53話 解放される迷宮都市
街とダンジョンの建設を始めてから、あっという間の数ヶ月――
急ピッチで行われた作業によって、新たな街が完成しつつある。
◇最近の出来事
・ダンジョンコアがBランクにアップ
・近隣の街ファナリスとドラグニア帝国の友好同盟が締結
・奴隷や希望者達が、街へと移住
・限定的にダンジョン開放5Fまで
大幅な配下と領域の増加のおかげなのか、コアがランクアップした。
収入も大幅に増えて余裕が出来つつあり、新たなダンジョンでは……森林や草原フィールドなどといった疑似空間を、ダンジョンポイントによって環境設定している。
近隣の街ファナリスでは、全権委任の役目を持ち、帝国の代表という肩書きを持った執事のセバスが、領主と何度も話し合いをして、武具と薬の定期的な取引を条件に、ドラグニア帝国の新拠点である迷宮都市を、正式に認めてもらう事が出来た。
そしてすぐさま動いたのが、新たな住人の確保。
商会の従業員を筆頭に、独り身だったり新天地を希望する者達、そして有り余る資金を使い、お金に困った人や、奴隷として売られていた者達を集めている。
◇地上の都市人口
・人型の眷属 58
・配下モンスター 48
・奴隷 52
・移住者 75
◇
ハンターでさえ立ち入る事の無い、魔の森の奥地。
そこには、巨大な城壁が聳え立ち、白いお城と防御塔を中心に、網の目のようにきれいに整えられた城下町が建築されている。
まるで前世で見た『姫路城』のようなお城――
この迷宮都市ジュエルシティにある、ダンジョンマスターの居城である。
「ふぅ。やっと完成してきたなぁ~」
「わぅ。きれいなお城と街になりましたね」
居城であるお城から外を眺めて、物思いにふけるマスターとマシロ。
街の構想は、マスター達が暮らす居城を中心にして、平安京のような……網の目状に、きっちりと整えられた区画を作っている。今はまだ住人は少ないが、今後の事を考えて広大な敷地面積となっている。
さらに、敵が来ても素早く対応できるように、ワイバーンが余裕をもって発着できる広さがある防御塔を、お城の左右に建設してある。
「あ~っ! そういえば、カタパルトも設置してみたいなぁ。……やっぱりダメ?」
「わぅ。ダメです! 魔力強化して、ぶん投げた方が早いです」
マシロにおねだりのポーズをしながら頼むマスター。あっさりと却下されて、しょんぼり気分である。
まさに異世界。物理の法則を駆使して考えられた兵器よりも、ファンタジーな魔法を使った攻撃の方が、有効的となる場面が多い。
カタパルトよりも……スリングのようにして、人力で投げ飛ばす方が威力があるというのは、まさに予想外だった。命中率はカタパルトの方が安定するが、その威力があきらかに段違いで、設置は見送られる事になる。
他にも、ファンタジーならではといった物が多々ある。
城壁や居城を守るように、設置された水堀と水路――
なんとその水堀と水路は、敵の侵入を防ぐだけではなく、魔法合戦のための防御陣にもなっている。
属性元素といわれる、火・水・土・風の4属性を操る魔法攻撃には、柔軟に形状を変化して対応出来る水属性の防御は、非常に有効となる。
前世の知識を使って考えると、普通なら……城壁の『外側』に設置する水堀。
だが、味方が魔法で操作しやすく、敵に操られないようにと考えると……城壁の『内側』に、水堀を設置する事になった。
異世界で、前世の知識をそのまま使おうとすると、痛い目にあう事になる――
ここは魔法のあるファンタジー世界。それを考えた上で、都市建設も行っていかなければいけない。
「それにしても、人が居なくて殺風景だなぁ」
「わぅ。これから増えそうですが、まだまだ少ないですね」
ほとんどの建物が、誰も住んでいないという寂しい街。
人型のドッペルやヴァンパイア達を増やしてはいるが、ポイントには限りがある……。これからは、移住者をさらに増やして、活気のある街にしていきたい。
人が増えれば、それを管理する行政府が忙しくなりそうなどと、様々な問題点はあるが、思いつく限りの事は、事前に配下達に知識を教えたりして、対応していっている。
知識だけあっても、実戦では予想外の事がたくさん起きてくる。
それに対応しながら、円滑に街を運営していくのは、本当に大変そうだ――
「考えすぎると、疲れちゃうなぁ。よし、お菓子を作って気分転換しよう!」
「わぅ!? あの甘い食べ物は大好きです!」
嬉しそうに何を作るか考えるマスター。
その傍では……目がキラリと光り、獲物を狙う目をしたマシロが、お菓子と聞いて興奮している。
ダンジョンでも大量生産が始まった、砂糖・バター・小麦。
それを使った果物のケーキは大好評で、城下町に建てられたパンケーキの商店は、列が出来る程に大人気となっている。
「今日は、新メニューの……アイスクリームを作っちゃうぞ!」
「わぅぅ!? アイスクリィーーム!」
興奮して襲い掛からんばかりのマシロに、若干引き気味のマスター。
忙しい中でも、上手く気分転換をして、楽しみのある生活にしていきたい。
思考はすでに……どんな形のアイスクリームを作ろうかなぁ~。などという事でいっぱい。興奮したマシロと共に、居城にある台所に向かうのであった。
そして、甘い匂いに釣られてやってきた者達が、大量に押し寄せる事となる――




