魔法使いが現れた
馬車で30分くらいかけて、依頼主の家に着いた。お屋敷のような家だから、多分貴族だろう。いや、依頼主の詮索はいけないな。
よし、毒林檎を届けて私は魔搭に戻ろう。屋敷の前だと怪しまれてしまうかもそれない。どうしようか……。
「あら、シンデレラ!今から部屋に行こうと思っていたんだけど、よかったわ。すれ違いになるところだったわね」
え、誰この人。
「驚かないで頂戴。私は魔法使いよ。シンデレラは、舞踏会行きたかったんでしょう?私が叶えてあげるわ」
魔法使いって言った?って言うかこの人魔法使いのお偉いさん的な人じゃないか。シンデレラって何?灰かぶり?私灰なんて被ったことないんだけど。
「あ、あの、私はシンデレラじゃ……」
「さぁ、ドレスアップよ!」
どうやら私は変な人に捕まってしまったみたいだ。私は毒林檎を届けに来ただけなのに。
でも驚くことに私のローブは綺麗な青色のドレスに変身した。使い古した靴も、ガラスの靴に変わった。ガラスって割れたらどうなってしまうんだろう。こわ。
「貴女は綺麗な金色の髪なんだから素敵にしなきゃもったいないわ」
そう言って魔法使いは私の髪を魔法で綺麗に編み込んでいった。うわぁ。すご。これが魔法搭のトップの力。
「馬車カモーン!」
魔法使いがそう言って手を叩くと、豪華な馬車が現れた。何これ。あ、分かった。これは夢だ。夢であってくれ。
「さぁ、これで貴女は立派なプリンセスよ!」
「いやいやいやいや!私シンデレラじゃ!」
「そう恥ずかしがらずに~、素敵な舞踏会へ行ってらっしゃい。……あらそのかごはなに?王子様へのプレゼント!?健気ねぇ。応援したくなっちゃう」
「ちょっと!!!」
「12時になったら魔法は解けちゃうから。それまでに帰って来るのよ~」
12時になったら魔法が解けてしまうなんてショボッ!いや、そんなこと思っている暇なんてない。
私の言うことなんて聞かずに馬車は進んでいく。いやだ!舞踏会になんて行きたくない!
でも、戻った所で依頼主はいないだろう。よく考えたら分かることだった。だって依頼主は女の人だ。しかも貴族。舞踏会に行かないわけがないだろう。
……行ったら会えるだろうか。シンデレラが誰なのかは分からないけど、損はしたくない。この舞踏会で絶対に依頼主を探すぞ!…やっぱだめだ。沢山の人の所へ行くと怖くなってしまう。魔搭に帰りたい!
弱気になったら駄目だ。私は強い私は強い私は強い私は強い。
そんなことを考えている間にお城に着いた。早くない?これも魔法なのだろうか。やっぱりすごいのかもしれない。
馬車から降りると、兵士みたいな人がいた。
「参加する方ですか?」
今更だけど、魔女って参加したらダメなんじゃなかったっけ。もういいや!とりあえず勢いだ!
「ええ、そうです」
「どうぞ、お入り下さい」
扉を開けてもらうと、中にはきらびやかな世界が広がっていた。ここに入るのか……。私は手に持っている毒林檎のかごをぎゅっと握りしめ、一歩を踏み出した。
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