第10話 親睦の夕食会と、オンライン会談
また長くなりました。時間にご注意ください。
ユリア様達が来られたその日は、父上と母上やユリア様の護衛10名の方達、さらにうちの隊長達15名を交えて総勢30名の夕食会を開いた。
ボーナ領の兵を組み入れてから、お客様が来ての夕食会は初めてなので、僕は張り切って料理長のウェイトさんにあれこれ指示して、20品もの料理とデザートを作ってしまった。
領主館の厨房には、僕が密かに『ゴルバ2号』と呼んでいるゴリラタイプの料理長ウェイトさんの他に、痩せノッポの料理人セバさんと、小太りの見習い料理人トルク君、そして給仕もする下働きのメアリーおばさんと若奥様のキャサリンさんがいる。
僕がまず作ったのは、〘じゃがいも、人参、玉ねぎ、鶏肉〙セットで作るシチュー5品。牛乳で作るクリームシチュー、濃厚な味のビーフシチュー、淡白な味のポトフ、香辛料の効いたスープカレー、そして、シチューではないが、肉じゃが。市販ルーで作ったので、簡単だ。
次に作ったのは、サラダ2品とアラカルト多数。サラダは、キャベツ、玉ねぎ、サラダ菜、ミニトマトに、ハムを入れた野菜サラダと、キャベツに、リンゴ、オレンジ、イチゴ、ぶどうをまぶしたフルーツサラダにした。ドレッシングは、マヨネーズと青じその2種類を用意した。
アラカルトは、串かつ、シンプルに塩胡椒の豚肉の串焼き、串に刺した手羽先、各種焼き鳥串など。それから、ローストビーフに、焼いたじゃがいもと、トウキビ。
ご飯物は、ローストビーフサンドや、ポテトサンド、和風のキツネうどんも出した。
母上に喜んでいただくデザートは、生クリームを添えたフルーツゼリーに、シフォンケーキ、チョコレートのフォンデュ、そしてプリンアラモードを用意した。
厨房の皆さんは、野菜の皮むきや刻む下拵えを終えると、僕の周りに集まり、摘み食いに夢中になっている。
「若、ジャガイモってものすごく使い道があるもんですなあ。驚きやしたぜっ。」
「あっ、忘れてたっ。ありがとうウェイトさんっ。」
そう言って僕は、追加でポテトチップスとフライドポテトを作ったのだった。
夕食会は、父上の歓迎挨拶とユリア様のお礼の挨拶で始まり、食事をしながらの歓談となったのだが、食事が始まると何故か静まり返ってしまったのです。
皆が皆、夢中で料理を食べまくっていて、誰も口を聞かないのです。
皆が満腹になってようやく、歓談が始まりました。
「マリア様っ、驚きましたわっ。こんな豪華なお料理を食べたのは、生まれて初めてですっ。シルベスター領には、こんなにも美味しいお料理があったのですね。」
「いいえ、私も初めて食べたのよ。今日のお料理は、料理人達に指示して息子が作ったものなの。
息子は、成人の儀で女神ウィンザー様から祝福を授かり、それ以来不思議な知識を授かるようになったのよっ。
私を喜ばせるために、今までいろんなスイーツを作ってくれていたけどお料理は初めてよ。」
こんな美味しいお料理を食べられるなら、ミコトさんのお嫁さんになりたいっ。そう思ったのは、見かけに依らず根が食いしん坊なユリアだったからである。
夕食会には、少ないがお酒も出しました。領内で作られているお酒は、エールだけで、ワインは領外で作られる高級品です。
僕は、樽の発泡酒と、チリ産の赤ワインと白ワインを出しました。発泡酒と白ワインは、冷たく冷やして。これもものすごく好評です。
もちろん、母上とユリア様用に、オレンジとリンゴ、パイナップルの各ジュースも用意しました。
ユリア様達は一泊限りで、翌日の朝食後には慌ただしく帰って行った。
