009 討伐隊vs
時は少し遡る。
先遣隊の五人は討伐隊の隊長の元に偵察の結果を報告していた 。
「ふうむ。巣に少し気になることがあったと?」
そう尋ねたのは討伐隊リーダー。
質実剛健、歴戦の戦士、隻眼の山賊―――そんな言葉が良く似合う老将―――ドーガだ。
40年に及ぶ冒険者としてのキャリアを持ち、レグノイド王国第二の冒険者であり、Sランクの壁の前に敗れ去ったAランク冒険者だ。
そんな人物に対してルートが告げる。
「ええ、どうにも気がたっているようでした。群れの多くが巣の外に出てきていましたし、雌まで巣から遠く離れた隣の山にいました。もしかして、さらに上の存在と戦っていたのかもしれません。」
「ふうむ。別の高ランク魔物との抗争の可能性か。そもそも今は偽岩竜の時期ではない。それを考えれば有りえん話ではないな。」
「…どうしますか?もう一度偵察に行くか、それとももう攻めますか?」
ルートの言葉にドーガは黙り込む。
いや、何やらブツブツ言っているようで、どうするべきか考えているようだ。
「行きましょうよ。」
ナルがそう言った。
「ほう、なぜだ?」
ドーガが尋ねる。
「確かに未知の魔物と戦うかもしれない可能性はありますが、そもそもただの種族内の争いかもしれません。それに、こっちには、仮に他のAランク魔物がいようと、充分に対応できる戦力がある。とりあえず行ってみなきゃ始まらんでしょう。」
確かにナルの言うことにも一理ある。
Aランク冒険者:ドーガ
《青い太陽》
《四獣》
《喰らふ者》
Bランク冒険者: アミスタ×
他、5パーティ+3人
Cランク冒険者:2パーティ
Dランク冒険者:ソラ
これが今回の討伐隊の戦力だ。
これを思い出しながら、ドーガは言った。
「確かに、それに偽岩竜は単体の力はBランク上位程度に過ぎん。それを考えれば、…よし、明朝、奇襲をかけるぞ。パーティごとで各個撃破しながら、外に出ている敵を減らす。そして、ある程度相手の数が減ったら、俺が指示を出す。そうしたら、一斉にすである洞窟になだれこむぞ。」
この作戦が全員に伝えられ、いよいよ、作戦決行となった。
―――レグノイド山脈―――
「あと、一時間ほどで巣に着く。各自で武器の最終確認をしてくれ。」
先頭を歩いていたナルが足を止め、討伐隊の面々に告げた。
「いや、そんな時間はないみたいだぜ。」
ドーガがそうつぶやき、同時にソラは剣を抜いた。
ギャオオオオオオオォォォォッ!!
今まで討伐隊が登ってきた坂道の横の崖の上に、五体の偽岩竜がいた。
「くるぞ、散れ!」
ドーガの号令とともに、戦いの火蓋は切って落とされた。




