第一怪 前編
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僕、空木コダマの首筋に少女が噛みついている。
ただ噛みついているのではなく、そこから流れ出る血液を吸われている。
いや、血液だけじゃない。
“なにか”が僕の中から引きずり出されてしまっているのがわかる。
それなのに、僕は抵抗することが出来ない。
このまま血を吸われ続ければ確実に死が待っているのは直感的に分かる。
だが、僕の体には力が入らない。なされるがままだ。
そして、段々と、僕の意識は遠くなっていく……
1
ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり。
歪んだ金属がこすれ合うような極めて不愉快な音で僕は目を覚ます。
悪趣味な目覚まし時計は、妹の小唄が買ってきた物だ。
極めて衝撃に強い、というか、思いっきり叩かないとこの音を止めてくれないので、僕は迷うことなく不快な音波の発生源に対して平手を打ち下ろす。
最悪な目覚めだ。
少なくとも一週間以内にはこの目覚まし時計には機能停止してもらわないといけないだろう。
さて、最初にやることは決まっている。部屋の確認だ。
ぼんやりしたままの眼球から送ってくる情報を、これまた豆腐と大差ないほどに処理能力が落ちてしまっている脳みそが処理してくれる。
芸術的と称してもいいようなバランスで積み上げられた本。
順番がしっちゃかめっちゃかになっているゲームソフト。
クッションが見当たらないと思ったら、全て本棚の中に詰め込まれていた。
そして、ついでのように衣装ケースは逆さまになっている。
ふむ。
昨夜、僕はやっとの事でめちゃくちゃにされてしまった部屋の片付けを終えて就寝したと
いうのに、その努力は無に帰してしまったらしい。
こみ上げてくる怒りが、徐々に脳みその活動を活発化させてくれる。
だが、犯人捜しをする前に確認しておくことがある。
大分伸びてしまっている髪の毛を軽くまとめて、僕は散乱している物品を踏まないように気をつけて、窓に近づく。
鍵は閉まっていた。
その上に、窓の端に貼っていたガムテープもそのまま残っていた。
このガムテープは僕が寝る前に貼り付けたものだ。
つまりは、犯人は窓からは侵入していないと考えていいだろう。
確認を一つ済ませると、もう一つのほうを確認しに行く。
残りの出入り口、というか、普通はこっちから出入りするはずの、ドアだ。
昨日、無理矢理僕が取り付けたチェーンロックはしっかりとかかっていた。
まあ、このぐらいは想定内だ。
本命は上下に貼り付けているガムテープだ。
一度剥がしてしまったら絶対に跡が残ってしまうような、いやに粘着力が強力なのを使用したので、剥がしたら絶対に分かる。
だが、そのガムテープは貼り付けた時とまったく変わらない状態を示していた。
しばらく、僕はフリーズする。
この事実が示していることは、僕が寝ている間、この部屋に侵入した人間がいないという事実だった。
だが現実として、僕の部屋はしっちゃかめっちゃかにされてしまっており、その片付けに僕が骨を折ることは確定してしまっている。
部屋の中は前衛芸術の展示場みたいになってしまっているが、誰も僕の部屋には入っていない。僕以外には。
二つの事実が食い違ってしまっている。
どういうことだ?
この一週間ほど、僕はこの部屋荒らしを受けていた。
第一容疑者である小唄は容疑を否認したために、僕は確実に侵入者がいることを証明するためにこのガムテープ戦術を実行したのだった。
だが、それは空振りに終わった。
いや、空振りじゃあない。
奇妙なことに、僕の部屋には誰も侵入していないというのに部屋が荒らされてしまっている、という事実が存在していた。
頭がショートしそうだ。
これはもう、僕が夢遊病的に自分の部屋に対して、大胆すぎる模様替えを実行したという可能性を考えないといけなくなってくる。
だがそんなことが出来るのか?
例え夢遊病的に僕が行動していたとしても、この惨状は難しいんじゃないだろうか?
