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星に願いを  作者: 星空テツ
第一章
7/14

005 仇は





「そう、ですか。分かりました。遺体はこちらでお預かりします。」


「…。」


レノの言葉にソラは何も返さない。

ショカの森からソートを担いで戻ってきたソラは、精神も肉体も激しく疲弊していた。


「…それと、ゴブリンキングについてですが、おそらく何らかの原因があって、ゴブリンの巣が形成されていたせいだと考えます。それについてはこれから調査隊を派遣しますので、原因が判明次第お知らせします。」


「…」


ソラはまた何も言わない。

レノはソラに聞きたいことがまだまだたくさんあった。どうやってゴブリンキングを倒したのか、宿命星が一体何なのか、など、気になることはたくさんあった。

が、ソラの様子を見て止めておこうと判断したのだ。


「それからゴブリンキングの報酬についてですが、王冠や剣、弓、肉やその他諸々を含めて、140000Gとなります。お受け取りください。」


「…」


無言で金の入った袋を受け取ると、アイテムボックスに放り込んだ。


【アイテムボックス】

時空間魔法の心得があるなら、誰でも使える便利魔法だ。

ボックスの容量は使用者の魔力量の多さに比例する。

アイテムボックスの中は時間が静止しており、新鮮な料理を入れて数日後に取り出しても、新鮮な料理を味わうことができる。

時空間魔法の適正がある者は余り多くないので、高ランク冒険者パーティに1人いるかどうかといった具合だ。


「…アイテムボックスをお持ちなんですね!」


レノがそう声をかけると、ソラはコクッと頷いた。

そして小さく礼をすると、冒険者ギルドを出ていった。




ソラが次にやってきたのは、宿屋だ。


【鈴の小鳥亭】

王都の東側の中心近くにある宿屋。

料理がおいしく、部屋の衛生状態もよく、頼めば10Gでお湯も用意してくれる。

比較的安価な値段であるので、駆け出し冒険者には嬉しい宿屋。


カランコロンカランコロン


「いらっしゃいませー。」


宿屋に入ってきたソラへと、従業員が目を向ける。


「…部屋、空いてますか?」


「はい、空いてますよ。1泊100Gですが、何泊なさいますか?」


「とりあえず、1ヶ月ほど。」


「分かりました。では、3000Gになります。」


ソラがアイテムボックスから金を取り出し、カウンターにおく。


「朝食と夕食はご用意しますので、6:00~10:00、17:00~22:00の間にこの酒場へと降りていただければと思います。それではごゆっくり。」


「…」


ソラはまたコクッと礼をして鍵を受け取った。

そして階段を上がっていき、301の部屋を開ける。


【貨幣価値】

1G=石貨1枚

10G=銭貨1枚

100G=銅貨1枚

1000G=銀貨1枚

10000G=金貨1枚

1000000G=白金貨1枚

100000000G=王閃貨1枚









それから1ヶ月間、ソラは狂ったように依頼を受け続けた。

街中の配達に掃除、薬草採集、モンスター討伐など、1日に何個も何個も依頼をこなしていた。

一心不乱に依頼を受けることでしか、心の傷を誤魔化す方法はなかったのだ。


ある時には、


「よう、お前がゴブリンキングを倒したって噂のガキだな。ちと、おれらの荷物持ちについてこいよ。」


と言われて付いていき、騙しうちで殺されそうになったこともあった。

有望な若手に荷物持ちをさせるベテラン冒険者というのは一般的だ。ベテランは荷物を持ってもらえるし、若手は経験を積めるからだ。

その定石をソラは知っていたからこそ、申し出を承諾したのだ。


しかし今回は、その定石を利用した詐欺だった。

森の奥までソラを連れて行って、殺そうとしたのだ。

が、結果は見事に返り討ち。ゴブリンキングを倒したのはデタラメだと思っていたようで、難なく返り討ちにあった。その時もやけにゴブリンが多かった。





そしてソートの死から1ヶ月、


「ソラさん、ゴブリンキングが以前出現した際の原因が判明しました、聞きますか?」


ソラは神妙な顔で頷いた。


「ショカの森を抜けた、王都の北東に位置する【レグノイド山脈】。ショカの森を麓にもつ地帯で、Aランク魔物ロック・ドラゴラム―――通称、偽岩竜の群れが確認されました。」


ザワ…


それを聞いて、ソラだけでなく周りが一斉にざわついた。


【偽岩竜】

岩山地帯に生息するドラゴンのような姿をした魔物だ。岩竜と比べれば空も飛べない上に戦闘能力も大きく下回ることから、偽という名前がつけられている。

しかし最大の特徴は群れで動くことであり、群れの規模からAランクに設定されている。


「ゴブリンキングは、レグノイド山脈から逃げてきていた可能性が高いです。」


「…そうっすか。」


ソラはそういった。

レノは続ける。


「これから討伐隊が組まれる予定ですが、その際に先遣隊を派遣します。…先遣隊に、入られますか?」


「もちろんだ。」


Aランク魔物討伐の先遣隊。

その先遣隊になろうと思えば、C、Dランクが相当だろう。


ソラは1ヶ月でDランク冒険者になっていた。



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