王子、異世界召喚する
ある部屋に二人の男がいた。
いや、部屋というよりは、広間といった方がいいかもしれない。
そこは豪華な作りをしていたが、この建物の中では質素なほうだ。
「……殿下、本当に行おうのですか?」
「ブレイブ、ここは二人しかいない。堅苦しいのはやめてくれ」
「はいはい。で、本当にやるのか」
「……ここまで来たんだやるしかない。こちらの都合で喚んでしまう異世界人には申し訳ないが…」
「…………」
ここは世界グレンツェンの中の一国、グランデ国の王城の一室にあたる。
グランデは長い歴史を持ち、気候豊かな穏やかな国だ。
国土はあまり広くはなく小国といえるが、長きにわたる列強各国の戦争に巻き込まれながらも国を保ち続けていた。
しかし、強国の戦争を挑まれば、いつ侵略されてもおかしくはない。
さらに、最近ではどの国も異世界人を召喚しており、戦力や内政といったものが格段に進化している。
それ故に、国々間の緊張が高まっており、異世界人の力で他国と戦争が始まってもおかしくない。
そういった状況にあるため、グランデも異世界召喚をせざるを得なくなったのである。
ここいる二人はグレンデ国の王子とその側近にあたる騎士だ。
王子の名はロイ。
明るい金髪に碧眼というまさしく乙女が夢見る白馬の王子様と言えるだろう。
大変に優秀であり国内外で評判もいい。
剣や魔法の腕もよく素晴らしい。
王子という立場におごり高ぶることもなく、国をより良くしようと日々邁進している。
騎士の方はブレイブ。
落ち着いた赤色の髪に緑色の目。
どこか軽薄な雰囲気があり、女性に対して軟派な態度を取ることも多い。
しかし、名門貴族の生まれでロイの幼なじみでもある。
王子の側近、騎士に実力で上り詰めた人物であり、こちらも大変に優秀である。
公私でも二人の仲はよく、グレンデを守ろうと誓いあっている。
今回の異世界召喚も何かあっても対処できるよう、他の反対を押しきって二人で行うことにした。
「何時までもこうしていてもしょうがない。さぁ、始めるとしよう!」
ロイが詠唱を始めると、大きな魔方陣があらわれた。
魔方陣と魔方陣を何十にも重なりあっていく、目も開けてられないくら光を放ち、一際光かがやいたと思ったら魔方陣の中心に何かがいた。
「くそが!あの神ふざけやがって!ハゲになる呪いをかけてやる!!!!!」
魔方陣の中心には赤いTシャツにジーパン、スニーカーというごくごく普通の格好に、顔には犬のマスクをした奇妙すぎる男が立っていた。
区切りが良さそうなところでページを変えると、どうしても一話が短くなる……