この本の積み上げ方はかなり危ういバランスを取っている。これを無意識でやっているっていうのは考えづらい。
そのうえに、衣装ケースのほうはきちんと中身も詰まっているので、それなりの重量だ。
これを持ち上げるだけでも僕では無理そうだ。
つまり、犯人は僕でもない。
この犯行は誰にも不可能という結論に僕は至るわけだ。
……わけがわからない。
だれか説明してくれ。
説明してくれるのなら多少の苦痛ぐらいは耐えてみせる構えだ。
悶々と僕が悩んでいると、階段を登ってくる音が聞こえた。
「お兄―。起きたんなら朝ご飯食べてよ。小唄ちゃんはお腹が減ったんだけど、お兄が来ないとご飯が始まらないんだよー」
無遠慮にドアをぶっ叩きながら妹の小唄が呑気なことを言ってくる。
「やかましい! 僕は今、非常に難解な問題に直面しているんだ!」と、怒鳴りつけたやりたかったのだが、それを言ってしまうと、僕が中二病を拗らせてしまっているようにしか思えないだろうと考え、とりあえずは生返事を返しておいた。
朝食を終えて、僕は部屋に戻る。
とにかく、今はこの状態をどうにかしないといけないだろう。
本やらゲームソフトはともかく、衣装ケースは一度中身を取り出さないといけなかったので苦労したが、なんとかいつもの状態には戻す事が出来た。
しかし、だ。
このまま今日も就寝してしまったら、同じ事の繰り返しになる可能性は大だ。
一週間、僕の部屋をしっちゃかめっちゃかにし続けていた犯人が、急に善意に目覚めて犯行を止めてくれる保証なんてものはどこにもない。
小唄は犯行を否認している以上、親に相談しても結果は見えている。
反抗期の高校生のちょっとした奇行、ぐらいに捉えられてしまって、生暖かい視線を受けるのがオチだ。
そんなのは困る。
……やはり僕が自分で解決するしかないようだ。遺憾なことながら。
一旦、外にでよう。このまま部屋にこもって考えていても、良い知恵が浮かんでくる可能性はない。
それよりも、ホームセンターにでも行って防犯グッズでも物色している方がどれだけかは建設的だろう。
そうと決まったら行動は早い。
外出用の服に着替えて、僕はホームセンターに向かったのだった。
……暑い。
夏休みなので暑いのは当然なのだろうが、自転車をこいでいるだけで汗がめたらやったら噴き出してくるのは参った。
このままだと、目的地に到着する前に脱水症状でダウンしてしまう。
そういうわけで、僕は一旦水分補給のためにコンビニを探し始めた。
とは言っても、そうそうコンビニがひしめいているような都会ではないので、探すのにも一苦労してしまう。
そんな風にオアシスを求める砂漠の旅人のような気分になっている僕の目に、一枚の貼り紙が目に入った。
なぜその貼り紙に目を奪われてしまったのかは分からない。
いや、本当は分かってはいたのだが、心の底では認めたくなかった。
なんと言っても、書いてある文言が問題だったのだ。
『怪奇・怪談・怪事件、怪人・怪物・怪現象、怪なることの専門。百怪対策室』
いやもう、電波でしかないだろこんなの。
普通の人ならば目にも留めないどころか、意識の端にすらのぼらないような珍妙な貼り紙だった。
だが、今の僕にとってはなんとも惹かれる言葉だ。
僕が遭遇しているのは間違いなく怪現象だろう。警察に持ち込んでも一笑に付されてしまうような一件だ。
だが、怪現象、いや、『怪なること』を専門としているような人物なら真剣に話を聞いてくれるのではないだろうか?
