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ひとりごと

2話目からは3年ちょっとぶりの更新です。

単純バカ男のプロポーズを断ってから3ヵ月。


今でもあの時の事を思い出すだけで、親子連れが行き交う道を1人で歩いているのに笑いがこみ上げて吹き出しそうになる。


目的地の門の前で歩みを止めて、門の向こう側で遊んでいるであろう女の子を探す。


「あっ、ゆりさまだ!」


私が見つけるより早く、彼女に見つかってしまった。


「実生、迎えに来たよ!」


「は~い!ゆうちゃんせんせ~い、みうかえる!」


すると私の視界に男性保育士の姿が現れた。


仕事柄いつも思っている事を完璧に顔に出さずにいる私は彼が現れた途端、年齢に似合わずまるで学生のように一瞬で頬を赤くしてしまう。


私はこの“ゆうちゃんせんせい”こと(まさる)先生の事を密かに想っている。


しかし厳密にいえば実生の母親である奈緒はこの事を知っているので、“密か”というのは当てはまらないのかもしれない。


「今朝佐々木さんからご連絡をいただいてます。

中へどうぞ。」


笑顔でそう言われるまま保育園の門の中へ入る。


子供がいない私には、こういう場所は特殊で簡単には入れない場所である。


今までに数回奈緒と一緒に来たことはあるが、1人では今回が初めてだ。


優先生が実生の帰り支度を手伝っている間、彼の後ろ姿をぼんやりと眺める。


できる事ならあの背中に触れたい。


いつもなら簡単すぎてたいしたことではないのに、今回はそれがとても難しい事に思えて仕方がない。


なぜなら彼はこちらが笑ってしまうぐらいに鈍すぎるのだ。

大抵の男なら私が一瞬上目づかいで見つめようものならすぐにその気になってガッつくのに、

彼の場合は笑いかけても何をしても動じない。


私は学生時代から今まで自分から告白をした事がなく、すべて相手から告白するよう仕向けていた。


今回も向こうからそうするように仕向けてかわいがるつもりでいたのに、

それができないでいる。


予定では初めて会ったその日から遅くても1ヶ月以内には彼を自分の物にできると思っていたのに、

1年たった現在、信じられないことに彼はまだ私の物ではない。


当初はかつて経験した事のない異常事態に、私は今までのように男をオトす事が急に出来なくなったのではないかと思い、ショックを受けて焦った。


試しにこの瞬間も子供を迎えに来てちょうど帰るところの父親にさり気なく笑いかけてみても、当然のように少し挙動不審に照れながらすれ違って行く。


この事でわかるように、私の魅力は少しも衰えていない。


今日も私の心と身体は不完全燃焼のまま終わりそうだ。




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