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第二怪 前編

 0


 「コダマ、キミにはまず、奇妙な話を集めてもらいたい」


 百怪対策室内。応接室。

 室長が用意した雇用契約書にハンコを押して、正式に助手として雇われることが決定してからの室長の第一声がそれだった。


 「奇妙な話? なんですか、それ」

 「そのまんまだ。怪談でも怪現象でも、怪人の話でもなんでもいい。そういう話を探してみてくれ。とりあえず実績がないことには百怪対策室に正式に依頼が来ることがないだろうからな」


 ん? 何かおかしなことを言ってないか?


 「ちょっとまってくださいよ、室長。もしかして百怪対策室って、立ち上げたばかりなんですか?」


 僕の質問に、室長はポケットからシガリロを取り出して(くわ)える、という動作で返す。


 「……立ち上げたばかりなんですね。そんなんでよくやっていけましたね」

 「誤解するんじゃない、コダマ。別にそういうわけじゃない。ただ、一般人に対しての認知度が著しく低い。それだけの話だ」


 どういうことなんだ?

 さっぱりわからん。


 「依頼してくる奴はいるんだが、今まで一般人からの依頼はほとんどなかった。大抵は警察とか、そういう方面の関係だったからな」


 顔に出てしまったらしく、室長が説明してくれた。

 なるほど。今までの百怪対策室はそっちの方面の御用達(ごようたし)だったわけだ。

 なら、なぜ一般人に対して門戸を開こうという気になったのかは気がかりだ。


 「なんでまた一般人に対して依頼を受け付ける気になったんですか?」


 考えた時には()いてしまっていた。

 室長は苦虫でもかみつぶしたかのような顔をした。


 「統魔(とうま)からのお達しでな。私も本意ではないんだが、そうしないと結構面倒なことになってしまう。面倒事は嫌いだから、しょうがなく私もやっている、というわけだ」


 統魔? なんだろう。説明して欲しいようなしてほしくないような。微妙な感じだ。

 強いていうなら、聞かなくてもいい事実という予感がする。

 そんなものは勘弁して欲しい。

 とりあえず聞き流すことにした。


 「わかりました。とりあえずは僕の周辺ぐらいから色々と聞いてみます。とは言っても、高校一年生の情報網なんて大してコトはないですけどね」

 「そのへんは期待してない。勝手に『怪』のほうから飛び込んで来るはずだからな」


 ?


 八月一日の夜。そんなやりとりをしながら、僕は百怪対策室の助手になったのだった。



 1


 「なあ小唄(こうた)、お前の周りで変な噂とかないか?」


 八月二日。夏休み序盤。


 昨日、室長から奇妙な話を集めるように指示された僕は早速情報収集を開始していた。

 とは言っても、妹の小唄に(たず)ねてみただけだが。


 まだ九時前なので、小唄も僕もリビングでくつろいでいた時間帯だった。

 ちなみに、百怪対策室には午後から来るように言われているので、それまでに多少は調査した、という事実が欲しかったのだ。

 ソファに寝そべっていた小唄は物憂(ものう)げにスマホから目を離して、僕の方を向いた。


 「なに? お(にい)。小唄ちゃんの個人情報を収集して、何に使うつもりなの?」


 誰がするか。連鎖的に僕も巻き込まれるだろうが。


 「違う違う。バイト先の人がそういう話を集めているんだよ」


 嘘は言っていない。

 完全に事情を説明してしまったら、イカれているようにしか聞こえないからだ。


 「う~ん、そうだねぇ……あ、今ホットな怪談ならあるよ」


 まさかあるとは思っていなかった。

 適当に話を振ってみただけなのに、いきなりヒットするとは思っていなかった。

 『怪』のほうからやってくる、という室長の言は当たっていたようだ。


 「怪談、ね。聞かせてくれないか?」

 「情報料は高いよ?」

 「……ハーゲンダッツ抹茶(まっちゃ)二つ」

 「しょうが無いなぁ~。お兄のためにこの小唄ちゃんが一肌脱いであげようかな」


 ちょろい妹だった。


 