そんなことを考えてしまうぐらいには僕の脳みそは遭遇している現象の理不尽さと、夏の熱気にやられてしまっていたのだ。
自転車から降りて、貼り紙を引っぺがす。
引っぺがす必要は無かったのかもしれないが、書いてある住所がなんともわかりづらい場所だったので、一応は確認のために持っておきたかったのだ。
そして、僕はなにかに突き動かされるかのように百怪対策室に向かったのだった。
コンビニを探していたはずなのに、不思議と暑さは忘れてしまっていた。
自転車で走ること二十分ほど。
何の変哲も無いアパートの前に僕は到着していた。……名前以外は。
〈ハイツまねくね〉
いやいやいやいや、おかしいだろ。
なんだその曲がりくねってそうな名前。入居希望者が明らかに減るんじゃないのか?
いいのか、オーナー?
……僕の気にすることでもないか。
目指す場所はここの二〇一号室のようだ。
なんとも安っぽい感じの階段を上る。
見た目相応の音を立てる階段は、なんとも不安感を煽ってくれる。
だまされているんじゃないだろうか、僕は。
なんとも怪しい貼り紙を手に、安っぽい階段を上り、そのまま妙な宗教団体の一室に案内されてしまうんじゃないかという不安もある。
が、そうなったしまったら逃げれば良いだけの話だ。
逃げ足には自信があるし、僕から搾り取れるものなんてたかがしれている。
高校一年生の運動能力をなめないで欲しい。
そんなことを考えていると、目的の二〇一号室の前に到着していた。
そう、到着したのだが、問題が一つあった。
ドアの前に貼ってあるプレートである。
〈百怪対策室〉
むかつくぐらいに流麗な書体で書いてはあるものの、怪しさ大爆発だった。
逃げ出すなら今しかないと思う。
だが、なぜか僕の指は迷うことなくインターホンを押してしまっていた。
キン、コーン。
よくある呼び出しのチャイムが鳴り、数秒してからザッ、というノイズが聞こえる。
「誰だ?」
やけに可愛らしい女の子の声だが、えらく無作法な口調の声が聞こえてきた。
まあ、受付の子かなにかだろう。礼儀作法がなってないのは減点だが、そんなことでいちいち目くじらを立てるような器の小さい人間ではないので、ここはちゃんと礼儀正しくいこう。
「えっと、こんにちは。空木コダマと申します。この百怪対策室の貼り紙を見て、依頼したいことがありまして伺いました」
数秒、沈黙があった。
「……貼り紙を見たのか?」
「え? ああ、はい」
声の感じからして、インターホンの向こうの女子は僕よりも年下に感じられるのだが、なぜか僕の方が年下みたいな感じになってしまっていた。
「……いいだろう。入れ。鍵はかかっていないからそのまま開ければいい。一番手前の右側の部屋に入ってこい」
それだけ告げると、ブツリと音声は途切れてしまった。
本当にサービス業なのだろうか?
客対応として完全に間違っている気がするのだが、謎の侵入者をどうにかして欲しい僕としては、中に入るしかなかった。
2
「……は?」
百怪対策室の中に入ってから、僕の第一声はそんな間の抜けたものだった。
当然だろう。
なにせ中には、楽に人が十人ぐらいは横に並べるぐらいの広い廊下が広がっていたのだ。
ありえない。ハイツまねくねはいいとこ1DKぐらいのアパートだった。
部屋の中にこんな空間があるなんていうことはありえない。
なんだこれは?
僕はどこに迷い込んでしまったんだ?
不思議の国の大冒険を始めるにしてはちょっと雰囲気がなっていないんじゃないだろうか?
というか、僕はそんなものを始めるつもりもないが。
いけない。考えが脇に逸れてしまっている。
この異常な空間で、一体どういう行動をとるのが正解なのか、なんてことは凡人の僕には考えも及ばないことなのだが、とりあえずは逃げることにした。
振り返った瞬間、ドアが閉まった。
慌ててノブを捻るが、うんともすんとも言ってくれない。
閉じ込められた。
なんてことだろう。まさか自室への侵入者の解決を相談しに来て、僕自身が閉じ込められることになってしまうとは。
こういうのは何というのだろうか?
