武と忍の合衆国
本編~。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 僕の名前は甲賀忍忍族階級の高一。 僕には幼馴染みの女の子がいて、昔はよくその子と遊んでたんだ。近くの川へ行ったり、廃棄のビルに忍び込んだり。あの頃は、そうだな。今よりももう少し、世界がソフトに動いてた気がする。
でも年を重ねるうちに、夢を実現していくうちに。僕はある問題を意識するようになっていったんだ。
…うんまあそれもあるけどていうかそれが九割だけど、せっかくシリアスなんだから「エロですか(笑)」とか言わないで!!
僕と彼女とは、身分が違う。カーストというものが確実に、存在感を増してきたんだ。
僕はそれが、嫌じゃなかった。だって元から決められた、それは単なる暫定事項なわけで。先代の人達が長い年月をかけて、築き上げて来たルールなわけで。
じゃあ何が問題なのかを考えると、原稿用紙一枚すら埋められなくて。
だから僕は、そんな迷える僕への執行猶予として、彼女と同じ合衆国高校に入学することを決意したんだ。
〓げんざい〓
「ヤッホーィィ!!」
「あんたテンションが意味分かんないわよ!? さっきのシリアスモードは何処へ!?」
「いやー思ったんだよ突然。最初に少しだけシリアスぶらないと、ちょっと危うい気がしてさー!」
「第〓からキャラブレが既にマグニチュードのあんたが危ういわ」
まー落ち着けって、と他人事のように呟くのは甲賀忍。対して、自らを「ローデレ」と呼称しておきながらまだ一度もデレてない裏切りのヒロイン=関原武は言うのだった。
「で、今日は何をしようっていうの?」
「それなんだよ〜。王家の門前にgood-bye地蔵を口寄せして回るか、武道館に武の童心の写真をばら蒔くか。文理選択くらい迷うよ」
「いつも通り導入のバカ発言は果てしなくろくでもないわね。あんた王家に手出したら、親指が腐ったバナナみたいになるまで監禁されるわよ」
「あれ、後者は突っ込まなくていいのかな? 溜め込んでる武族階級の男子生徒たちが同心の幼姿に興奮して、トイレで右手でw」
「やめてあげて!? みんな武士の魂を己の手で汚したからって自害しちゃうから!!」
「ホント、ビジャアル的にも最悪だよなー。やべ、気持ち悪くなってきたw。でも、そーなるって了解してる武も(笑)」
「そりゃまあ、私の可愛さと勇ましさを憑かれて男どもが《ピー》を《ピー》しちゃうのは納得できるのよね」
「(((^^;)」
「うざッ!? まぁいーわ。で、どーするのよ今日は? あんたと居て楽しいってのは別にデレでも何でもなく、正直な感想だけど…。一応は私は武士だからその…ずっと付き合ってられるわけじゃないのよ」
「王室に忍び込もうぜ!!」
「話聞いてたッッ!?」
ガチャン、と関原の携えている刀が鞘ごと、地面に叩きつけられた。稽古は終わり、防具こそつけてはいないものの、ゆったりと羽織った浴衣(←武族階級生徒の制服w)からは武士の魂というのか、覇気を放っている気がした。
「ホントに、破門になっちゃうわよ!!」
「僕は、ならない〓」
「私だけがリスクを負うなんて尚更嫌だわ!?」
もーしかたないなー、などと吐き捨てながら、何やらごそごそと懐から(因みに忍族階級生徒の制服は、学ランww)紙のような物を取り出した甲賀。
それは何ですか、などとは今現在、誰も訪ねたりはしないだろ。チャクラと呼ばれるエネルギーを情報として飛ばす、携帯典話(元は、巨大な巻物を必要としたが、数年前に小型化に成功した)だ。
やがてその紙切れにしか見えないお札を耳に当てると、それに向かって話し始める甲賀。
「あ、こんにちは私、合衆国高校の一年生、甲賀忍と申しますが…」
「誰?」
「(ちょ!! 待て!!) はい、階級…ですか? 私は忍族階きゅ…」
「誰よ!?」
「(ちょバカ!! 揺らすなオイ!!)え? ええそうです。しのぶ、です。お名前を言っていただければ分かるかとってオイいさむ!! ケータイ持ってくなおい!! あ、はい申し訳ありません(相手は王族だって!!)」
その言葉に、ビクウッと肩を震わす関原。王族と武族間のカーストは非常に強固であることで知られている。今でこそカーストの規制は緩やかなものとなってはいるものの、武士からしたら粗相などは考えられないのだ。
怯える関原。それも、罰則や破門の恐怖ではない。自分の武士道精神への、それはダメージだった。
しかし次の声を聞いて二人は、安堵を顔に現す。
『だいじょーぶだよ。このちょこっと騒がしい二人は、シノちゃんとイサみゃん!! 僕のお友達〜♪』
ケータイ越しに聞こえてきたのは、ゆったりとした幼そうな声。しかしそれでも同級生だから!! と膨れっ面を見せるのもなお可愛い、王族階級の息子、繰宮司だった。
『おはよーシノちゃん。今日はどーいうけとこと思い付いたの?』
「はい、それがですね。夜中な王室に忍び込もうかと」
『……』
「何率直に共犯者になりませんか発言してるのよ!? 王室って言ったらつかささんの親戚みたいなもんでしょ!! それを何…」
『ソレ、楽しそうだね!!』
