秋野の成長
リーベと秋野の戦いです
いや~リーベに関しては一度もまともに戦わせていなかったので、苦戦しました
「じゃあ結界は私が張るわ、丁度いい感じに広い敷地があるしね」
リーベからの殺気により、気絶しているフランとコルス
さすがに近くで戦うのはどうかと判断したリーベは秋野に滅んだ国の跡へと誘導する
「ありがとうございます!」
ゆっくりと歩いて移動
その間に国の跡地を中心に半径10kmほどの結界を展開する
中心まで来ると対峙して秋野は魔力を全力で解放する
遅れてリーベは秋野のMAXを測りながら魔力を解放
「あら?少しは強くなったわね」
「まぁ…リーベさん達に徹底的に絞られたんで」
「それ以降よ、久しぶりに会ったけど前よりも強くなってるわ」
「まぁ…もう見てるだけは嫌なので」
100年前
見ることすらできず、逃げるしかなかった戦い
それはリーベも同じである
「そうね…じゃあ今度は一緒に強くなって戦いましょう」
ただ一人
飛影を犠牲にして何とか生き残った戦い
リーベもその時は逃げるしか選択肢が無かった
乾いた笑みではなく優しい笑みを浮かべるリーベ
「そうですね…私も頑張ります!!」
《黒霧》
黒い霧がリーベを中心に発生し拡がっていく
それが大変厄介で危険な霧であることは秋野は充分に知っている
《集固・霧固め》
リーベを中心に発生した霧は空へと集められる
「やっぱり私の魔法は貴女の魔法と相性悪いわね…」
リーベの黒霧は発生した瞬間に世界と交わるため破壊は不可能であるが、秋野の魔法であれば霧を集めて無効化できる
自身の世界が拡げられないため、リーベとしては接近戦での戦いになる
「じゃあこれはどうかしら?」
《黒霧・槍》
黒霧を集めて槍を生成、割りと全力で投擲する
音速を超えて放たれる一撃
「ぃ!!?」
《集固・3枚ガード》
空気を固めて3層の壁を作り出す
槍は軽々急ごしらえの壁を貫く
最後の一層に関しては秋野を吹き飛ばす役割を持たせていたため、ギリギリで回避
「今の死にますからね!!!?」
「あら?ちゃんと貴女に当たったら霧散するようにしたわ」
さりげない優しさ
しかし、秋野にとっては本当に死ぬかもしれないと思っているため、さりげなくではなく大っぴらに優しさを見せて欲しいところである
「上手く避けたじゃない…反応速度は向上しているわね」
じゃあ次は2本とばかりに、槍を2本生成して放つ
「ちょぉぉぉお!!」
周囲に漂う程度の黒霧であれば集めることは可能であるが、既に圧縮されているものに関してはとても集めるのに間に合わない
全力で横に回避して避ける秋野
「魔力は互角なんだから受けてくれてもいいのに」
避けられたことに少し不貞腐れているリーベであるが、秋野にとっては死ぬレベルの一撃である
「まぁいいわ、キチンと圧縮しないと放てないのはちょっと辛いわね」
圧縮しなければ秋野の魔法で集められてしまう
圧縮するのであれば時間が掛かってしまう
少し不利な遊びになったと思いながらもリーベの背中に大きな翼が生える
そして爪を伸ばし準備万端
「じゃあ行くわよ」
きちんと宣言する
魔力を同程度に合わせてくれているが、戦闘経験の差がある
そして何より種族の差が大きい
翼が羽ばたいた
秋野がそう視認した瞬間、視界から消え去る
《集固》
全力で上に跳躍しながら魔法を発動
空中に無数の自分だけの足場を生成し、予測不能な跳躍で逃げながらリーベを視界に捉える
秋野の視界にはリーベが50m先から腕を振り払っていた
鉄をも切り裂くリーベの爪から唯それだけの動作により、衝撃波が発生
(この人に加減なんてしたら一瞬で死ぬ!!)
