ショートショート「幽霊」
俺の名前はジョージ。しがない探偵なんて稼業をしている・・・はずなんだが、今日の依頼は幽霊退治だと?おいマコト、なんでこんな依頼受けてんだよ。
「痛っ!殴らないでくださいよ!今月も厳しいんですからこんな依頼でもこなさないと。」
ちっ、仕方ねえな。
俺は涙目になって訴えるマコトに渋々了解する事にした。
依頼人はT県K市在住。なんでも家の近くにある柳の木の下に毎晩幽霊が出るので退治して欲しいとの事だ。これ、興信所に依頼しようと思う時点でおかしいだろ。まあ、金になるならやるけどよ。
「にしても。」
俺は張り込みの視線は1ミリたりとも動かさずにマコトに話しかけた。
「柳の木の下に幽霊って・・・今時笑っちまうよなぁ。」
「なんでも近くで交通事故にあった女性らしいですよ。依頼人の方は地縛霊だろうなんて言ってましたけど。」
「どんな姿してんのかな?やっぱり白い服に黒い髪の毛前に垂らして『うらめしや』か?」
「全然信用してませんね。」
と、俺たちが軽口を叩きあっていると、いつのまにかターゲットの柳の木の下に女が立っていた。ちくしょう、いつのまに来たんだ。すっかり見逃した。気が緩みすぎたな。
女は今時珍しい見るからにヤンキーだった。
髪の毛は金髪に染めて服はロングの特攻服。紫のアイシャドウもバッチリ決まってるぜ。
俺には懐かしい姿だ。俺の昔の知り合いには沢山ああいうのが居たんだが、今でも居るんだな、久しぶりに見たぜ。
女はここが幽霊の出る柳だなんて知っているのか知らないのか、それともどうでもいいのか、スマホで何やら連絡を取るのに夢中だ。
と、女がふと顔を上げてこちらに気づいた。俺と目が合う。おう、いい面構えじゃねえか、気合い入ってんな。
目を逸らさない俺に女がチッ、と舌打ちした。
「見てんじゃねェよ!見せモンじゃねえよ!」
そしてふいっと背中を見せてどこかへ歩いて行ってしまった。背中には昇り竜が描かれていた。少し悪い気もするがすまねえな。こっちは仕事だ。
その後朝まで張り込みを続けたが結局、柳の木の下の幽霊にはお目にかかれなかった。
だが何故か俺たちの張り込み以降、ピタリと幽霊騒ぎは無くなったそうだ。依頼料も無事振り込まれた。
やっぱりこういうのは気の持ちようってヤツなんだろうな。
マコト、飯喰いに行こうぜ。