 2


 『動く標本』


 僕がかつて通っており、今は妹の小唄が二年生として在籍している()臙脂(えんじ)中学校にはそういう怪談がある。

 まあ、よくある学校の怪談だ。


 内容はというと、これもありがちなもので、理科室の標本が動き出すというものだ。

 手垢がつきすぎて怪談として成立していないが、それでも九臙脂中学七不思議の一つに数えられている。


 他にろくな不思議がない、とも言う。

 小唄の口から出たのはその動く標本の名前だった。


 「おいこら妹。僕が卒業した中学校を忘れたのか?」

 「え? どこだっけ? っていうかお兄って義務教育途中で放棄して世界放浪してたんじゃなかったっけ?」 

 「……九臙脂中学卒業生だよ。どうやって高校入学したんだよ、僕は」


 なんで世界放浪していたのに、わざわざ日本に帰ってきて普通の高校に入学しているんだ。


 「冗談冗談。んもう、お兄は冗談がわからないなぁ~」

 「減らすぞ、ハーゲンダッツ」

 「お兄が卒業した後になってから、マジで見ちゃった子がいるんだよね」


 急に真面目なトーンになりやがる。

 普段からそうしていたらいいのに。


 「見ちゃった、って……動く標本、っていうか標本が動いているのをか?」


 ややこしい。


 「そうそう。なんとも不思議なことに、十年以上語り継がれていた怪談が急に活性化したっていうか、現実味を帯びてきちゃったんだよね」


 調子はとぼけている風だったが、顔はふざけていなかった。

 小唄は大抵、へらへらと笑っているタイプだが、こういう顔をするときには嘘は言わない。


 いや、言えないと表現した方が正確か。多分普段の調子はいつわりのもので、こっちのほうが本性なのだろう。


 「よくわからないな。『動く標本』の話を今しても、季節にはあっているだろうけど、そこまで盛り上がらないだろ」


 小唄の性格に関する考察は脇に置いて、僕は怪談のことについて掘り下げていく。


 「それがね、マジモンで見ちゃった女子が気絶してるのを先生が見つけちゃってさ。学校中が大騒ぎになっちゃたんだ。つーわけでぇ、ただいま九臙脂中学で今一番ホットな怪談は『動く標本』。もー、持ちきりですよ旦那(だんな)


 誰が旦那だ、誰が。

 途中から普段のへらへら顔に戻ってしまったので、話の信憑性が低くなってしまったが、まあ、前半のほうは信じてもいいだろう。


 つまり、九臙脂中学で隆盛を誇っている『動く標本』。

 普通なら軽く流すところだが、目撃者がいるということはそれなりに重要かもしれない。


 まさか作り話のために朝まで学校で気絶している、なんてことはしないだろう。

 ……しないと思いたい。


 つまりは検証ができるということだ。

 漠然(ばくぜん)とした怪談では室長も解決のしようがないのかもしれないが、これならば多少は百怪対策室のネタになるだろう。

 室長のところに持って行く話は決まった。


 だが、僕にはもう一つだけやることがあった。


 「小唄。その『動く標本』を見てしまった女子生徒の連絡先、わかるか?」



 3


 夜七時。百怪対策室。


 夜とは言ったものの、まだ八月なので外はまだ明るい。

 この百怪対策室の応接室には窓がないので外の景色はわからないが。


 「……と、まあそんな感じの怪談が僕の母校で跋扈(ばっこ)しているわけです」

 「ふぅむ。季節がら怪談が来るだろうとは思っていたが、本当に来るとは思わなかったな。ベタ過ぎるぞ、コダマ」


 小唄から聞いた『動く標本』の話を聞いた室長の反応はそんなもんだった。

 反応薄いな。


 もっと派手な怪現象とかのほうがお好みだったのだろうか?

