ショートショート「水面から手が・・・」
俺の名前はジョージ、しがない探偵なんて稼業をしている。
今度という今度は俺も年貢の納め時かも知れないな。
そんなことを考えて、俺はタバコの火をつけた。
俺に向けられた外しようの無い3つの銃口。
いろいろと危ない橋を渡ってきた、そのツケを支払う時が来た様だ。
逃げ場は・・・無い。
後ろは荒れ狂う断崖絶壁だ。
騒ぎ立てる無粋な風たちが、俺の最後のタバコの煙すらなびかせない。
俺は覚悟を決めた。
あばよ、そう言い残して、俺は崖から飛び降りた。
身体はまっすぐ、白く打ち付ける波の中へ吸い込まれてゆく。
気を失いそうな風と音の中、水面から無数の白い手が一斉に上がるのが見えた。
シンクロの練習か?こんなときに!なんて命知らずな奴らだ!
俺は夢中で、危ないからどけ、と叫んでいた。
そこから先の記憶は無い。
気がついた時、俺の身体はベッドの上だ。
近藤刑事の顔が見えた。
マコトの顔も見えた。
俺は・・・まだ、生きているのか。
後から聞いた話だが、俺は近くの海岸に漂着していたそうだ。
あのシンクロの選手たちが助けてくれた。俺は今でもそう信じている。




