011 岩竜
【ロックドラゴン】
通称、岩竜。Sランク魔物。
紛うことなき竜であり、偽岩竜など比べ物にならない強さをもつ。
古龍、神聖獣を除く生態系では最強の一角である。
超強力なロックブレスを筆頭に、土砂崩れや砂嵐を意図的に引き起こす―――まさに災害。
「なんだってこんな所に降りてきてやがる?!」
ナルがそう叫ぶ。
岩竜は通常、聖域や大森林の奥地、世界山脈など、もっと人里離れた地域に棲息する。
レグノイド山脈はそこまで大きな山脈ではない。仮に岩竜が住むなら山頂でも物足りないくらいだ。
「…グダグダいってもしょうがねえ、やるぞ!」
ドーガが岩竜に斬りかかる。
その動きがキッカケとなり、討伐隊の全員が動き出した。
GUUURULUULULUAAAAAAAAA!!!
岩竜の爪が、尾が、体が、討伐隊を襲う。
その強力な一撃一撃に、Cランクパーティはすぐに脱落する。
「…後ろから攻めろ、きちんと通る攻撃をかけろよ!」
ドーガが総指揮をとり、陣形が組まれる。
超硬質な岩竜の岩を攻撃してもダメージはほぼ通らないので、やはり岩の隙間を狙うことになる。
「絶対に飛ばすな!死んでも引きずり降ろせ!」
岩竜は偽岩竜とは違い、飛ぶことができる。
全長20m超の巨体からは想像もつかないが、強靭な翼をもって長距離を移動することができる。
GAAAAAAA!!!
ロックブレスだ。
当たりの景色がどんどん破壊されていく。
岩が飛び、砂煙があがり、地面が歪む。
討伐隊の面々も何人かがやられてしまった。
ドーガやソラも、その余りの威力にガードせざるをえない。
そしてその隙に、岩竜が飛んだ。
が、
「大火の裁断!」
即座に動いたソラが、翼を切り裂いた。
岩竜の部位では比較的柔らかいだけに、バッサリと翼は裂けてしまった。
グギャアアアアア!!!
悲鳴と憤怒の叫びが混じりあい、岩竜が怒る。
「…いや、チャンスだ。ヤツはもう飛べん。ブレスに気をつけて、一気に潰せ!」
「ハァ、ハァ、なんとかなったな。」
そう呟いたのはルートだ。
翼を切り裂かれてもなお、約一時間、岩竜は岩竜たるゆえの強さを見せつけた。
討伐隊も十数人が戦闘不能になるという被害をうけたが、幸いにも死者はいなかった。
が、全員ボロボロだ。
全員がやっと安心した、その時
GURUUUUUuuuu?
偽岩竜の巣からもう一体の岩竜が現れた。しかも、一体目よりでかい。
瞬間、全員が武器を構える。
が、その動きは明らかに緩慢だ。
「…番だったのかよ、絶縁じゃねえか。」
誰かがそう呟いた。
岩竜は倒れている岩竜―――妻の目を向け、怒り狂う。
GUUUAAAAAAAAA!!!!
「…おれが時間をかせぐ、逃げろ。」
ドーガがそうつぶやき、皆が一目散逃げ出した。