うまい例えやら、ことわざなんかは出てこないが、ありそうだ。
退くことが出来なくなってしまった僕は、言われたとおりに行動するしかないだろう。
……悲しきゲーム世代の性というやつか。
一番手前の右側の扉、だったな。
正直、だだっ広い廊下にいくつもドアが並んでいるので、言われていなかったら片っ端から開ける羽目になってしまっていただろう。
それはそれで、僕以外にとっては面白いことになりそうだが、僕は基本的には平穏が欲しいタイプだ。
ゆえに、血沸き肉躍る冒険よりも安寧の日々を選ぶ。
洋風の内装に似合わずに、ちゃんとスリッパが並べてあったので、靴を脱いで履き替える。
……いざという時に逃げ出しづらくなってしまったような気もするが、ここまで来たら腹をくくるしかない。
ぺたぺたと安っぽいスリッパの音を鳴らしながら、僕は一番手前の右側のドアの前に立つ。
何の変哲もない普通のドアに見えるが、中が地獄のような光景になっていたとしても対応しないといけないのだろう。
……何だか大事になってきてしまっていないか?
くそ、なんでこうなるんだ!
意を決して僕はドアノブを捻り、ドアを押し開けた。
「遅かったな。どうせ初体験の時のビギナーみたいにもじもじしていたんだろう?」
僕を迎えてくれたのは、初対面で放つにしては強烈過ぎる一言だった。
3
「おいおい、何をそんなところに突っ立っているんだ? 木偶人形じゃないんだからとっとと座れ」
さらっと僕のことをけなしてくれたのはロングの金髪少女だ。中学生ぐらいの。
いや、ただの金髪ならその辺にいくらでもいるだろうが、この少女は生まれ持っての金髪だろう。染めたものではなさそうだった。
それだけならいい。それだけならば、まだ受け入れられる範疇だった。
だが、その少女の姿はあまりにも奇妙だった。
スカイブルーのジャージ。これまではいい。見た目中学生ぐらいなのだから、部屋着がジャージなのはいいだろう。
だが、その上にぶかぶかの白衣を羽織り、あまつさえ、ぶっとい葉巻を咥えているというのは一体どういうことなのだろうか?
ファッションセンスがおかしいとか、白衣でタバコ吸ってんじゃねえとか、未成年が喫煙するな、とかの突っ込みどころが押し寄せてきて、僕は何を言っていいのか分からなくなっていた。
そして止めにさっきからのぞんざいな口調である。
まあ、女子の言葉遣いが丁寧で柔らかい、なんていう幻想を持っているわけではないが、それでも、まるで態度の悪い中年のおっさんのような口調は何だろうか?
要素があちこちに散らばってしまっていて、全く目の前の少女がどういう人物なのかが想像できない。
第一印象は“なんだこいつ?”だ。
そんな風に最悪の印象を抱いている僕を少女は呆れた目つきで見る
「なんだ、動かないっていうことは、自分は木偶人形だと認めるのか?」
ぴきり、とこめかみのあたりに力が入るのが分かった。
中学生ぐらいの女子にここまで言われて平気なほど、僕も鈍い人間ではない。
無言で、ドタドタと足音を(実際にはスリッパのせいでペタペタになってしまっていたが)立てて、僕は向かい合って並べられているソファの、机を挟んで少女の反対側に座る。
流石に、腹を立てていても見知らぬ少女の隣に座れるほど、僕は図々しい人間ではなかった。
「さて、貼り紙を見たんなら、あるんだろう? 奇妙な話が。私に解決して欲しい奇妙なコトが」
咥えていた葉巻を細長い灰皿に置いて、口の端をつり上げながら少女はそう言った。
まるで獲物を見つけた猫のように。
ぞくり、と僕の背筋に薄ら寒いものが走るが、なんとか我慢する。
いや、その前に……
「え? あの……君が解決するの?」
「そりゃそうだ。この百怪対策室には私しかいない。他の誰が解決するというんだ?」
明らかに小馬鹿にした口調で少女は僕に逆に問いかけてくる。
なんだろう、むかつく。