 やけに細長いタバコを灰皿に押しつけて消すと、室長は足を組む。


 「まあ、その『動く標本』とやらの解決をしてやるか。コダマの母校に本物の『怪』が生まれてしまっても困るしな」


 何でも無いことのように室長は言った。


 「本物の『怪』? っていうことは『動く標本』は偽物ってコトですか?」


 あんまりにもあっさりと言われたので、少々理解に時間がかかってしまったが、室長が言ったのはそういうことだった。


 「当たり前だ。よっぽど強力な媒体でも無い限りは、十年程度で怪談が本物になるわけがない。おそらくは誰かが本物にしようとしているんだ」


 はん、とあしらうように室長は剣呑(けんのん)な目つきになる。

 なぜそんな目つきになるのかを僕は知らなかったが、何らかの因縁的なものを感じた。


 「ああ、そうだコダマ。日光に(さら)されても平気だったか?」


 突然に話題が転換される。

 まあ、僕もその辺のことは聞いておきたかった部分でもあるので助かった。


 「ええ、日光を浴びた瞬間、当たった部分がかゆくなってしまったんですけど、なんですか、これ?」


 僕も驚いた。

 始めは気のせいかとも思ったのだが、日光を浴びるたびにかゆみが走っているのならば間違いはないと判断したのだ。


 「そりゃキミは今、中途半端とはいえ吸血種なんだから日光は弱点だ。当たった端から気化してしまっているんだが、それを再生能力が上回っているから表面上はかゆみだけを感じている状態だな」


