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地方公務員の異世界奮闘記  作者: 風猫(ふうにゃん)
第二章 ワークス侯爵領の代行編
15/23

第二話 農業改良事業と代官教育

 領内の干ばつの被害状況について、詳細がまとめられた。食糧が不足する人々については、個々に毎月必要量を補助することした。受けとった食糧を横流ししたり、過分に消費させないためです。


 農地及び農民を、遊ばせておかないように、枯れた作物の焼却処分と、ジャガイモの栽培、そして、灌漑用水路の整備と畑の区画整理を、春の作付けまでのノルマとしました。


 ここで僕は、あえて禁じ手を使いました。ジャガイモの秋植えの時期には、2ヶ月ほど遅かったので、各農家に20mずつ透明なビニール布を配布したのです。透明ビニールを敷いたジャガイモのマルチ栽培を実施させたのです。30Cm間隔で、65本の苗を植えることができます。

 この世界には、まだないビニールを使うことに踏み切ったのは、ジャガイモの生育には、10度以上の気温が必要であり、1〜2月には、10度以下になるこの地域のことを懸念したためです。

 もし、せっかく植えたジャガイモが、全く栽培できなかった場合の、農民達の落胆を防ぎたかったのです。

 灌漑用水路の整備には、パワーショベル20台をフル稼働しましたし、農民にはツルハシやスコップを配布して、農地の整備を、集団による人海戦術で行ないました。大勢で力を合わせて作業をしたことで、張り合いが出たためか、作業がたいそう捗りました。

 

 そしてこれを機会に、全戸25反の均等農地面積とし、不足分は新たに開墾しました。

 ブルドーザーも20台動員して、畑の整地や道路の整備をしました。その光景に、皆さん驚愕し、そして興奮していました。


 工事の完成時には、リッパに生まれ変わり、もう、干ばつを恐れなくても、よくなった畑を眺めながら、地域ごとに、『完成打ち上げ』の酒盛りをやりました。

 お酒は、エールと今年シルベスター領で、初出荷した焼酎です。

 父上が、宣伝のためと、息子の我儘で皆が、苦労した慰労だと言って、無償提供してくれたのです。

 そんなことで、僕より父上の人気が、うなぎ上りなんです。



 代官達には、毎週、個別に報告書を持参させ、面接の上、細やかに指示を与えました。

 それは、問題の把握、取組み方、解決策の発想の仕方について、躊躇なく判断できるようになるまで続けました。

 幸い、皆、春までの3ヶ月ほどで、身につけてくれました。身につけた者から、報告期間を2週間としたので、かなり必死になって、取り組んでくれたようです。


 春3月、麦の正常値植えの研修会を、代官達から始めました。代官達が各地域で何回も講習会をやってもらうため、実地の作業もしてもらいました。

 普段やったことのない農作業に、四苦八苦している代官達に、『これから研修で、100回はできるから、そのうち上手くなりますよっ。』て、冗談めかして言うと、代官のひとりが

『若は、つくづく鬼の血を引いて、いなさると思いますぜっ。』と言って、皆が大笑いした。

 この頃、代官の皆さんは、僕に慣れて来て、シルベスター領からついて来た連中が呼ぶ、『若っ』て、呼び名を使うし、平気で揶揄したりするんだよね。まあ、気さくに話せるようになったのは、いいことなんだけどね。


 今年の春麦の収穫予想量は、平年の3〜4倍。皆には増えるはずとしか、言ってないけどね。それは、収穫の時のお楽しみだから。

 


 これらのほかに、代官達には宿題を出しています。21地区各々で、特産品を作ること。

 地区の領民達と、うんと話せば、ヒントは必ず見つかるはずと、言っておいたよ。

 おかげで、代官達と領民達の距離も、ぐっと縮まったはずですっ。


 2月末の第一次提案の時は、しょぼい提案ばかりだったので、もっと発想を広げるように、はっぱを掛けたけどね。

 

 3月末の第二次提案の際は、少しまともな提案になってきたけど、まだ足りないんだよね。

 結局、地区の特徴を聞いて、僕が特産品を提案したんですよ。

 農産物では、大豆、お茶、唐辛子、大蒜。大豆は、〔豆腐、油揚げなどの二次製品の開発を含む。〕

 果実では、ぶどう、イチゴ、杏子。〔果実はなま物だけでなく、果実酒の醸造まで含む。〕

 副産物としては、麦藁帽子、その他藁製品の開発。菜野菜の漬物の開発。

 副業として、炭焼き、茸栽培、もやし栽培、木の駒を使ったオセロや、双六などのゲーム製品。

 これらは、他の地区と重複しても、地域の特性に、合致していればよいとしました。



 ただ、個人的に余計な面倒ごとを、招いてしまいました。オセロや双六の試作品を作ったのですが、ユリア様が毎晩挑戦して来て、困る(うざい)のです。

 疲れるから止めようと言うと、『私の相手をするのが、そんなにお嫌ですかっ。』とからまれてしまうのですっ。『はぁ、こんなユリアさんには、僕の心は、ときめかないのです。』


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