猟団新規勧誘編ー07ー
昔、家族みんなでどっかの山登りに行った。当時の俺(小6)でも、じぃちゃんばぁちゃんでも歩いて頂上を目指していたのだからそれほど高い山でなく、ピクニック気分でいける気楽なコースだったんだと思う。
山の名前に記憶はなくても、鮮明に覚えている記憶がある。中腹あたりで休憩を取ったとき、見上げるとそれまでの緑生い茂った視界の狭い山道とは異なり、一気に景色が広がった。目の前を遮る樹々はなく、小さな岩がむき出しの砂利のような光景が目に入る。そしてその先に頂上が、はっきりと見えた。
「あ、頂上もうすぐだ。うねうねした山道行くより、このままこの砂利の坂を
まっすぐ最短で登れば、近そうだなぁ?これはすぐ着けるな」
そう思えるほど、見上げた頂上を近くに感じた。手に届きそうなその光景を見て、すぐ到達出来ると錯覚してしまった。そこからは両親の注意を振り切り、一人いちもくさんで駆け登った。曲がりくねった遠回りの山道を利用している誰よりも、先に頂上につける最短の道を見つけたと言う喜びに溢れていた。子供らしい発想というか、無邪気というか、とにかく無敵状態だった。
中腹で見上げた時、あれほど近くに感じた頂上。ところが登っても登っても全く近づく気配がない。おかしい??ほんの少し登れば、頂上につけると思ったのだ。最短コースを登っているのに、景色が全然変わらない。そしてついには息も切れ、登り疲れ、その場に座り込み、その一連の流れでフッと後ろへと振り返ってしまった。
それは、先ほど中腹から見上げた雄大な光景とは真逆のものだった。いきなり急斜面の景色が襲ってきた。登ってきた時の傾斜は全然楽勝だったのに、見下ろした瞬間まるで直滑降のような今にも下に転げ落ちるそんな印象を感じた。
その瞬間、恐怖が生まれ、もうその場から一歩も動けなくなった。泣きながら「助けて〜」と叫んでいる俺のところへ、普通に山道を歩いてきた父が妹を背負って助けに来てくれた。そして父の背中越しから妹が言った
「おにぃは、、、、ダメだねぇ」