義手ってなんかかっこいいよね。
目が醒めるとそこは病室みたいだった。
『どうして俺こんなとこに・・・。』
真斗は無意識に頭を右手で掻く。
!?
頭に自分の手とは思えない硬いものがぶつかった。
『痛っ!!』
なんだ?と思って右手を見ると肩から指先まで全部ギンギンに光る鋼の義手になっていた。そこで自分があの化け物、アンデットと戦って右腕を失ったことを思い出す。
『どうなってるんだ?俺生きてる・・・それにこの腕は・・・。』
あの時死んだと思っていたのに助かったことで少し安心もしたがそれどころではない。あの後どうなったのかがきになる。家族がどうなったのか?中でも沙彩がどうなったのかが気になった。
ガラッと病室のドアが開く。
「もう義手の神経が同化しているのか。確かにただの人間ではないようだな。」
軍服を着た銀髪ツインテールの女性が少し驚きながらいう。
『あなたは・・・?』
「お〜そうか君からしたら私は初めましてだもんな木村真斗くん。自己紹介をさせていただこう。私は対アンデット特殊部隊『篝火』α部隊所属、大佐の滝沢雛乃という。」
『対アンデット特殊部隊?・・・』
「そうだ!君が先日、交戦していた奴ら・・・アンデットをこの世から抹殺するために日本の自衛隊だけでなく世界の軍の中から選抜された部隊だ。」
雛乃は淡々と真斗にアンデットに関する情報を説明する。
要するにだ。なんらかの原因で26体のアンデットが現れ人間をゾンビに変えて滅ぼそうとしているらしい。それを世界中の政府が手を組んで食い止めようと頑張っていると・・・。
「まあ部隊についてはこんなところかな。それでは本題に入ろうか。」
『皆までいいですよ。要するに俺にそのアンデットを倒す協力をして欲しいとかそんなことでしょ。それより今家族がどうなってるか聞いてもいいですか?』
滝沢は予想外の真斗の反応にキョトンとしている。
なんとなく普段のアニメの見過ぎかこのようなフラグが立っていることに俺は気付いていた。だってそうでもないとこんな高そうな、しかもいかにもこれから戦闘してきます感でてる義手をつけてくれたりするわけがない。アニメやゲームでしか見たことないぞこんな義手。
「なるほど・・・。結構飲み込みが早いんだな。ははは・・・。そういうところ嫌いじゃないぞ。では君の家族が今どうしているのか話すとするか。」
雛乃は優しい雰囲気で話していたが急に目つきを変え場の空気が凍った。
「まず君のお母さん、木村真樹・・・旧姓片桐真樹のことから話そう。知らないと思うからいっておくが彼女は昔アンデット専門の研究をしていた科学者だ。『篝火』の対アンデット兵器の開発をしてもらっていたが18年前姿を消した。以降捜索はしていたが今回の事件で発見したというところだ。まさか子供がいたとは驚いたよ・・・。今はアンデットKといったか・・・そいつの起こした事件について話を聞いているところだ。多少怪我はしているが特に命に別状はない。」
生きていることに安心して涙が出た。
「次に君の父親、木村卓也だが彼については全く情報が掴めない。現在生きているかも不明だ。ただ君の家からは彼らしき血痕が見つからなかったところを考えると生きている可能性もある。」
何やってるんだあの親父は・・・こんな時に!
『妹は?沙彩はどうなったんですか?』
俺は一番気になっていたことを雛乃さんに問いかけた。
「彼女は・・・。」
雛乃は表情を曇らす。
「君の妹、木村沙彩さんは知っての通り、先日の事件でアンデットになった。その後君が倒れてから10分で北海道、札幌で目撃された。その時の被害者は30名・・・内19名が死亡、残りが重軽傷だ。それ以降は目撃情報も何もない。残念だが死者が出た以上、彼女は私たち『篝火』の最優先ターゲットになった。見つかり次第射殺する予定だ。」
『そうですか・・・。』
真斗は俯く。
なんとなく予想はしていた。沙彩・・・いやあれは沙彩じゃない・・・アンデットKがとんでもないやつということを。てか俺の家、埼玉なのによく10分で北海道まで行けるなおい!アンデットってのはみんなそうなのか!?あんな奴が他にもいるって・・・どうなるんだよこれから
「以上現時点での君の家族の詳細だ。他に聞きたいことはあるかい?」
『特にありません・・・。』
「ではこれを聞いた上で君の力を貸してもれえるということでいいのかな?」
雛乃はより険しい表情でいった。
俺は・・・沙彩を助けたい。迷いはない。
それしか浮かばなかった。
『協力します。ただ沙彩は・・・いやアンデットKは俺が止めます!!』
俺は覚悟を決めて言った。