 なんかすごいことになっていた。

 ん? 待ってくれ。ということは……。


 「僕はもしかして、これから日光に当たるたびにかゆくなってしまうんですか?」

 「そういうことだな。ま、日焼け対策グッズぐらいで軽減できるから我慢しろ」


 なんてこった。

 これでは夏休みの定番、海に行くということもしづらくなってしまった。


 ……行く予定もなかったが。


 「で、室長。どうするんですか? 『動く標本』の解決に奔走(ほんそう)するっていうんなら、どういう方針でいくのかを教えてくれませんか?」


 悲しい事実を確認してしまった僕は、話を換えるために室長にこれからの活動方針を尋ねる。


 「まずはその、怪談を目撃してしまった女子生徒に話を聞いてみるか。連絡先は手に入れてるだろうな?」


 ハーゲンダッツ抹茶三個分で手に入れていた。



 4


 とある駅前の喫茶店に僕と室長はやってきている。

 が、室長は完全に外人な上に、ジャージに白衣という素っ頓狂(すっとんきょう)な格好をしているので、必要以上に人目を引いてしまうかと思ったのだが、そうでもなかった。


 「隠蔽(いんぺい)の魔術の応用だ。この辺は専門分野だからな」


 魔術なんて怪しげなモノに専門も専門外もあったもんじゃないだろと思うが、そういうものらしい。

 そんなわけで、向こうが待ち合わせ場所に指定してきたこの喫茶店にも普通に入ることができた。

 小唄の奴から聞き出した連絡先に、小唄を介してちょっとした話を持ちかけたのだった。


 「しかし、私が単なる霊感の強い知り合いになってしまうとはな」

 「そう言わないでくださいよ室長。いきなり『怪』の専門家で、魔術師で、吸血鬼なんて言い出したら怪しさで自己崩壊しちゃいますよ」

 「仕方が無いな。世の中の懐の狭さにちょっとばかり涙がちょちょぎれる」

 「……室長が言っても、外見のせいで説得力が無いですけどね」


 そんなどうでも良い会話を繰り広げていると、からん、とベルが鳴り、一人の女子が入ってきた。

 九臙脂中学の制服に、少しばかり不安そうにまわりをきょろきょろと見渡している。


 まあ、多分あれが『動く標本』を見てしまった女子なのだろう。

 夏休みということもあって、店内には僕たちの他にも学生らしき客が沢山居るのだが、その子は迷わずに僕たちの方にやってきた。


 「あ、あの……あなたが小唄ちゃんのお兄さんですか?」


 どうやら僕のほうを目印にしていたらしい。

 しかし、一体どういう特徴を伝えていたのだろうか? 多少とはいえ、いくつものグループがあるこの店内で僕を一発で見つけることが出来たのだから気になってしまう。


 「まあ、そうなんだけど。よく見つけられたね」


 九臙脂中学に在籍しているのならば僕の後輩にあたるはずなので、多少は砕けた口調でいいだろう。


 「だって……男子でポニーテールっていませんし」


 お団子にでもまとめてろってか?

 初対面では必ず言われることなので慣れているつもりだったのだが、やはり気になるものは気になってしまうのだ。


 「とりあえず座って。それからキミが見たモノの話をしてくれないかな? 一応は聞いていると思うんだけど、この人が僕の知り合いの霊感が強い人なんだ」


 着席を(うなが)しながら、僕は室長を示す。

 椅子に座った女子はそこで初めて室長に気付いたようだった。


 「初めまして。私はヴィクトリア・L・ラングナー。キミが体験した怪談をぶっ潰してやろうと思ってる」


 薄く笑って室長はそんなことをのたまう。

 いきなり警戒心を刻みつけるような言動は控えて欲しい。


 「え、あの……らん、ぐなー、さん?」


 無理もない。

 外見上は自分とそう年が変わらないように見える相手がいきなりずっと年上のような態度をとったらどうなるか? 火を見るよりも明らかだろう。


 戸惑い。


 僕の向かいに座った女子が感じているのはそういった類いの感情だろう。

 その上に、金髪で、ジャージで、さらに白衣ときたもんだ。

 これで警戒しないでくれっていうのは虫がよすぎる。


 「この子、霊感はあるんだけどちょっと重傷の中二病でね。言動は気にしないで」


 こっそりと少女に告げる。


 「ああ……なるほど。始めまして。わたしは路原(ろばら)(れん)()です。よろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げる路原さん。

 対して室長は、「ああ、よろしく」などと軽い調子で返しながら頼んでいたアイスコーヒーを口に運んでいた。


 「ぎっ⁉」

 「どうしたんですか、先輩?」

 「いや、何でも無い……」


 どうも先ほど路原さんに告げた室長の紹介は今一つお気に召さなかったようだ。

 太腿を思いっきりつねられた。


 いぶかしむような路原さんの視線を感じながら、とりあえず事情を聞かないことには解決することも、諦めることもできない。


 話を聞く。


 中々に難しいことだ。特にそこから真実を探し出すということは。

 だが、僕たち(というか室長)はやらないといけない。

 僕の母校で『怪』なんてものがでかい顔をしているのはなんとも不愉快だ。それが人の手によるものなら尚更(なおさら)だ。


 「さてと、導入はこのぐらいにしてそろそろ本題に入るか。今日中に解決するつもりだからな」


 飲み干したアイスコーヒーのグラスを置いて、室長は口の端をつり上げてぎらりと目を光らせた。




 六月の頃でした。

 まだそのころは『動く標本』も話には上がってませんでした。

 最初に見たのはわたしですから。

 え? 雰囲気づくりはいいから肝心の部分?


 わかりました。じゃあ話します。


 六月の中頃に、わたしは先生に頼まれて理科実験室の整理をしてました。

 ちょうどその時期は所属してる生物部の活動も忙しいのも相まって、色々とやることが重なってしまい下校時刻ぎりぎりまで残っていることも当たりまえになっていました。

 そういう時期でもあったので、わたしが携帯を学校に忘れてしまったのも無理のないことでした。

 当然、携帯がないと禁断症状が起こってしまう現代っ子のわたしは学校に侵入することにしました。


 なんですか、その目は? 先輩は携帯なしで一晩過ごせるですか?


