ショートショート「雪山」
「俺です。俺がやったんだ、頼む、許してくれ。」
男はすべてを認め、泣き崩れた。
俺の名は近藤。この道ン十年の刑事だ。
いくら逃れようとしても、この俺の目は誤魔化せない。
犯人が突っ伏した机の上には、拡大された証拠写真が散らばっていた。
男は雑誌の取材で雪山へと撮影に向かったカメラマン。
撮影中の事故で亡くなった助手をとりあえず山小屋の脇に埋めた。
だが埋めたはずの助手が毎朝、自分の横に寝ている。
その怪奇さにやがて参り、連続写真が撮れるカメラを部屋に設置し、寝た。
そして撮影されたものがこの写真だ。
証拠の連続写真には男と、そして殺された男の助手が映っていた。
写真には山小屋で男が起き上がる場面、寝袋から出る場面、山小屋から出る場面、それから助手の死体を担いで戻って来て自分の横に置くまでの姿が次々と映っていた。
朝起きると戻ってくる死体、その謎の犯人は無意識のうちに掘り起こしていた自分自身だったというわけだ。
問題はここからだった。
最初、男は助手の死因を事故だと言い張った。
だが俺の目は誤魔化せない、これは明らかに殺人だ。
長い戦いだったが、ついに助手を殺したことを認めた。
俺は手元に残った連続写真にまた目を落とす。
山小屋で男が起き上がり、寝袋から出、山小屋から出、
助手の死体を担いで戻って来て自分の横に置いてまた寝る。
それから助手が起き上がりカメラに向かってVサイン。
これが決め手になった。
これでお前も安心だろう。安らかに眠れよ・・・
俺は写真の助手に向かって、そう小さく呟いた。




