世界滅亡数2位
まだまだ、序章ですかね
皆さん5月病にはお気をつけください。あれは強力です
秋野とフランが受けた依頼は、国を滅ぼした絶対強者級である吸血鬼の駆除依頼であった
対象のランクはBである
強さランキング1位であり、絶対強者級である秋野がいればランクBは受けれるため、秋野とフランはその依頼を受けようとしたが人数制限は3人であった
そのため、フランとチームを組んでいる回復魔術使いの強さランキング480位であるコルスという青年を強制的に連行した
秋野たちがいるのはX0212401世界
レストワールドに杏が提供した転送装置を使って世界の移動が行える
100年前の戦いで世界間の境界がゼロとなり、無数の世界への行き来が容易なったといえどこれが無ければ今のレストワールドは無かったであろう一品である
そんな転送装置で移動した先には所々に城壁のかけらが発見できなければ、ただの荒地としか思えないほど崩壊している国であったものが見えていた
「とりあえず、周囲にはいないみたい」
秋野は周囲15kmをターゲットとして絶対強者級の魔力を探すが探知できないため、そう判断する
転送直後に不意打ちされることも極稀にあるため、警戒していたコルスは溜息を吐きながらその場に座る
「とりあえず拉致してきた理由を教えてもらっても良いですか?」
コルスは78歳であり、年齢的にも強さ的にも上なフランと秋野に質問する
その意見はごもっともである
久しぶりに任務が無いため、身体を休めようと部屋へと戻ろうとしていた際にフランの魔法で自身の影に沈んだと思ったら転送装置の目の前に移動されており、今に至る
「人数合わせ」
ニッコリと笑顔で返すフラン
フランには勝てないと常日頃から感じているコルスは大きく溜息を吐く
「え~と、任務の内容と自分の役割は?」
休みは返上だと諦めて、自身の立場と情報を欲するコルス
コルスはフランのチームの中でも精神的に大人であるため、冷静な判断ができる
その冷静な判断により、フランのチームも助かっている部分がある
「え~と、内容はBランクの絶対強者級討伐で、役割は後方待機」
「は!!?」
その質問に答えるのは秋野であり、驚きのあまり冷静さを失ったのはコルスである
「フランさん何考えてるんですか!!?絶対強者級の討伐なんて今まで受けたこと無かったのに何馬鹿なこ!!!!?」
《ベルッティ・捕縛》
馬鹿といわれた瞬間にフランは魔法を発動
コルスの影が伸びて自分自身の影に口を封じられる
「黙りなさい。目の前で絶対強者級の戦いが見れるからいいの!」
「…っ!!!!」
「え~と、とりあえずフランもコルスも後方待機というかここで待ってて欲しいんだけど…」
何故か見物する気のフランであるが、秋野としては危険であるため吸血鬼とはいえフランにも待機させるつもりである
(相手吸血鬼だしちょっと長丁場しそうだから、転送先が滅びてない街だったら良かったんだけどな~)
秋野は自分の実力を過大評価も過小評価もしていない
無理なものは無理、できるものはできると感覚的に理解している
Bランクを一人で討伐は可能であると考えているが、Bランクを相手に誰かを守りながら討伐は難しいと判断している
単独であれば一人でAランクを倒せる程度の実力はあるが、秋野は自身よりも圧倒的に弱い者を守りながら戦ったことの経験は少ない
そのため、誰かを守りながらの戦いは無理だと判断しているのである
秋野のその判断は正しい
「うぅ…わかったわ」
自分達よりも実力者である秋野の言葉はフランにも突き刺さり、反論も無い
秋野は再度広範囲に探知を行う
東に50kmほど言った先に1000を超える弱い魔力を探知する
「東に50kmくらいのところに街があるみたいだからそこで待ってて欲しいかな。あとどうしても見たかったら私の影に魔法使ってもいいよ」
反論は無くても、泣きそうな表情をしていたフランを見て妥協する
あまり情報は知られたくないが、フランであれば大丈夫だろうと判断した
「じゃあそうさせて!」
少しでも秋野に近付きたいフランとしては、その提案は嬉しいことこの上なかった
コルスとしても、危険地帯から離れられて街で観光できると判断したため秋野の判断に従う
相手が依頼どおりの吸血鬼であれば、秋野は世界を範囲に魔力をサーチして目標を見つけて潰して次の日には合流できた
しかし、神でも女神でもない秋野には幸運は無かった
「あら?同属の匂いがすると思って来たら秋野じゃない」
周囲3kmほどの警戒は続けていた秋野
しかし、秋野がその接近を察知する前にそれは秋野達の背後に立っていた
淡い紫色の髪色で赤い眼をした身長は130cmほどの少女
それは今のグループで一番会ってはならないものであった
「飛影先輩の命日に参加しないで何やってるんですか」
秋野は声をかけた人物を理解した上で、溜息を吐きながら振り向く
「何もない墓に行っても意味はないでしょ?」
ビキリと秋野は少しイラついたが、その相手にその感情を向けたところで意味は無い
「…優希ちゃんはどうしたんですか?」
この状況下で話が通じる優希はその場に居ない
極めて冷静にと意識する秋野
「あの子は今御使い中よ、この世界で美味いお酒がある国まで行ってもらってるわ」
100年前
飛影が死んでから40年ほどは秋野や優希を重点的に鍛えていた
40年の切れ目で優希と共に秋野達から離れて各世界を渡っていた
