侯爵のお返事は、お褒めの言葉ではなく、苦情だったそうです。

 曰く、国中の『海塩』の調整で多忙を極めていたというのに、収穫を倍増させる農地改良をやらかしたり、服飾産業に革命を起こしただけでは、飽き足らず、農機具や化粧品などの生活用品まで、次々と新しいものを開発しおって、国中に噂が広まっているというのに、それらを[秘匿]しなきゃならん、儂の苦労を少しは、察せよ。

 そして僕への伝言。父上の元へ、多数の貴族家から縁談が行って、そのうち断り切れなくなるから、早く婚約せよですって。

 

(えっ、うちの情報露出、早っ。それに縁談かぁ、息子で遊ぶのが好きな母上が嬉々として、楽しんでいるような気がします。はぁ。)

 


 収穫時期も終った10月中旬、秋植えの前にと、急きょ『収穫祭』が催されました。

 去年の干ばつによる飢饉を乗り越えて、豊穣の秋を迎えることができたのは、領民皆の頑張りだから、領都で盛大に催すことになりました。


 例年の『収穫祭』では、収穫した作物の一部を、式典で領主に捧げ、領主から慰労の言葉があって終わるのだそうですが、「『祭』じゃないじゃんっ。」という僕の一言で、大変更になりました。


 収穫作物の奉納と、領主からの慰労の言葉に加えて、奉納された作物で、炊き出しを行なって、人々に振る舞うこと。お酒も収穫作物から作られるのだから、奉納し振る舞う。

 式典の会場に舞台を設け、街や村ごとに、歌や踊りの余興をやってもらう。優秀な余興には、賞品を出す。(参加賞も。)

 炊き出しの他に、各々の代官達で、食べ物の屋台を出し、自分の街や村の宣伝をする。



 すっかり僕の無茶振りに馴れたのか、話が纏まると、すばやく帰って行った代官達でした。

 ですが、『収穫祭』当日になってみると、街や村の余興では、練習を重ねたあとが伺える、子供達の揃った踊りや、笛や太鼓の演奏、地元に伝わる歌だという合唱、お神楽のようなものまで、

 審査員には、ワークス侯爵夫人や僕の父上と母上、それにライズ子爵夫妻にお願いしていたのですが、


『夢中になって見てしまって、ちゃんと審査できなかったわっ。 by 侯爵夫人。』

『子供達が可愛くてっ、そこにばかり目が行ってしまうのよっ。 by 母上。』

『すごいわねぇ、さすが侯爵の領地ねぇ、領民の皆さんも気品があるわっ。 by ライズ子爵夫人。』


 僕としては、代官の皆さんの努力の屋台を褒めたい。

 各々の地区の収穫作物を使った『野菜お好み焼き』や『果物クレープ』、『野菜餡かけ焼そば』、『地鶏スープそば』、『鶏のたこ焼き』、その他、いも団子、蜂蜜ポテトチップス、カエデ蜜饅頭など、この収穫祭が初デビューの食べ物の屋台が並んだのです。



 収穫祭は、半端なく大成功っ。

 ところで、主役のユリアさんはというと、壇上で慰労の言葉を述べたあと、ずっと僕と腕を組んで、屋台の食べ物を食べ捲くっています。

『縁談が増えないように、してあげているのよつ。感謝なさい。』

 

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