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辺境役場の護身術士  作者: 明須久
第二章 護身術士と霧の王
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夜に思う

「私とお嬢は同じ部屋、貴様は別だ」

「そんなこと、いちいち言わなくても分かってるよ」


 クーリエ村の比較的大きな宿に入った俺たちは、下男に馬車を預けてからフロントで部屋割りを決めていた。


「あたしは普段どおりシロックと同じ部屋でもいいけど」

「貴様ら……」


 リリィシュが不潔なものでも見るように目を眇めた。


「こんなときまで宿代を気にしなくてもいいだろ。せっかくなんだし女子同士で親睦を深めてこいよ」

「……それもそうね。それじゃ大きめの部屋にしてもらってサナちゃん達に混ぜてもらおうかしら」

 ミツキの提案にサナちゃんは「歓迎しますよ〜」と笑顔で応じた。


「そういえばメイカはどうするんだ?」


 こいつは単独行動も多そうだし、ひとりで部屋をとるとか言っても驚きはしないが。不経済だが自腹で泊まるなら文句もない。


「護身術士と……」

「は?」

「…………はまだ早い」


 無表情でそう言うと、メイカはつつ、とリリィシュたちの方へ移動した。どういう意味だよ。


「…………よろ」


 ちらりとリリィシュの方に視線を動かすメイカ。


「む、お嬢がいいなら私は別に構わんが」

「ウェルカムですよ〜」


 それから宿の食堂で夕食をとり、風呂に入って就寝となった。

 入浴の際、女湯から女性陣がキャッキャウフフやっているのが聞こえたのはいい思い出になったと言っておこう。

 部屋の前の廊下で隣室になったサナちゃんたちと別れた俺は、久々に自分しか居ない室内でベッドに転がった。


「シロックは最近少し変わったわね」


 先日ミツキに言われた言葉をふと思い出した。そのときはただ「そうかな?」と答えただけだが、いまになって思えば確かに自分でも少し変わったと思う。俺は天井を見上げて取り留めもなく考えた。

 きっといままで、人との関わり方を知らなかったんだ。俺の育った村は閉鎖的で、物心付いた頃には村人全員が家族もしくは顔見知りだった。初対面の人間なんてのは村を出てはじめて遭遇したに近い。他人との距離の取り方というものが、よく分からないのだ。

 そう、思っていたんだが最近自分の周囲がやけに賑やかになった。俺が変わったというのなら、一番大きな要因はやはりミツキの存在だろう。あいつと出会ってから俺はぐいぐいと引っ張られっぱなしだ。もしあいつと出会っていなければ……俺はあのままイカーナの森で死んでたな。


 翌日、パンとスープの朝食を摂ったのち俺たちは再び馬車を駆り、次の村へと旅立った。

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