夏希,s Side-2
相変わらず読みづらいと思います。
支離滅裂過ぎて、自分でも恐ろしい。
東京から車でそれほど遠くない場所に位置するT市は人口3万くらいの小さな街である。
東に成瀬川【青龍】が流れ、南に“青蓮寺湖”を擁した平地【朱雀】が広がっており、北には鷲羽岳【玄武】があり、西に街から郊外へ続く幹線道路となる巨大な道【白虎】が走っている。
その東西南北の各場所には、四聖獣を模った祠が祀られている。
街の中心には、古の社と呼ばれ、昔から神が宿る森と市民から崇められている“蔵乃宮大社”が鎮座している。
そんな土地柄のT市は古くより霊的に守護されているはずであった。
だが、ここ最近になって地脈の乱れが生じて、呼応するように怪奇事件が多発化し出した。
特にここ数年は、橘家の力を以ってしてでも事件を抑えきれず、ニュースが取り沙汰されるようになっていた。
その橘家は、蔵乃宮大社の敷地内に屋敷を構えている。
屋敷自体はそれほど大きくはないが、蔵乃宮大社自体はかなり広い敷地を有している。
戦国時代の武家屋敷を思い浮かばされるような建物を前にした篝夏希は、今日何度ついたかわからない溜息をついた。
ここまで来たものの、やはり気は重い。
門を潜ると、黒スーツ姿の男が立っていた。
いつも思う。
ここを潜ると、ちょんまげ頭で袴姿をしていて、腰に刀を帯びた侍がいるんじゃないか、と。
「御待ちしておりました、篝様。
橘家十三代当主が御待ちしております」
無表情で男が話しかけてくる。
夏希は男に対し、出来る限りの無表情で一礼を返す。
男はお辞儀をして夏希を見送ると、どこかへ歩いて行った。
純和風の玄関を入ると、そこには風景に似つかわしくないスロープが設置されている。
玄関でブーツを脱いで、シンと静まり返っている建物の中へと進んで行く。
奥の間へと続く長い廊下からは、見事に手入れされた庭園が見渡せる。
庭園に植えられた紅葉の木は、見事なほど鮮やかに彩り付いていた。
廊下を黙々と歩いていると、突然背中にどんっと何かがぶつかった衝撃が走る。
「なっちゃん、こんにちわ!!」
夏希に勢いよくぶつかって来た人物の頭を、夏希は優しく撫でてあげる。
剣道袴姿のこの少女の名は、橘優奈。
橘家第十三代当主橘穂乃香の妹に当たり、剣道の腕は大人顔向けの実力を持っている。
年齢は12歳になり、茶色掛かったセミロングを邪魔にならないように後ろでちょこんと結っている。
彼女と会うのは、もう二年ほど経つだろうか。
たった二年、会わないだけでも子供は見違えるほど成長するものだと、彼女の頭を撫でながら感心した。
「こんにちわ、優奈。
だいぶ大きくなったね」
「えへへっ。
だって、なっちゃん、全然会いにきてくれないんだもん!」
ぷぅっと頬を膨らませて、優奈はいじけてみせる。
初めて会ったときは、まだ彼女は6歳くらいだっただろうか。
その頃は恐ろしいモノを見るかのような目で見られていたが、気がつけばこうして懐く様になっていた。
最初は鬱陶しくも思っていたが、今は可愛くて仕方ない。
昔の事に思い耽っていると、ぼふっと今度は正面から抱きついてきた。
「なっちゃんの匂い、優しくなった......」
「そう、かなぁ?」
「うんっ」
優奈は嬉しそうに満面の笑顔で頷く。
この橘家に来た時、夏希は19歳ぐらいだっただろうか。
あの頃は全てが憎く全てが疎ましいと感じ、“陰”の感情が彼女を闇へと引きずり込み、心は徐々に《喰鬼》へと堕ちていった。
闇へと堕ちかけた彼女を救ったのが、橘家の人間であった。
そこから橘家との交流が始まった。
今思えば、彼らに出会っていなければ彼女はここにこうして人間として存在していなかっただろう。
今度は夏希の方から優奈をぎゅっと抱きしめる。
『優奈殿、どこで遊んでるんじゃ?』
不意に背後から声が聞こえてくる。
振り返ってみると、小さな黒猫がてこてことこちらに歩いてくる。
彼女らの前にちょこんと座り、こちらを見上げてにゃーっと愛らしげに啼いた。
「ぁ、クロ」
優奈が猫の名を呼ぶ。
クロと呼ばれた黒猫は、後ろ足で頭を掻く仕草をして毛繕いをする。
クロは優奈がつけた愛称で本当の名前はクロガネと言い、見た目は愛らしい猫であるがこれでも《喰鬼》の類である。
決して、全ての《喰鬼》が人に対して仇なすとは限らない。
クロガネのように人と共存出来る存在もあるのだ。
一通り済ませて満足したのか再度ちょこんと座り、こちらを見据えると口元を歪ませて言葉を紡ぐ。
『これはこれは、誰かと思えば夏希殿ではないか。
懐かしい匂いがしていたので、もしやとは思っていたが......。
夏希殿がここに赴かれるとは、何やら気持ちの悪いモノがありますな』
どんな言われようだ、と突っ込みを入れたかったが、その言葉をぐっと飲み込ん逆に嫌味を猫に向かって吐き捨てた。
「来たくて来たわけではない」
彼女の言葉に、黒猫はクックックと喉を鳴らす。
『まぁ、無茶をしない事だな。
優奈殿、稽古に戻ろう』
黒猫はくるっと背を向けて廊下を歩き出す。
じゃぁねと、優奈も手を振ってクロガネのあとを追って走っていた。
彼女らを見送ったあと、小さく深呼吸をして再び彼女も歩き出す。
長い廊下の一番奥、北側に設置されている部屋の前へとたどり着く。
入るためにノックをしようとした時、先に中から凛とした声が響く。
「どうぞ、お入りになって」
瞳を閉じてグッと拳を強く握り、ゆっくりと眼を開き静かに目の前の扉を開いた。
駄文で申し訳ありません...。
こんな駄作ですが、暖かい目で見守ってください(涙
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