ありがたいお話
けたたましいブザー音とともに、ゲームがスタートした。
手には大量の銀のつまようじ。残り時間は2時間。
どうする?今売る?もうちょっと高くなってから売る?
今の値段は6000円。もうちょっといける。
それより肝心なのは、誰が脈を測られているかだ。
その時、大きな声が聞こえた。
「お前ら!聞いてくれ!」
誰だ?
「みんな、俺の名前は大田だ。急な話して悪いけど、今すぐにつまようじを売ってしまった方がいいぞ。後で後悔しても知らないぞ!」
「何でだ?」聴衆が聞く。
「このゲームで脈を測られてるやつを俺は知ってるんだよ。ゲーム開始前に聞いた」
「ちょっと、誰にも教えられてないんじゃないのか?」
俺は気になって聞いた。
「違うんだ。この会場に一番乗りできた俺にだけ、こいつを渡してきたんだ。ほら、この紙に書いてる。隼。お前だよ」
そう言われた隼は自分のリストバンドを見て驚いていた。
「お前ら、不思議に思わなかったのか?これじゃ100%勝てるゲームじゃないか。なぜ脈を掛け合わせるのか……それは、もし脈が0になったら、リターンが0。結局、俺たちが参加費だけ取られたってことになるんじゃないのか?」
確かに。でもそんなに縁起の悪いこと、そうそうないんじゃないか。
「それが怖いなら、隼の命がある今のうちに、売っておいた方がいいぞ」
そう言って、大田は個室に入って行った。
今のうちに売っておいた方がいい……確かにその通りだ。
その時、隼が俺の手を握って、奥に引きずり込んできた。
「ななな何ですかっ!」
「お前の名前、藍原って言ったな。まさかさっきの話、真に受けてるんじゃないだろうな」
「い、いや……話半分というか……」
「ならいい。仲間になってくれ」
「いいですけど……」
「分かってるじゃないか。他にも2人仲間がいる。どっちもいい奴だぜ」