表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SCARLET  作者: 九条 隼
SCARLET:天才たちの話
6/58

閑話


あなたに謝らなければいけないことがあります。あの狡猾な少年に騙されたのにも気付かず、ずっと悔やみ続ける、優しいあなたに。

恨んでなどいません。あなたを今でも愛しています。……ねえ、本当よ。

あなたにあえて本当に良かったって、素直に思えるわ。毎日毎日、自分がまるできれいな人になったみたいな気がしたの。私は絶対に、世界で一番幸せだったのよ。



誰よりも優しいあなた。世界で一番素敵なあなた。

そんなあなたに、あんなことをさせて。そんなあなたをずっと苦しめ続けて。……ごめんなさい。



素直じゃない私だけど、今ならちゃんとあなたに言える。言えるのよ。でもね、でもあなたに私の声は、届かないのね。




好きよ。世界で一番愛してるのよ。本当よ。

あなたの綺麗な手を、私のせいで汚してしまってごめんなさい。でもね、あなた。私は嬉しいのよ。……なんて、不謹慎ね、私。





ああ、何でかしら。こんなに近くにいるのに、なんで気付いてくれないの。泣かないで。謝る必要なんてない。あんなオコサマの言うことなんて信じないで。私のことを信じなさいよ。ねえ、ねえってば。……ねえ、あなた。




わかってる、わかってるわよ。

本当は、こんなことしたって無駄だってわかってる。

神様なんていないわ。ヒーローなんていない。救世主なんていないのよ。いるのは嘘つきに卑怯ものエゴイストばっかりよ。わかってる。わかってるのよ。


死者の言葉なんて、あなたには届かないんでしょ?

あなたにはなし続けてもう五年ね。そろそろ潮時かしら。やだな。あなたの傍にずっと居たいよ。ずっと、ずっと。



でも、だめね。

ほら、見てよ。この醜い身体。まるでおとぎ話の怪物だわ。……なんて、見えるわけないわよね。わかってるわよ。






自分が自分じゃなくなってく感覚。

もう、慣れたわ。でもそれももうおしまい。ほら、見える。私の敵。





妖怪擬きの私の敵、陰陽師。




なんでかなぁ……ただ、あなたと居たかっただけなのになぁ……。

なんで助けは来ないの?

罰だけはちゃんと下るのかしら。






こんな世界、大嫌い。





でもね、あなたと会えたこの世界を憎むことは、できないのよ。……なんて。



……うそよ。ばか。きらい。


私に気付かないあなたなんて。




「 ……!」



……ああ、もう。

さいていね。なんでこんな時だけ私を見るの? 折角本当に消えちゃうのに、未練が残っちゃうじゃない。

何で私が見えるのよ。何でそんな泣きそうな顔するのよ。




笑っててよ、好きよ、あなた。


愛してた。







最期の最期にあなたを見れて、最期の最期に、私を見てくれて。





--しあわせ、よ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