悪夢
私は久しぶりに夢を見た。
話によると毎日見てはいるそうだが…記憶があったのは何年ぶりだろう。
しかもとてつもない悪夢だった。
…コンビニに寄っていた。
買うものはいつも通り。
ポテチとゼリーとコーヒーとフライドチキン。
やけに苛々する店員だ。
リストラでもされたのか?
50過ぎ程。白髪が半分の頭に冴えない顔。
動きもとろい。
やけに言葉をどもる。私が会社を経営して人員削減するなら真っ先に切るだろう。
愛想もない。
たかがレジ打って袋につめるのに一分もかかった。
他に客もいない。
そして何故か妙に苛々していた。
「アンタね、そのどん臭い動き改めないとどこいってもやってけないよ」
怒鳴って荒く袋を掴んでコンビニを出ようとする。
「あっ、お、客…さん」
店員が追い掛けてくる。動きはとろいが。謝るつもりか?一応足を止めた。
「黒い車に気をつけて」
やけにドスがきいてはっきりした言い方。
少し戸惑うが予想が外れて苛々していた。
「は?黒い車なんてどこにでも走ってるでしょ?つくづくうざいね。アンタ」
そう言って私は大袈裟に戸を開けて出た。私は歩いた。
無意識の中を歩いた。
道は体が覚えている。
ふと…違和感に立ち止まった。
音が無い。
…音が無い。
予感。
自分の体から血が引いていくのを感じた。
目が会う。
車のライト。
何もかもおかまいなしで突っ込んでくる"黒い車"。
キャアアアアァァ
それはタイヤの軋む音か。
私の悲鳴か。
…それとも…別の…
冷汗と共に目覚めた。
朝。
いつもの日常。
現実が始まる。
…いつものコンビニ。
あぁ、苛々する。
この店員のノロい動き。
デジャヴが重なる。
…どこで見たんだろうか。
「ねぇ、お客さん」
…店員が前の客に話し掛ける。
話なんてしてないで早くすればいいのに。
「昨日、この近くで事故がありましてね」
前の客は時間があるのか、話を聞いていた。
あぁ、苛々する。
「その被害者がほら…」
店員が私を指差す。
前の客は驚いた顔をして私を見ていた。
「…え…」
横のおにぎりの棚…の奥の鏡を見た。
そこには血まみれの女性が写っていた。
…それは、私だった。
作者ノンフィクションです(笑)