夕食会で、女性が母上と二人きりだったせいか、ものすごく仲良しになっているのがちょっと気になったけれど、女性にとってデザートの力は偉大なのだと僕は納得したのです。」
ユリア様達が去って、3日後の夕方に、早くもワークス侯爵から、無線連絡が入った。驚いたことに、ライズ男爵ともつながっていた。
ユリア様は、うちの館を出立と同時に、ライズ男爵に直行で、無線機を届けさせたようです。
「シルベスター男爵、久しいのぉ。この度は災難であったの、ボーナめの陰謀にさらされ危うい目に会ったとか。無事でなによりじゃった。」
「侯爵閣下、ありがとうございます。この度は、ご令嬢にもかかわらず使者として差し向けていただき、感謝にたえません。
また、貴重な情報をいただきありがとうございました。」
「なに、内密で漏らせぬ話もあったのでな。息子がおらんで男まさりの娘に育ってしまったわ。はははっ。
娘が言うておったぞ、大層な晩餐をして歓迎してくれたと。この儂に、いかに料理が絶品であったかと話して終わらん。」
「それは、喜んでいただけたなら、ありがたく、、、。」
「シルベスター男爵、ライズです。ご無沙汰しております。侯爵閣下は、話好きで話が長くなるので、口を挟ませていただきました。
この度のご苦労、お察し申します。そして、このような貴重な無線機を与えていただき、お礼申し上げます。
それで、侯爵様からは、2,500人、うちからは、600人で助成致します。なにか作戦を考えておられますか?」
「ありがとうございます、ライズ男爵。
現状うちの総兵力は、ボーナ領の兵士を吸収したので、2,500人。防備の兵を残すと、動員できる兵力は、最大2,200人程です。
作戦については、息子のミコトから説明させていただきます。ミコト、説明せよ。」
「はい父上。ワークス侯爵閣下、ライズ男爵閣下、ご無沙汰しております。ミコトでございます。」
「おおっ、ミコトか、5年ぶりかのう、久しいのぉ。」
「ミコト君、成人したんだってね。おめでとう。」
「ありがとうございます。それで、貴族連合軍を迎え撃つ作戦なのですが、戦場はライズ男爵の領地のはずれ、ワークス侯爵領に近い、丘陵地帯になると考えています。
貴族派の軍は、陛下の許可もなく、兵を出すのですから、ワークス侯爵閣下の領内を通ることは憚れます。下手をすれば、ワークス閣下の領地を攻めることになりますから。
そうなれば、進路はそこしかありません。
丘陵地帯は、起伏も多く、見通しが悪い場所です。我が領の500人の兵で簡易な陣地を設け、迎え撃ちます。そして、味方に被害が出ないうちに、退却させます。わざと、敵の追撃を受けながら。
退却した先には、我が領の本隊1,200人で本陣を構えます。そして追撃してきた貴族連合軍が体制を整える位置の左右に、侯爵閣下と男爵閣下の軍を伏せて置き、敵が我が本陣に攻め掛かった頃合いを見計らって、三方から包囲して攻撃します。
侯爵閣下の兵のうち、1,000人の兵は、別動隊として、敵の後方に回してください。退却する貴族軍を待ち受けていただきます。
ライズ男爵の元には、我が領軍から、500人を差し向けますので、伏兵にお加えください。
以上が考えている作戦です。 」
「うん、私も敵の通り道は、あの丘陵地帯と考えていたよ。ミコト君の作戦に賛成だ。」
「なかなかの作戦じゃの。これでは貴族派の軍は、全滅するかも知れんのぉ。
もし、この戦いで、貴族派の軍を壊滅させられれば、このあとは、王国の貴族派を黙らせれるわい。」
こうして、貴族派連合軍の迎撃作戦が決まり、ライズ男爵が、戦場となる丘陵地帯に、数カ所の監視所を設けると言ってくれた。




