ショートショート「テケテケ」
俺の名前はジョージ、今はゴミ溜めの探偵さ。
俺としたことが、とんだドジ踏んじまった。
あの依頼人、ターゲットがやくざと絡んでいるなんて一言も言わなかったじゃねぇか。
・・・また、自分の血に濡れた手を見ちまった。何度目だ、糞。
どうやら追手はうまく撒いたらしい。
掃き溜めの臭いの中で、俺は座り込んだ。
あんな流れ弾に当たっちまうんて、とんだお笑い種だな。
・・・腹が熱い・・・弾は貫通しているようだが、血が止まらない。
──── 電話・・・
立ち上がろうと思ったが、立てなかった。
ゴミバケツの中身と一緒に、俺は地面にぶちまけられた。
思わず笑みが浮かぶ、こんなゴミ捨て場で死ぬのかよ、俺らしいぜ。
震える手でタバコに火をつけた。
立ち上る煙と入れ違いに、静かに雪が舞い降りてきていた。
見上げた頬に当って溶ける雪は冷たく、心地いい。
目もかすんできた、が、不思議と恐怖は無かった。
何か音がした。
奴等か?と顔を向けた俺の目の前を、上半身だけの男がひじを突いて走り去っていった。
なんて根性のある奴だ。体が半分無いってのに。
それに引き替え、俺って奴は。
腹に風穴が開いただけじゃねぇか!
急に元気が出た。身体を起こして立ち上がる。
ふぅ、人間、なかなか死なないものなんだな、寝てる場合じゃないぜ。