 ……分かってもらえたのならいいんです。


 コホン。続きなのですが、学校に侵入することは上手くいきました。

 まあ、九臙脂中学伝統のフェンス登りで。


 問題はそこからでした。

 校舎に侵入するのもどうにかできました。なんと言っても九臙脂中学の建て付けは悪いですから、ちょちょいと開けることが出来る窓なんていくらでも在ることは先輩もご存じですよね?


 その目は使ったことがありますね。

 とにかく、携帯を取り戻すためにわたしは理科室に向かいました。

 え? 理科室以外では取り出してないから当然そこにしかありませんよ。

 時間? ええと、九時ぐらいだったと思います。時計は携帯しか持ってないんでよく分かりませんけど、完全に暗くなってから時間が経っていたのでそのくらいだと思います。


 そういうわけで理科室にどうにかして侵入しようと画策していたんですけど、なぜか理科室が開いていたんです。

 いえ、扉自体が解放されていたんで、見ただけでわかりました。ピッキングなんて(こころ)みてません。

 開ける手間が省けてくれたので、わたしは素早く理科室に入って、その辺を捜索し始めました。

 程なくして携帯は見つかったんですけど、問題はそこからでした。


 かちゃん、っていう音が聞こえたんです。

 これが昼間の理科室の授業中とか休み時間とかなら気にも留めてません。

 でも、今は宿直の先生もいるかどうか怪しい夜の学校ですよ?

 当然、わたしは音のした方向を見ます。

 あったのは、ホルマリン漬けの標本達。それだけでした。


 懐中電灯で照らしたもんだから思わず悲鳴が出そうになってしまいましたけど、なんとかこらえることが出来ました。

 固まっていてもしょうが無いのでその場は気のせいだっていうことにして、とっとと理科室から脱出することにしたんです。

 数歩歩いた時に再び音がしました。


 今度はかちゃん、なんていう可愛いモノじゃなくて、ゴトゴトと間違いなく何かが動いている音です。

 正直、見たくはなかったんですけど、好奇心って言うんですか? そういうので懐中電灯を向けちゃったんですよね。

 動いてました。ホルマリン漬けの標本が。

 標本達の中でも一番人気、小型の(しろ)(わに)パンジーちゃんが。


 え? パンジーちゃんを知らないんですか? って先輩はもう卒業生でしたね。

 今年赴任してきた理科の先生が持ち込んできた標本なんですよ。白い鰐で、とっても珍しいらしくて生徒にも人気なんです。先生がつけた名前はパンジーちゃん。


 それが、動いていたんです。

 もがくように、苦しむように。

 思わず腰が抜けちゃって、尻餅をついてしまったんですけど、懐中電灯の光は動いているパンジーちゃんから離れてくれなかったんですよね。


 そのうちに、パンジーちゃんの動きを抑えきれなくなったのか、(びん)は落下してしまいました。

 怖くって、わたしはずりずり出口に向かって後ずさりしてたんですけど、やっぱり見ちゃうんですよね、怖いものって。

 腕が勝手にパンジーちゃんの落下地点に懐中電灯の光を当てていました。

 パンジーちゃんは、まだ動いていました。


 ずりずり、ずりずり。まるでわたしを獲物と見定めたかのように。


 ゆっくりと、でも確実にわたしに近づいてきていました。

 悲鳴を上げたことまでは覚えています。


 でも、その後に何があったのかはわかりません。気絶しちゃいましたから。

 そして朝になって、やってきた先生がわたしを発見した、というわけです。


 当然、わたしはパンジーちゃんが動いた、ということを先生に伝えたんですけど、割れたはずのパンジーちゃんの壜はちゃんといつもの通りに並んでいました。


 床にはガラス片なんて散っていませんでした。

 でも、パンジーちゃんは間違いなく動いていたんです。


 だって、わたしのスカートの内側にとっても小さなガラス片が引っかかっていたんですから



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