「あえなく許可しましたーー!?」
『うん、やろーよ!!』
「流石はつかささん。懐が深いよ!!」
『来週の評議会をゆーりにに進められるような情報が得られるかもだし〜』
「流石はつかささん。懐が黒いわ!!」
ケータイの奥では、ふふー♪と笑う繰宮さんがいらっしゃった。ゆるショタの可愛いキャラだと見せかけて、実はめっちゃ黒い子。こういう策士の遺伝子が、繰宮一族を評議会でもトップクラスの権威を誇るに至らしめる、一つの要因なのかもしれない。
「じゃ詳しいことはメールしますね」
『うん! お願い〜♪』
スッ、と耳に当てていた携帯典話の札を、綺麗に折り畳む甲賀。ここで畳むというのが、まず彼が忍族階級であることを示しているのだ。武族階級ならば畳むことはせず、国族ならば丸めてケースに収納。技術者である忍族階級のみが、畳むことがチャクラの受信効率を落とさない方々だということを理解しているのだ。
「どーだ、王族のアポ取れちゃったぜー! これで王屋のセキュリティトラップは問題なしだ!!」
「それでもね、私は行かないから!!」
「(((^^;)言ったな…♪」
妙にニヤニヤしている甲賀。対して武士道の女の子は、刀を携えとズカズカと部屋を出ていったのだった。再びケータイを開くと、文字を届けられるメールのモードを使用する甲賀。つかささんへのメールには、何人で行く、と伝えようかな〜♪ 〓七時間くらい後〓
「さて、声をすぼめてだけど、不法侵入頑張るぞ!!」
「おー!!」←つかさ
「へぇ!? ふ、不法侵入? 私は皆で砲筒大会やろうって聞いてきたんですが!? え、へ? 皆さんそういうノリなんですか!?〓 え、えと…頑張るぞおー!!〓」←みつぐ
「おー」←
「あれ、何か返事が一つ多い…」
「私よ…」
「言霊が聞こえる…」
「私です!!」
「だって!! まさか!! 私はゼッタイ行かないから、何て言った子が、ここに居るわけないよ…。…じゃあそこで…武の顔をして武の刀を差してる貴方は…誰だァァァァァァァァァ!!!?」
「あーハイ、謝るわ。でも結局行きたくなっちゃったの。ごめんなさいm(__)mだか顔を下からライトで照らすのやめて!! 私じゃなくてつかささん、めっちゃ怖がってらっしゃる!! 既に涙目よ!!」
これは失礼、と本来なら首打ちも然るべき王族を怖がらせた罪を、口頭で黙認させようとしている甲賀は置いておいて。貢がおもむろに近寄ってきて、ツンツンと武の肩をつついた。
そして。
「え、何…って何で短刀を私に付き出してくるの!? 謝罪!? これで腹切って謝罪しろとでも!? いくら武士でもそんなに命は軽くないわよ!!」
「いえ…必要ないならいいですけども…」
どうやら貢は本気だったらしい。確かに合衆国は「newsoul of samurai-yamato」をスローガンとし、誇り高き武士の魂を重んじて活動しているが。
だからこそ、それだからこそ。まるでそれを課した自分への際限のように、武士の女の子は言うのだった。
「ーーー私は守るべきものがあるうちは、まだ死ねないのよ」
「へーw(((^^;)」
「ね、お願い…。カッコつけさせて…。別の場面では、ーテーションでデレたりするから…サムライっぽいこと一つくらい言わせて!?」
「武士の精神は貫くが、しかしそれは決して死ぬことては別、みたいな?」 「ジャストライトッ!! そのノリよ〜」
「分かったそこまで言うなら、僕は意に決することにするよ。武が堕ちても僕は落ちない」
「え、何に!? しかも落ちるじゃなくて堕ちるって…なんか私が凌辱されるビジョンがよぎったわよ!! 見せ場をくれてやる的なセリフの場面で、ナニ若干レトロなエロゲーヒロイン的ポジションを譲ってくれるのよ迷惑極まりないわ!?」 「『鎧と刀と触手の宴』〜高飛車なローデレサムライが堕ちる!!」
「しかも超マニアックだったわ!?」
場面はとっくに真夜中、さらに言えば王室の華やかな門前だ。一応は声のトーンを落としているつもりだが、次第にヒートアップしていることに気が付かない二人を、
「ちょーっと二人とめ、静かにしたほーがいーよ」
柔らかい声で制したのは、繰宮だった。さっきから中の様子を伺っているようだが。
「あと二分で警備が交代になるはずだよー。そーしたら突入ー!! だねー」
了解しました、と先程のヒートアップを恥じたのか、小さく呟く二人。ここで疑問になってくるのが貢の態度だが…彼女はいつも通り静かだが…しかし少し注意深く伺うとかなりビクビクしているのが見てとれた。当然だろう。
国族階級はまず、王室に入ることすら難しいのに、ましてや不法侵入なんて。
「今だよ!!」
「「「!!」」」
しかしビクビクしている暇など、貢にはなかった。四人の中で最も身分の低い彼女は、その身分の面でも、そして、ノリの面でも、従わざるを得ないのだから。
ある人は言った。
ノリと言う名のデモクラシーは、捨て身のサムライよりも恐ろしい、と。
彼女はその言葉を噛みしめ、まだ言い合いをしている忍族と武族。さらに先導に立つ、外見が飛び抜けて可愛い王族と共に。
未知なる世界に一歩、足を踏み出すのだった。
ありがとうございました~。




