ショートショート「牡丹灯籠」
「お前、最近痩せたんじゃないか?」
マコトです。ジョージさんに言われるくらいだからかなり痩せたんだろうな。
でも僕は大丈夫。だって、ほら、その、今、幸せですから。
花火大会の夜に一人の女性と出逢ったんだ。名前はお露さん。
綺麗に着こなした浴衣と牡丹の絵が描いてある提灯がよくマッチしている。
とても可愛い人だ。
僕たちはひと目で恋に落ちた。
こうして出会うことが運命だったと思うくらい、自然に触れ合うようになった。
見た目とは裏腹に積極的な彼女はそれから毎晩僕の部屋にやってくる。
そして朝までベッドで二人で過ごして、露さんは夜が明ける前に帰ってゆく。
今夜もドアを小さくノックする音が聞こえた。彼女だ。
鍵を開けると露さんはニコッと微笑んで中に入ってきた。
提灯の火を消していつもの場所に座る。ホントに可愛いなぁ。
あ、そうだ。
忘れていた。今朝、お坊さんにお札をもらったんだっけ。
「おぬし、物の怪に取り憑かれておるぞ。」
だって、変な人だったなぁ。
このお札を扉と窓に貼り付けておけば物の怪は入って来れないって言っていたな。
この時間は邪魔されたくないな。何も来て欲しくないよ。
ちょっと待っててね、と僕は露さんに頼んでからお札をドアと窓の内側に貼り付けた。
これでよしっ、っと。
あれ、どうしたの露さん?笑ってるけど何かいいことでもあったのかな?




