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三題噺もどき5

放課後(テスト期間)

作者: 狐彪
掲載日:2026/02/09

三題噺もどき―はっぴゃくにじゅういち。

 




 震える手を何とか動かし、冷たいボタンを押す。

 外にある自販機は嫌でも冷えていくから、使う方も一苦労だ。

 ただでさえ風が冷たくて手を出すのも嫌なのに、更に冷たいボタンを押さないと温かいものが手に入らないのは、何の拷問なのだろう。

「……」

 あまりにも冷えた指先には、ほとんど感覚がない。

 しっかり押したつもりであっても、表面を軽く触れただけだったらしい。

 ピ、と言う音も聞こえず、ただ入れた分の金額で買えるモノだけのボタンが光っている。

「……、」

 もう一度、今度はしっかし強めにボタンを押す。

 ピ、と言う音と同時に、ゴトンという音が響く。

 さっさとしてくれ、これ以上ここに居るのは無理だ。

「……さむすぎ」

 漏れた声は、風にかき消された。


 :


 自販機で買ったココアを両手で包み込み、校舎の中に入る。そういえば、自販機のココアって甘味料の塊みたいなところがあるよな。あまり健康とか気を付けているわけでもないのだけど、ここ何日か飲んでばかりなので、そろそろ控えようかな……。そうでなくても飴玉とかチョコとかお菓子をよく食べているので。

「……」

 冷えた指先には、少し痛いくらいに熱が伝わる。

 これでちょっと中身が冷めてくれたらそれでいい。暖かいものが飲みたいが、私は猫舌でもあるので。

「……」

 廊下は冷えているが、外にいるよりはマシだ。

 風がないだけでもこんなに体感は変わるのかと思う程に、マシに思える。

 これでもっと日が照っていて、窓が全部閉まっていれば完璧だったのに。

 ……誰だよ廊下の窓所々開けてるの。もう誰もいないのに。

「……」

 昨日はまぁ、それはそれは酷い寒波に襲われていたらしく。

 ここではあまり降ることのない、雪が朝から昼まで断続的に降っていた。

 積もらなかったからよかったものの、これが毎日な雪国の人は尊敬に値すると思う。私は耐えられない。寒いの嫌い。

「……」

 多分、今の私の状況に雪国の人が置かれても、半袖で行けるとか言われるかもしれない。言い過ぎだろうか。行ったことがないから想像もつかないくらいに寒いと勝手に思っている。冬はマイナスが当たり前なんて、考えただけで凍える。

「……」

 静かな廊下を進んでいく。

 今日から、テスト期間に入った我が校は、午前中で授業は終わる。

 大抵の人は家に帰って勉強をするか、自宅待機も何も関係なく遊ぶか。

「……」

 私も1年生の初めの頃は、大人しく帰っていたのだけど。

 いつからか、こうして学校に残って勉強をするようになった。

 たまに教師が見に来るくらいで、基本的に自由にしている。

 勉強したり、休憩したり、図書館が開いていれば図書館に行ったり。

「……」

 今日は―というか、今日も、あの子の教室で勉強をしている。

 私は、少し休憩も兼ねて、こうして自販機に温かなものを買いに行ったが、あの子は集中が続く限りするタイプなのでまだ勉強中だろう。

「……ただいま~」

 と思いつつ、小声でそんなことを言ってみる。

 まぁ、この教室には自分たち以外誰もいないので、こういう事ができる。

 同じクラスの人が見たら驚くかもしれない。

「あ、おかえり~」

 集中しているだろうしと思って、控えめの声量で言ったが聞こえていたらしい。

 私がココアを買いに行っている間に、集中が切れたのだろう。

 椅子に横座りになり、スマホをいじっていた。

「終わったん?」

「ん~一応?」

 とりあえず、なのか。

 まぁ、丁度いいし休憩にしよう。

「なんか食べる?クッキーとかならあるけど……」

「んー、あ、コンビニ行こ」

「え、寒い、今外めっちゃ寒い」

「だって、購買何もないんだもん」

 一応の拒否を見せるが、私の中に、この子に対する拒否はほとんどない。

 拒否をしようにも、もう既に立ち上がって外に出る準備をしているし、私も無意識にマフラーを探している。コンビニまでは少し距離があるので歩くのだ。

「さ、行くぞ~」

「はーい」

 寒い中でも、この子となら、楽しくなるし。

 どうせ寒くて引っ付くことになるので、寒さも割と平気かもな。












 お題:甘味料・飴玉・ボタン

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