寂しくなったら俺を呼んで
2年の文化祭。友達繋がりで仲良くなった彼。でも彼は、いい噂が1つもなかった。
彼氏のいる女の子を狙って別れさせる…そんな彼。私もあの時、彼の罠にハマっていたのかもしれない。
高校2年の文化祭。出し物は、演劇だった。
私は、仲が良かった3人と証明係りと看板作りの担当だった。
放課後残って、作業に取り掛かる。団結力があったクラスだったこともあって、作業は
他のクラスよりも早く終わった。
絵具を洗いに行くとき、彼が声を掛けてきた。
『俺も手伝うよ』
『ありがとう』
『なんか、何気に話すの初めてな気がする』
看板は、8人で行った。私含めた4人と彼の4人グループ。
私以外の友達は、1年の時同じクラスだったこともあり話したことがある仲だった。
最初は、打ち解けるのに時間が掛かったけど、看板作りを一緒にしてから少しずつ仲良くなった。
でも、彼とは2人になることも話したことも少なかった。
『てか、あいつと付き合ってるんでしょ』
『うん。そうだよ』
『じゃあ文化祭も一緒だ。いいなぁ。俺も混ぜてよ』
『回らないよ。一緒に』
『なんで?彼氏なのに?』
『友達と回るんだってさ』
『えー。ありえな笑 じゃあ俺と回っちゃう?』
『んー?いいよ。友達と回るから』
『そっか。残念。てかインスタ交換しようよ』
『うん。いいよ』
それから、彼と夜中までDMすることが多かった。やんちゃな彼かの連絡を無視して、私は
彼との連絡を楽しんだ。
授業中も、実習の休み時間も、バイト終わりも、寝る前も、私は彼に夢中だった。
『もう、別れろよ笑』
『え…?』
DMからLINEに変えて、寝る前の電話で彼がこう言った。
『最初っから好きで付き合ったわけじゃないだろ。お前は、自分しか見て欲しくないんだよ。ヒロインになりたいだけだろ』
正論だった。ちやほやされるのが好き。今まで、男子からは豚や豚足や、女の子として見て貰えたことなんて一度もなかった。
そんな私が、高校生になって男子から声を掛けられたり、好きや可愛いと言われるたびに、自分の存在が周りから評価されてると感じていた。
『ま、俺はそんなところがお前の良いところだと思うよ』
『分かってるなら、離れてもいいよ。だってこれが私だから』
『離れるわけないじゃん。俺からしても好都合だし』
『なんで?』
『最低な人間同士仲良くできそうじゃん笑 彼氏や彼女なんて所詮ただの暇つぶし。周りに羨ましがられたいだけの道具。彼氏がいる。彼女がいる。ただの幸せアピールでしょ』
『そう思うから彼女作らないの?』
『本気になって傷つくくらいなら最初から本気にならない方がいいんだよ』
『私が、別れたらもう用済みでしょ』
『んー。それはどうかな。でも寂しさを埋めてあげるよ。俺、優しいから』
優しい…これが彼の優しさという名の悪魔のささやきだったのかもしれない。
『あいつといて、心の底から笑ったことがあるか? いてつまんないなら俺がそばにいてやるよ』
『別れて正解だろ』
『うん。ありがとう』
彼の言葉に沼って、私は彼と曖昧な関係になった。
高校3年生にでもなれば、現実逃避が効かなくなった。曖昧だった彼とも話すこともなくなり、
やんちゃな彼は、3年になれば大人しくなり私と別れた3か月後に付き合った彼女と毎日楽しそうに
過ごしていた。そんな姿を見て見ぬふりをして卒業した。そして私は社会人になる