「君、中学生ぐらいだろ? それなのに、どうやって解決するっていうんだ? 僕の遭遇している事件はちょっとやそっとじゃどうにもならないんだよ」
目の前の少女はここの住人か何かで、たまたまやってきただけの僕をからかっているという可能性が否定できない以上は信用できない。
どうにも、最近の変な侵入者のせいで疑い深くなってしまっているが、誰だってこんな怪しい場所のオーナーがこんな年端もいかない少女だとは信じないだろう。
だが、少女は鼻を鳴らしてから、完全に僕をなめきった視線を送ってくるだけだった。
「その目はなんだい?」
あくまで言葉は優しいが、はっきり言ってかなり危うい感じになっているのがわかる。
年下の女子にバカにされるのには慣れているのだが、それでも気になってしまうお年頃なのだ。
「ふん、見た目なんていう、なんの指針にもならないモノを頼りにしてしまっている時点で、キミはまだまだだということが分かってしまったからな。人生の先達としてはちょっと笑いたくなってしまってもしょうがないだろう?」
足を組んで、かすかに顎を上げて僕の方を見るその碧い瞳は、確かにどこか達観した老人のような色を帯びていた。
内心、僕は動揺していた。
中二病を拗らせてしまっているだけのように見えた女子が、突然、人生という名の幾重にも亘る年輪を重ねてきた老人のような目をしたのだ。
じっとりと嫌な感じの汗がにじむ。
「おいおい、そんなに警戒するな。私はキミの『怪』を解決してやろうというんだぞ? とっても親切な年上のお姉さんなんだ。もっと信頼してくれ」
それは無理というものだ。
会ったばかりの人間を信頼するというのは難しい。
その上に、この百怪対策室という怪しい場所にいる年齢不明の見た目は少女。
警戒するなというほうが無理だ。
そんな風に思っているのが伝わってしまったのか、少女は肩をすくめてから葉巻を咥えて、何回かふかす。
ぼう、と広がった煙が部屋に立ちこめる。
不思議と、煙たいという感情よりも、蜂蜜のような香りに陶酔しそうになる。
再び葉巻を灰皿に置くと、少女は何かを確かめるように僕を見てきた。
じろじろと無遠慮な視線が注がれるが、抗議できない。黙って視線を受け続けることしか出来なかった。
「ふむ……まあいいか。さて、自己紹介がまだだったな。私はヴィクトリア・L・ラングナー。この百怪対策室の室長兼魔術師だ」
……は?
なんか聞き捨てならない単語が登場したような気がするのだが気のせいだろうか?
「キミが見た貼り紙には誘導の魔術が使用してあったからな。多分、キミは貼り紙を見て、そのままこの百怪対策室に来たんじゃないのか?」
その通りだ。
なぜかあの貼り紙を見た瞬間に、僕は目的地のホームセンターよりも、喉の渇きを癒やすためのコンビニよりも優先してここにやってきた。
そう、魔法にかけられてしまったかのように。
「もうキミには普通じゃないことが起こっているんだ。そういう人間は普段は気づけないようなモノに気づきやすくなってしまっている。だから貼り紙を見つけることが出来たんだがな」
この少女は一体何者なのだろうか?
自分で名乗っているように魔術師? そんなバカな。
この現代社会に魔術師なんていう非科学的な存在があってたまるか。
生憎と、僕は夢に生きてるタイプの人間ではなく、かなりの現実主義者なんだ。
第一、魔術師なんてものが存在していたとして、それがなんで日本の地方都市で部屋を借りているんだ? もっとこう、怪しい洋館とかに住んでいろよ。
「言いたいことは沢山有るんだろうが、さっさと仕事の話に入ろう。私はキミに起こっている『怪』をどうにかしてやる。それだけだ、シンプルだろう? だから話せ。キミに起こっているコトを」
有無を言わせないような迫力があった。
仕方が無い。僕には解決できそうにないのだからこの人に託してみるのも手か。
別に僕はラングナーさんの迫力に負けた訳ではない。
それだけは言っておく。