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心霊探偵ジョージ   作者: pDOG
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ショートショート「河童」


俺の名前はジョージ、今日はマコトと河童探しにきている。本業は探偵の俺がなんでこんな事をしているのかと言えば、そりゃあ懸賞金のために決まってるだろ。


俺とマコトは地元の子供を捕まえて、一番目撃情報が多かった沼へと案内してもらった。


「昔はよく見たらしいけどね、最近はあまり姿を見かけないね。お兄さんみたいな人はたくさん来るけどさ、誰もカッパを捕まえられないよ。ケケケ。」


クソ生意気な餓鬼だな。小学生くらいだろうか、今時野球帽ってのも珍しいがあまり顔を見せてくれない。


「あんまり深入りし過ぎると、カッパに沼に引きずり込まれちゃうしね、ケケケ。」


「あぁん?」


調子に乗ってきた餓鬼を睨み付けると「ヒイっ」と悲鳴をあげて縮こまった。マコトは(大人気ないなぁ)なんて顔をしてやがるがうるせえ、これもしつけだぜ。


俺たち三人はそれからいくつかの沼や川を探したが、結局夕暮れまで何の収穫もないまま終わった。


「おいボウズ。」


「何だい?お兄さん。」


全く疲れを見せない餓鬼の頭を撫でて、俺は「遅くまで付き合ってくれてありがとうな。」と礼を言った。急に優しい声を出した俺に少し驚いていたようだった。


「そろそろ家に帰らねえと親が心配するだろ?」


「母ちゃん居ないよ。いつも一人さ。」


そうか、と答えて俺は帽子をかぶり直した。余計な事を聞いちまったな。


「ボウズ、名前は?」


「川太郎だよ、ケケケ。」


よし川太郎、飯食いにいこうぜ、奢ってやるからよ。マコトも行くぞ。駅前に美味そうな定食屋があったよな。


そう提案すると川太郎は嬉しそうに目を細めた。


「ありがとうお兄さん、でも夕飯はあるから大丈夫だよ。あそこの定食屋は戦争が終わった後くらいからずっとやってる老舗だよ。味は保証するさ、気のいい店主だよ、ケケケ、じゃあねお兄さん。また会えるといいね、ケケケ。」


そう言って川太郎は茂みの中へと飛び込んだ。おい、そっちは町の方角じゃねえだろ、と声をかける間も無く川太郎の姿はどこにも居なくなってしまった。


まぁ、地元の子だし大丈夫だろ。


そう思いなおして立ち去ろうとした俺たちの背中に、小さくトプンと水音が聞こえた。


河童でも出たかと一応振り返ったが、そこには小さな波紋が広がるばかりで、何も居なかった。


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