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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

姫都幽希短編集

私と人形。

作者: 姫都幽希

 人物紹介


 彩花……主人公。医学科の大学生。人形にはまり始めた。

 店長……優しい雰囲気の人形屋の店長。元医者。


「いらっしゃい、彩花ちゃん」


 ここは町の隅の人形屋さん。

 ショーウィンドーには三十体以上の人形が飾られている。

 まるで生きているかのような人形達。

 日本人形ではなく西洋人形。

 美しい瞳に長い睫毛。水の流れのようなサラサラした髪。

 それに引かれて私はこの店に入った。

 そして人形に嵌まってしまい、最近はほぼ毎日通っている。


 店長さんーーと言うかこの店には人形技師の彼一人しかいないーーは三十代の優しい目をした男性。

 人形をとても愛していて、全く何も知らない私に色々なことを教えてくれた。


「やあ、お金は貯まったのかな?」


「ううん、ご免なさい、冷やかしみたいになってしまって。あと二ヶ月でなんとか貯まると思います」


 人形は一体安くても2万を越える。

 相場よりも高いらしいが、ネットなんかで見てみてもこのお店よりクオリティーの高いものは見つからなかったし、何よりこのお店に少しでも貢献しようと思ったので、ここで買うことにした。

 私が欲しいのは店の中で見かけた一体の人形。

 まるで人間のような美しい造型。大きさは50㎝程だが、腕に浮いた血管や髪の生え方一本一本までがリアルで、目が離せなかった。


「やっぱり彩花ちゃんはその人形が欲しいんだね。少し位なら値下げするって言ってるのに」


「いいえ、やっぱり正規の値段で買いたいんです。学生だからって安くしてもらったら、店長さんにも他のお客さんにも申し訳ないです」


「そっか」


「はい。所で、この子本当にリアルですよね」


「うん、そうだね。その子はロシアの女の子がモデルになってくれてね。髪とかも少し分けてもらったんだよ。気持ち悪いかな?」


「そうだったんですか!道理でリアルなわけですね。もう今すぐ動き出しそうで、気持ち悪いなんてかえって思えないです」


「そっか。それはよかった。その子の名前はアリーシャって言うんだ」


 改めて人形ーーアリーシャちゃんーーを見る。

 浮き出た血管。髪の毛。光彩。

 それらすべてが完全に模写された少女人形だったなんて。


「あ、店長さん。また作業場を見せてもらっても良いですか?」


「うん、構わないよ。でも、階段には近寄っちゃ駄目だよ」


 そう言うと、店長さんは二階に行ってしまう。

 このお店は一階が売り場と作業場、二階が店長さんの家、地下一階が倉庫になっているらしい。

 倉庫の中には貴重な素材や温度湿度をしっかり調節しないといけないものが有るから入っちゃいけないらしい。


「わあ~、本当に綺麗」


 大小様々な手足。棒に刺さった硝子玉。

 なにも知らない人からしたら殺人現場に見えなくもないが、ファンの人にはまるで博物館に見えるだろう。

 奥には一枚のポスター。

 内容は、等身大の人形を作っていると言うもの。

 値段はなんと100万から。高いものは2000万を越えている。

 店長さんに聞くと、お金持ちのコレクターさんが買ってくれるらしい。


「凄いなぁ。私もこんな人形を作ってみたいなぁ」


 そんなことを思いながら作業場を見て回る。

 暫くすると、いきなり地下から物音が聞こえてきた。

 それも、何かが落ちるような音じゃない。ドンドンドン、と壁を強く叩くような音だ。


「地下には行っちゃいけないって言われてるけど……」


 本とかでも絶対に行っちゃいけない流れだと理解している。

 でも、好奇心には勝てなかった。

 私は爪先を静かに階段に向けた。


 ☆ ☆ ☆


 カツン、カツンと階段に音が響く。

 ローファーの踵が地面を叩く。


 無限に続くかと思うほどの緊張感。

 でも、実際には殆ど距離は無かった。

 階段を降りきり、側のスイッチを点ける。

 すると……

















 沢山の檻。

 凡そ二十を越えるであろう刑務所のような檻。

 中は空のものも有れば、少女が入っているものも有る。

 首枷、手枷、足枷。鎖で繋がり、檻の端にはバケツがひとつ置かれている。そこがトイレの代わりだろう。

 反対側を見ると、ドアが二つ。

 1つは開いていて、薄暗いもののベッドが一つ置かれているのが解る。

 もう片方は閉まっている。

 開けてみると、目を閉じた等身大の裸の人形が置かれていた。


 ……いや、人形じゃなくて人間だ。

 呼吸に合わせて胸が上下している。

 まるで人形のような少女だ。