飛影の墓参りに来なくなったのは30年ほど前である
たまに会うが、3本槍時にあっていたら街に行って酒を飲まされるはめになる
だが、今は状況が違う
「…脅威度SSランク」
脅威度SSランクの者たちは特徴と顔写真が公開されている
発見次第命を優先して全力で逃げることが前提であるSSランクが目の前にいる
逃げようという意思はあるが、威圧感がフランとコルスを襲っており指一本すら動かせない
「任務よね?もしかしてこの世界にいた吸血鬼かしら?」
「そうですそうです。まぁリーベさんがここにいるってことはもういないんですよね?」
リベリア・ラインベルト・ミリア
世界滅亡数2位
そして吸血鬼殺しである
無数の世界にいる吸血鬼を殺して血をもらっている
ダドマは本当にきまぐれで世界を壊すが、リーベは吸血鬼を狙って世界を滅ぼしているため世界中の吸血鬼はリーベに対して常に恐怖している
「いないわね…もう7時間前くらいに吸っちゃったわ、それなりに美味しかったから満足してたのだけど…もう一匹いるからデザートにはいいわね」
Bランクの絶対強者級などリーベにとってはただの雑魚であり、依頼されたターゲットの吸血鬼は既に殺されていた
そして、リーベの視線の先には吸血鬼であるフランがいる
「私の友達なんで見逃してくれるとかって駄目ですかね?」
秋野は冷静に会話しているが、汗が吹き出ている
「…そうね」
少し考える素振りを見せるリーベ
「…かなり美味しいお酒とか今持っているかしら?」
酒好きであるリーベが出してきた条件
もちろん秋野がお酒を持っているはずも無く、フランもコルスも同じである
「もってないですね…」
秋野は必死に何か話を逸らそうと考える
今はまだ世間話のフェイズである
秋野がリーベに勝てるはずもないため、吸血鬼殺しフェイズに入ったらどうしようもない
「…そういえばリーベさん、飛影先輩の墓参りにこの間行ったんですけど魔剣が全部なくなっていたんですよ」
「は?」
強大な殺気が周囲にぶちまけられる
反則級であるフランとコルスはその場に崩れ落ち、秋野も少し意識が持ってかれそうになるため魔力を解放する
「あら、ごめんね」
殺気が消える
フランは餌、コルスは豚であるが秋野は秋野であるため、少し冷静になるリーベ
「何か心当たりとか情報とか持っていないですか?」
「あの遺跡を攻略できるのは…キヨイかハルカくらいじゃないかしら?…ハルカがやる意味はないわけだからキヨイしか該当しないけどキヨイもする理由が…」
リーベから出てきた情報は秋野と考えていることと一致している
「ですよね」
「ちょっと私も探してみるわ…何か痕跡とかなかったかしら?」
飛影の墓参りには来ないリーベであるが、飛影自体は大切に思っている
ほぼほぼ無限の再生力を持つリーベであるが、単体ではあの遺跡を攻略できないため飛影の墓に行くことができないのである
現場を見た秋野に状況を聞く
(話はそらせたかな…)
既に頭の中にはフランのことが無いように見えた秋野は心の中で安堵しながら、頭の中で何か痕跡があったかを思い出そうとする
「う~ん、特にトラップには異常はなかったですね。墓も荒らされていなかったですし、本当に魔剣だけを取りに来たような印象があります」
「…魔剣だけ?」
それを聞いたリーベ
ふと一瞬だけ心当たりがあるような眼になるが、直ぐに消える
「絶対強者級の盗賊なら可能かと考えたけど…脅威度SSランクでそんなの居ないわよね?」
「いないですね。そもそも脅威度SSランクは飛影先輩関連の絶対強者級だけですし、盗賊であれば静紅さんが該当しますけどあの人魔剣には興味ないですし」
「そうよね…まぁわかったわ情報の提供ありがとう、じゃあその子は頂くわね」
(この人覚えてたぁぁ!!!)
一通り情報をもらい、他に聞きたいことが無くなったリーベは本題へと戻った
「いや、本当にご勘弁いただきたいんですけど」
流石に目の前で友人が知り合いに殺されるのは嫌である
「…我侭ね、ん~…そうだわ。久しぶりに貴女の実力も確かめたいから私と殺り合って一回でも殺せれば見逃してあげる」
「いや、無理ですから!!全力のリーベさんなんて私じゃどうあがいても勝ち目無いじゃないですか!!!!」
幾ら秋野が絶対強者級であり、レストワールドで強さランキング1位といえどSSランクのリーベ相手では月とすっぽんレベルの差がある
「…つまらないわね、じゃあハンデをあげるわ好きな条件を言いなさい」
「1%で戦ってください」
「却下」
「好きな条件って言ったじゃないですか…」
流石のリーベでも1%では秋野にかなり有利である
リーベにとってこれは唯の暇つぶしのためのゲームなのだ
それでは面白くない
「却下に決まっているじゃない…そうね、じゃあ貴女の全力と同程度の魔力で戦ってあげるわ。それなら平等でしょう?」
「…じゃあそれで!あと…確認ですけどリーベさん私を殺しませんよね!?」
最初に言った言葉
"殺り合って"つまり秋野も殺されるかもしれない意味を含んでいる
「さぁ?どうかしら」
不敵な笑みを浮かべるリーベ
その表情を秋野は知っていた
「お願いします!!!!まだ死にたくないです!!!!!」
「しょうがないわね~わかったわ」
さて、100年経って強くなった秋野は同程度に加減しているリーベを一回殺すことはできるのか
次話にご期待ください