プロローグ
『シリウスに願いを。光よ降り注げ。聖なる流星!!』
空より降り注ぐ何筋もの光が、魔王の体を焼く。
「ぐあぁぁぁああっ!」
魔王は叫び、大きく後ろに交代する。
だが、
『プロキオンに願いを!雷鳴!』
英雄の横にいた女の追撃を受ける。
だがしかし、魔王は雷鳴を魔法壁で受け止めた。
「く、く、く。この私がここまで追い詰められるとはな。」
体に幾つもの傷を受けてなお、魔王は不敵に笑った。
星暦607年、人々は魔王によって苦しめられていた。
魔王は一等星級の星を2つ宿す。故に魔王たる力を持つ。
魔王と魔族達により、人は住む国を追われた。
各国の王達が魔族に怯えていたとき、一人の英雄が現れた。
魔族の領域に最も近い国、レグノイド王国に英雄は生まれた。
幼少の頃から剣と魔法との才能を発揮し、さらに宿命星はシリウスである。
レグノイド王国の最東端の小さな村、ウール村で生まれた少年は修行を積み、村を襲う魔物を退け、強くなった。
そして同じくウール村には、魔法の天賦の才をもつ少女がいた。プロキオンを宿し、雷と火の2属性持ちの彼女は、英雄と共に村を守っていた。
この二人が恋に落ち、結婚することは必然だったのかもしれない。
村を守りながら幸せな生活を送っていた2人だったが、ついにレグノイド王国は魔族の大侵攻にあった。
そして、レグノイド王から、魔王討伐の勅命が下ったのである。
「なあ、セイナ。」
英雄は、隣にいる少女に声をかける。
「なに?」
「魔王が本気を出す前に、片つけないとな。」
「多分、勝てないよ?」
そう、魔王はまだ力を隠している。
二人はそう確信していた。
視界の悪そうなローブを全身に羽織ったまま、不敵な笑みを崩すことさえできていない。
「あれ、やるの?私達も死ぬけど。」
「いいさ、一時的にでも世界の人々が救われるなら。心残りは……、一つだけあるが。」
「……私もよ。けど、やるしかない。」
二人の会話が聞こえているのかいないのか、魔王が痺れをきらしたように言った。
「こないなら、こちらからいくぞ?」
「安心しなよ、次で終わるっ!!」
英雄--ロイドは叫び、魔王に斬りかかった。
レグノイド王に授かった聖剣エクスカリバーを振るい、魔王と切り結ぶ。
その間、セイナは魔法の詠唱をしていた。
「Х рфчщэзи…、ロイド君、いくよ!」
セイナの掛け声とともに、ロイドが魔王から距離を取る。
そして、二人で口を揃えて詠唱する!
『シリウスとプロキオンに願いを。邪悪なる魔を、封印せよ!
星の封印!!』
どこか別の空間へと断末魔の悲鳴をあげながら吸い込まれていく魔王と、倒れていく2人。
ロイドとセイナの心残りは、
(村長、息子を、ソラを、頼みます…っ)