 肌は白磁のように白く、胸にはピンク色の突起。肩や肘、膝や足首なんかにはボールが噛まされている。


「ぼ、ボール?」


 見間違えでもなく、ボールが噛まされている。よく見てみると、肩から先が人形のものになっている。太股から先も同じように。


「ひっ!」


 後ずさる。すると、何かに肩がぶつかる。


「彩花ちゃん?地下には行っちゃいけないって言ったよね?」


 ニコニコと笑う店長さん。しかし、その笑顔は狂気が見え隠れしている。


「あ、あれ、人間ですよ……ね?」


「うん?一寸違うかな。あれは元人間だよ。今は僕の作り上げた人形。ほら」


 目の前の人形になってしまった少女が目を開ける。

 私の方を見ると、少し驚いた顔をして、それから花のように笑った。


「まるで人間のように動く人形が欲しいと思ったことは無いかな?僕は、自分で作ることにしたんだ。人間から人形を」


 私はその人形少女から目を離せなくなっていた。

 美しい瞳。艶やかな髪。肌はまるで作り物のように透き通っていて、シミ一つ無い。


「目が離せなくなっちゃったみたいだね。それじゃあその子の話をしてあげよう」


 店長さんが椅子を二つ持ってきて、側に置いた。


「その子の名前は密。数ヶ月前から行方不明になっていた少女だよ」


 そんな事件がニュースで流れていたような気がする。


「人形に作り替え始めたのは三ヶ月前。体を人形に代えたのも同時期。心も人形になったのは二週間くらい前かな」


 心を人形に?そんなことは可能なのだろうか?


「どうやって、って顔をしてるね。僕は元医者だよ。手足を落として人形のと差し替えるだけだよ。心は……、あっちを見てみて」


 店長さんが指差したのは右手前から三番目の檻の中。

 椅子に座ったまま動かない裸の少女。

 手足は人形になっている。


「ああやって、現実を教えてあげるんだ。手足を動かしたくても動かない。人形のように振る舞っていれば3食は保証されていて、持ち主によってはテレビや何かを見せてくれる人もいる。だったら、逆らうよりしたがった方がいいと思い知らせるんだ」


 視線を目の前の人形少女に戻す。


「目はダークグリーン。髪はブラック。肌は白磁。手足の素材は白樺。欲しくなってるでしょ?」


 欲しい。欲しい。欲しい。

 この()()が欲しい。


「君って確か医学科の子だよね?」


「は、はい」


「なら丁度良いや。僕の後を継がないかい?」


「え?」


「ここを見られたからには、君も人形になるかどちらかの選択しか無いけどね。君は僕と同じ人種だよ。成れる成れる」


 私が人形技師に。

 彼女のような人形を作れる職人になれる?


「君って独り暮らしだよね?アパートを引き払って、近くのマンションに住みなよ。僕の弟子なら、伝で話を通せるし、そこのマンションなら普通の人は住んでないから人形も置ける。その子もプレゼントするよ」


 もう一度人形を見る。

 まるで何かを伝えようとするように目でこっちを見ている。


「おや、密も君と話をしたいみたいだね。良いよ」


 店長がそう言うと、密が話始める。


「私の名前は密。貴女の名前は?」


「私は彩花だけど……」


「彩花さんね。私を買ってくれないかしら?どうせ買われるなら、お金持ちのおじ様よりも貴女のような美少女がいいわ」


「密は彩花ちゃんが気に入ったみたいだね」


「彩花さん、お願い。私を買ってくれないかしら」


「彩花ちゃん。僕の後を継いで、この子と暮らさないか?場所や何かも手配しよう。使用人も居る。収入はサラリーマンとは比べ物にならない。出会う男性もお金持ちばかりだ。しかも、医学科なら、手足を替える手術もやり易いだろう」


 悪魔の囁きが私を傾ける。

 悩む。いや、悩んでいる振りをして居るだけかもしれない。

 答えなんて、決まりきっているのかもしれない。


「解りました。この子を下さい。マンションとこの子の世話をする使用人も手配してください」


 私は、悪魔に心を売り飛ばした。


 ☆ ☆ ☆


「それじゃあ、行ってくるわね、密」


「ええ。行ってらっしゃいませ、彩花さん」


「それじゃあ、メイドさん。この子のお世話をよろしくお願いします」


 私の名前は彩花。

 ()()()()をしている。


 ~おしまい~

 この物語はフィクションです。

 実際の人物、団体、その他とは一才関係有りません。

 また、このような行為を助長する目的で書かれたものでは有りません。


 とつけないと心配な今日この頃。

 こんな作品を書くのは始めてです。

 現在書いているときは1/8。あと少しでセンターと言う状況です。

 何やってんだよ私。

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