ショートショート「古井戸」
俺の名前は近藤、今日はとある連続殺人事件を追ってこんな田舎の廃墟まで来ている。
謎の連続殺人事件。被害者は全員「呪いのビデオテープ」なるものを見ていた形跡がある。見たものは全員例外なく一週間以内に死んでいる。
俺とジョージも見た。短い内容でほとんど情報は無かったがそこにはひとつの古井戸が映っており、警視庁のビッグデータを元にこの廃墟までたどり着いたというわけだ。
だが中を覗き込んでも何も出てこない。
ジョージが色々突いたり掘り返したりしたが何も出ない。おかしいな、確かに何者かの気配はするんだが・・・
と、ジョージが「もう帰ろうぜ。」と背中を向けた瞬間、古井戸から白い手が出て来た。
「お?」
と、呟いた俺の言葉にジョージが振り返ると手は引っ込んだ。
「なんだよ、何もねぇじゃねぇか。」
と、ジョージは膨れっ面だ。
そしてくるりと背を向けるとまた、今度は上半身まで出てきた。長い黒髪に白い服の女。まぁまぁありきたりだがこいつがこの事件の首謀者か。
「おおっ?」
と、俺が呟き、ジョージが振り返るとまた女は古井戸に引っ込んだ。またジョージは呆れ顔だ。
ジョージが背を向ける。女が出てくる。振り返るとまた引っ込む。また背を向けると出てくる。
俺は小さな声で
「ダ ル マ さ ん が こ ろ ん だ。」
と呟いた。
「なんだよ?」とジョージが振り帰ると女は引っ込んだ。
ふふふ、なかなかお茶目な奴じゃないか。よし、ジョージを帰したら説教だな。覚悟しておけよ。