流石に再生するとはいえ殺すことに関して抵抗があった秋野であるが、その考えが根本的に間違えだったと再認識する
《集固・双エアロバースト待機》
魔法を使って防御しようものならその隙に接近を許してしまうと判断した秋野は足場を利用して急降下
それを予想していたリーベは既に回り込んでいた
秋野の両の手それぞれには集めた空気がある
《集固・グラビティバースト》
だが、それはまだ使わず集めた重力を放つ
リーベは腕を振り秋野に衝撃波を放ちながら重力から離れる
《集固・広域エアロバースト》
《集固・ブースト》
片手の空気を弾く
集中ではなく広範囲を狙った一撃は衝撃波と相殺する
そして脚に空気を集めて噴射
一時的にリーベと同等の速度を得て追いかける
《集固・攻撃型玄武》
追いかけながら空気を集めて無数の空気の膜が自身を覆う
接近戦はリーベとしても望むところであり、すぐさま急停止して振り返り接近する
接近戦では経験の差がモノを言うが、それ以上に魔法が使える身と使えない身の差は大きい
リーベの蹴りを頭につけた空気を弾き自身の身体をずらして避ける
攻撃型玄武は三つの特性を持つ
一つが自動回避
攻撃を感知して適切な位置につけた空気を弾き自身の身体をずらす回避
お返しとばかりに秋野は蹴りを放つ
そしてもう一つが攻撃速度増加
蹴りを放った瞬間、空気が弾け自身の攻撃をジェット噴射により加速させる
「っ!」
予想よりも速い攻撃にリーベは腕を1本捨てる
態勢をわざと崩して腕で防御
その腕は粉々に吹き飛ばされるが、瞬時に再生する
「乙女に必要なものは!!!」
魔力を全放出
ここまで接近し攻撃が可能であり、玄武を纏っている秋野の唯一のチャンス
身に纏っている空気の膜に更に空気を集めて圧縮し放出
加速した拳がリーベを襲う
その腕をいなし反撃を試みるが、最適な動作になるように空気を放出
一時的にであるが、無茶な動きが可能になっているため、外した拳はそのままにその場で一回転
踵がリーベの腕を爆散させる
「気合と!!」
瞬時に再生するが、秋野の動きはまだ止まらない
そのまま身体は縦から横へと回転
回し蹴りが防御したリーベの両腕を弾き飛ばす
「根性と!!」
《黒霧・葬送》
これでリーベは防御することができない
瞬時に再生するが、動作は一瞬遅れる
《集固・エアロブラスト》
溜めていたもう一つを解放する
無防備な腹へと放つ
「残念」
しかし、その発射口の手は吸血鬼の翼によって弾かれてしまう
隙ができた秋野へと終わらせる為に爪を伸ばすリーベ
(まだ!!)
「お淑やかさだぁぁああああああ!!!」
《集固・ストームブラスト》
攻撃型玄武により全身に集めていた空気を指向性を持たせて弾く
至近距離から放たれる無数の風の槍はリーベの全身を吹き飛ばす
お淑やかさの欠片もないが、間違いなくリーベを一回殺した秋野
殺した相手は一瞬で再生するが一回は一回である
「相打ちね」
「え?いやいや完全に私の勝ちじゃないですか!?」
秋野としては相打ちされる要素は無かった
その反応にリーベは溜息を吐いて秋野の頭上を指差す
「集中するのはいいけど…周囲の注意が無くなるのは駄目よ」
巨大な槍が秋野の頭上で止まっていた
「っ!!!」
(気付かなかった…)
「まぁ相打ちだけど、一回とはいえ魔力を抑えた私を殺したのだから良しとしましょうか」
このリーベの判定はかなり甘い
実際は最後の一撃のストームブラストを放つ前に既に頭上にあったのであるが、それなりに強くなっていることを認識できてリーベとしては満足したのである
「じゃあ約束どおり、あの餌は食べないであげるわ」
あの餌というのはフランのことである
「よ…良かったぁ…」
「…集中力は良かったわ、魔法の質も上がってる、でも集中しすぎて周囲の警戒が皆無だったのは問題外、総合評価としては一応は『絶対強者級』といったところかしら」
レストワールドの強さランキング1位である秋野であっても、リーベ達にとっては一応は絶対強者級というレベルである
「集中力はそのままで、だけど周囲には注意しなさい。薄い空気の膜を自身の周囲に固定させるだけでも警戒はできると思うのだから、そういった工夫はきちんとしなさい」
「はい!!」
貴重なアドバイスまで頂けた秋野
いつもであれば、全然駄目と言われて終わるのであるがどこかリーベは機嫌が良いようであった
「じゃあ、私の気が変わらないうちに帰りなさい」
「はい!ありがとうございました!!」
深々と礼をする秋野
それを見て笑みをこぼすとリーベはお酒を飲むために、お酒を持っている優希と合流しにその場を離れた
「よし!!ちょっとした調整のつもりだけど、かなり良し!!」
最初の目的としては杏のゲームのための調整であり、ちょっとした絶対強者級を相手にするよりも遥かに良い経験を積めた秋野は小さくガッツポーズ
(あ…言い訳どうしよう)
脅威度SSランクと面識あるように会話していた自分を思い出し
フラン達が気絶から復活した時の言い訳を考えていなかった秋野は頭を抱えながら戻っていった
結果として恐怖であの場の記憶を忘れていたフランとコルスであったため、秋野が1時間考えていた言い訳を言わなくて良かったのである
次は杏作成のゲーム編です
ある人物が登場します