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非才陰陽師-1
「別れよ」
泣きそうな顔をした彼を、ぼんやりと見ていた。
付きつけた携帯端末には彼の不貞のあと。否定も肯定もせず、また哀しそうなフリで綺麗な終わりにしようとするのね。
「うん」
ねえ、なんでそんな顔をするの? 貴方がやったんでしょう? なんでそんな、傷付いたみたいな顔をするの?
もういいの、もういいよ、無理にそんな顔しなくたって。貴方のそんな癖を無くしてあげたかったのに。馬鹿だな、私。彼にとっては、今までの「下らない女」の一人じゃない。
「もう、限界なんだ」
私の顔も見ずに、背中を向けて。その後ろ姿に小さな男の子の背中が重なって。
――行かないで、なんて。
喉元まで出かかった言葉を呑みこんだ。
あーあ。
誰もかれも、卑怯者ばかりね。
手首で揺れる数珠を見つめて、なりだした携帯端末に手を伸ばした。
プライベートは、ここでお終い。