好きという息苦しさ
何度か、友達も交えて飲んだ。2人でも居酒屋に行くことが多かった。
告白してくれた日は、彼の家だった。居酒屋で飲んだ後、彼の家で宅飲みをした。
友達、2人が寝静まった後、私は彼の腕の中で寝ていた。
ふと目を覚めた時、彼と目が合った。
『寝顔も可愛いね』
彼に、可愛いと言われると私は照れ隠しができなくなる。
『ごめん。腕辛かったよね』
『そんなことないよ。ずっとこうしてたい』
『私も…』
『可愛い。もう俺のものにしたい』
『私もものになりたい』
本当、馬鹿だった。これが彼の罠と、上下関係の言葉だったということに何も気づくことなく
彼と深いキスをした。
そして朝、私は仕事だった為、彼の車で家に帰った。誰かの車に乗るのは、初めてだった。
『送ってくれてありがとう』
家に入る前に、彼が私の腕を引っ張り、キスをした。
幸せだった。周りからも美男美女だとちやほやされるのも嬉しかった。
そして、彼と初めての経験もした。痛さと彼の優しさに溶け込んでいくような時間だった。
私の作った朝ごはんも美味しそうに食べる彼。彼とベットで結婚の話をする時間は、幸せで楽しかった。
『俺は、結婚したら家庭に入ってほしいと思ってる』
その時の私は、彼の言葉に疑問すら浮かばなかったのだろう。
『だから、結婚したら仕事は辞めて欲しい。何不自由のない生活にしてあげるから』
私は、本当に彼と結婚することを夢に見ていたのだろうか。1か月も経ってないカップルが、家庭に入れ。仕事は辞めろと果たして言うのだろうか。
でも、周りが見えなくなるというのはこういうことだ。
私は彼が本当に私と結婚を考えてくれている…そう思った。
だから、彼が親に会ってほしいと言われたときもすんなり受け止めていた。
そして、彼の親に会う当日、私は友達と遊んだ帰りだった。
友達も送ってくれるということで、彼の車に乗って彼の家に向かった。
初めて、彼の家で2泊3日のお泊まりをした。彼とは、久しぶりに会った。
まともに休めず、やっとの休みだった。
『なんか、久しぶりで緊張する』
『何それ(笑)』
2人でドラマを見て、お風呂に入って寝た。
久しぶりの彼の匂いと触れる手に私は彼に溶け込んでいった。
そして、彼の家から仕事に向かい、また彼の車で彼の実家に向かった。
彼の家は、焼き鳥屋さんだった。お兄さんとその奥さんはとてもいい人だった。
ゼリーとフィナンシェをとても喜んでくれた。でも彼のお母さんには、歓迎の一言もなく
私の目も顔も合わすことがなかった。
『掃除がね。できないから、掃除さえしてくれればいいから』
お兄さんの横でスナックを開いているお母さん。モンスターペアレントとはこういうことだと思った。
でも、彼とお母さんはあまり話してなかった。仲が良くなかったのかもしれない。
お兄さんと奥さんの娘さん・息子さんもとても可愛かった。
でも、私は不思議に感じることがあった。
奥さんと一人。女の子何人かが店の前で話していた。
【誰なんだろう…】
『あれね。元彼女だよ』
娘さんが私にそう教えてくれた。