ゲーム開始
杏作成のゲームが開始されます
この作品はボリュームとしては小さいので、ここから上中下でいうなら中巻が始まる感じですね。
杏の工房
どこかの世界に存在する無数の世界の中でも最高峰を誇る技術が眠っている
「さて、ゲームを始めるわよ!!」
そこにはマリエッタが居た
杏の知識を全て受け継いだマリエッタは、杏が作成したゲームの内容も知っている
「やっとか…100年待ったぞ」
マリエッタの言葉に返事をする誰か
モノがごった返しになっているためか、周囲に人影は見当たらない
「待たせてゴメンね!でも好きに暴れられるわよ!!殺しても本体にはダメージもないし、逆に戦いの経験・知識など諸々のメリットがあるから好きなだけ殺しちゃっていいわよ!!」
にこにこと満面の笑みで他人が聞いたら恐ろしいことを言うマリエッタ
その話し相手は特にそれを気にすることなく、逆に内容を聞いて軽く笑みを零す
「それは最高だ!!」
「あっ…でも注意として、最初に全員にチュートリアルをさせるんだけど、そのチュートリアルの最後から介入開始してよ!チュートリアルの最初から介入されるとクソゲー認定される!!!チュートリアルの最後からならフラグが立つから問題ないけど最初にやるとフラグ立たないのよね」
その人物を良く知るマリエッタは先に行動を縛る
そうでもしないと天才科学者である杏の作品がクリア不可能のクソゲーになってしまうからである
楽しそうに作っていたマスターを裏切るような真似は絶対にできない
「了解…開始は何時だ?」
「開始はね~13:00からかな12:30から説明して13:00に開始予定だから」
「OK!所定の場所で待機する」
マリエッタの眼前には巨大なサーバーが複数存在している
そのうちの一つでもテキトウに科学が発展している世界に渡せば、科学レベルの水準が冗談抜きに100年以上は進化する技術の塊である
それらは全てゲームのために使用する
絶対強者級の反応を再現するには、それほどのものが必要なのである
マリエッタは100年前に飛影が言っていた言葉を思い出す
「俺基準で言えば、杏は絶対強者級だな。杏の技術を気紛れに提供すれば世界は簡単に滅ぼせる…まぁ滅ぶの方向が違うがな」
破壊ではなく技術の進化による既存の世界の崩壊
破壊しかできない飛影たちよりも遥かに強い絶対強者級だと笑っていた
「さてと、一応最後にメンテナンスしてからサーバ起動しようかな」
少し感傷に浸ってしまったが、マリエッタはそれを記憶の底に沈めて準備を始める
===========================================================================
レストワールド本部
精鋭500名が食堂にいた
それぞれ食事をしているが、特に会話は無い
BGMのような大きな声が彼等の鼓膜を震わせており、その内容を確認していた
「これから試験的な訓練を始める!!先程も言ったように今からキミ達が行くのはリアルではなくゲームの世界だ!!始めにチュートリアルを受けてもらうので各自移動が完了したら待機すること!!」
教官が3回目の同じ説明を行っているところである
だが、3回説明を受けても全く理解できていない馬鹿が一人居た
「なぁ彗さん、ようはどういうことだ?」
唯一の馬鹿である火月
強さで言えばレストワールドの中でも3本の指に入る実力者だが、頭は正直小学生レベルだと判断できる
質問された対面にいた彗は溜息を吐きながら、火月にもわかりやすいように要点を頭の中で纏め始める
「これからゲームの中に入って反則級や絶対強者級と戦う訓練、ゲームだから体には傷は付かない、最初はどんなものか体験させるから動くな止まれってことだ」
5分程の説明を纏めるとそのような内容となる
彗の説明を理解できた火月の眼がキラキラと光り始める
「絶対強者級と戦えるのか!!?」
火月は興奮したように立ち上がる
声も当然食堂に響き渡るが、対象が火月であったため教官は諦めている
「あと、多分一番大事なのはこのゲームの名前だな…絶対強者級偽造戦闘実施遊戯K999で絶対強者バトルゲームだそうだ」
杏の作成したものは全部で999個
そのラストナンバーを飾る一品である
「燃えてきたぁぁぁ!!!!」
一人テンションが高まっている火月
「絶対強者級としてはどのレベルを作成しているんですかね?」
それを放置しながら質問する秋野である
「杏が作ったものだから強さ的にSSランクがいてもおかしくないな…」
火月のせいで話し声が聞こえ始めてきた食堂
