ショートショート「心霊写真 パート2」
俺の名前はジョージ。しがない探偵なんて稼業をしている。
相棒のマコトが友人を連れて事務所に入ってきたのはまさに最悪のタイミングだった。
マコトが出かけて、俺は一緒に事務所にいたエイミーと昔話に花を咲かせていたはずだった。
はずだったのだが、向かいのソファにいたエイミーがいつのまにか俺の横、そして知らぬ間に膝の上に乗っていて、彼女は白くて細い腕を俺の首に回してきた。まさにその瞬間「ただいま戻りました。」と言いながら扉が開いたんだ。
一瞬のうちに飛び降りたエイミーの身のこなしは俺も驚くほどだった、がマコトの連れの女の子が(あらあら)なんて顔してるし、こりゃ絶対見られてたよな。
見られた事は大した問題じゃ無い。問題はエイミーが発している殺気だ。マコト、早く逃げた方がいいぞ。
しかしマコトと連れの女性はそんな事はまったく意に返さず、俺の前に来て「これ見てください!」と言ってきた。
二人が見せてくれたもの、それは本物の心霊写真なんだという。
「ジョージさん、『本当に幽霊がいるのなら見たいもんだ。』って言ってたじゃ無いですか?とうとう本物の心霊写真を見つけたんですよ!」
と、マコトは言うが、コイツにそんな話したかな?俺も口が軽くなったもんだぜ。
見せてみろよ、と、俺は写真をひったくった。
どこかの社員旅行だろうか?座敷の上に膳が並べられ、浴衣姿の大人が何人か赤い顔をしてビールを飲んでいる。
ん?と首を傾げていると後ろからエイミーも覗き込んできた。
まったくわからねえ、これのどこが心霊写真なんだ?
「あ、それです。その一番前の人。」
マコトの連れはそう言って写真の一番手前にアップになって写っていた男を指差した。
上半身裸になり、腹に太いマジックで変な顔が書いてあった。頭にはネクタイのハチマキ、笑わせようとしている変顔。真っ赤な顔をした完全に出来上がった酔っ払いって、これいつの時代のサラリーマンだよ。
で、コイツが幽霊?
実はこの社員旅行の前日に亡くなってるだと?
参加したくて現れたんですね、ってみんな涙を流していただと?
「いやあ、苦労しましたよ!本物の心霊写真なんてそうそう手に入りませんからね!」
と、ドヤ顔のマコト。
俺は写真を丸めて窓の外へ放り投げた。
「ああっ、なんて事を!よく見ると薄っすらと髪の毛が薄くなっていて向こう側も見えるんですよ!」
うるせえ、お前も信じて無いだろう。
そんな事より自分達の心配をした方がいいぞ。
ほら、エイミーの怒りが爆発しそうだぜ。
次の心霊写真に映るのはもしかしたらお前たちかもしれねえな。