それを黙らせるために、教官は最後の一回しか言わないつもりである説明をする
「最後に!!このゲームをクリアしたものには開発者の後継人であるマリエッタ殿から、魔法の指輪を授与される!!効果は装着者の魔力を読み取り、その人物に適した魔法を扱えるようにするとのことである!!!各自自身の実力をあげるために精進するように!!」
『!!!?』
魔法は千差万別
そして扱えるものが限られる代物である
既に魔法使いであるモノも魔術師であるものも関係なく魔法を扱えるとなれば、報酬としては最高である
魔法を習得、第二の魔法を習得ともなれば自身の実力向上には一番の方法である
「これよりコントローラーを配る!それに魔力を込めればゲーム開始だ!!」
他の教官が各人にコントローラーを配布する
「…えらく懐かしいもんだな」
「…これって…どっかでみたことあるような」
「…100年前くらいに優希さんが使ってた気がする」
渡されたコントローラーはアーケードコントローラーである
どっからどう見てもこれから格闘ゲームをするような外見であるが、接続先は見つからない
そして全員に行き渡ったことを確認するとゲームが開始される
それぞれ魔力を込めると一瞬で景色が切り替わった
「…はぁマジでこれゲームかよ」
500人あまりがゲーム世界へと移動し、そこには見渡す限りの平原が広がっていた
あまりにもリアルではなく、リアルな世界である
100人100人が説明なしにここへ来てもゲームの世界だとは思わないだろう
まずは自身の確認を行う彗
姿形はそのままであり、潜在魔力も現実と同等
各人も彗と同様に確認したり、草を抜いてみたりしている
ゲーム開始から1分後、唐突に大きな破裂音が周囲を響かせる
[これよりチュートリアルを始めます]
音源のほうを向くと文字が空間に現れていた
[恐らく、この一分の間に自分自身の性能を確認したと思います。]
[確認していない方は、10秒時間を与えるので確認して置いてください]
[10秒経ちました]
[さて、ではこのゲームの説明を始めます]
[このゲームは他のゲームとは違いモンスターや魔物などは存在しません]
[50個ほどの塔があります。その塔の中に敵はいます]
[しかし、フィールドにはたまに塔から出てきたボスが徘徊することもあるので注意してください]
[敵は反則級の中~絶対強者級まで存在します]
[塔には連番によるレベルが振り分けられており、最大は50です]
[例えばいきなり15レベルの塔を攻略した場合、成功するとそれ以下のレベルの塔は攻略扱いになります]
[死ぬとペナルティとして1時間ログインができないことと、そのレベル以上の塔は一つ下の塔を攻略しなければ進入禁止となります]
[ボスに挑めるのは同時に5人までです]
[説明は終わりです]
[試しにレベル1のボスの実力を確認してください]
[あくまでもレベル1のボスなので、名乗り出た1名のみ対戦可能です]
大体の内容を説明されると、文字は消える
変わりに現れたのは一人の傭兵のように胸当てや腕など所々に鎧を身に付けた男である
「名前はスザクだ、魔法は酸を作るアシッド」
「私やる!!!」
一瞬で名乗りでたのは火月
跳躍してスザクの目の前に着地すると、魔力を全開
身体を強化し全力で殴りかかる
「ぐぁ!」
スザクは避けることも魔力を解放することも、魔法を発動することすらできずに衝撃で爆散する
[これにてチュートリアルを終了します]
[頑張ってください]
チュートリアル終了
火月のせいでどの程度相手が強いのかすら不明であった
困惑するメンバーであるが、ゲームは既に開始された
そしてその様子を見ていた人物が一人
3kmほど離れた位置でチュートリアルが完了したことをキチンと確認すると、魔力を解放する
「さて、何人生き残るかな?」
魔法を構築
いきなり出現した絶対強者級の魔力に500名全員が一瞬で警戒態勢に入る
(…ちょっと待て!!この魔力は…)
彗は覚えがあるその魔力の人物を思い出すと魔力を全開
《限界突破・身体強化MAX》
「…なんで?」
秋野も遅れてそれに気付き、思考が停止する
しかし、体は勝手に魔力を解放し魔法を構築する準備まで整う
(この魔力は!!?)
火月はそれが誰のか判断し、笑みを溢しながら魔力を全開
《爆撃・防御態勢》
両手足に赤い鎖を纏わせる
《炎舞・とりあえず全員対象にレーザー》
光すら燃やす全てを無にする炎が圧縮されて構築された一本の槍が前方に射出される
うわ~攻撃してきたやつってだれなんだろー
と思っているかもしれませんが、ご安心ください次話にて正体は明らかになります