EP.II Holy-DevilとGhoul
───アメリカ合衆国/テキサス州─────
『アメリカ合衆国超常特別対応局本部───。』
───POA───
「こちら、今月のグールによる被害報告書です。
前年度よりおおよそ20%も増加しております。」
スーツを着た男性が、ガラス張りの開放的な部屋で、ビル群を見つめ椅子に座る男に話していた。
「はぁ…最近はどんどん被害が増えている。
最初は墓荒らし程度だったのが、人を殺してその死体を喰い始めるって、もうグールというよりゾンビだな。」
そう話したのは、POA長官、名はチャールズ・フランクリン・ハワード。
グールによる人的被害の対策として、近年立ち上げられた国家指導の組織。
『超常特別対応局』の長官を務める人物だ────。
始まりはドイツ──。
グールが初めて発見されたのは、1950年東西で分割されたドイツの西側、西ドイツ/ブレーメンの土葬された墓場に現れたのを確認されたのが始まりだ。
当時ドイツでは彼をアラビアの伝承にあるGhoulと重ね、それをグールと呼ぶようになった。
前屈みで青白い肌を持ち、爛れた皮膚と筋肉質な上腕で土を掘り返し死体を喰らう。
それから、グールの発生は次々と広がっていった。
最初の一体が発見されてからと言うもの、イギリスやソ連でも発見が報告され、2000年初頭にはアメリカ合衆国ニューメキシコでもその存在が確認された。
最初こそ大切な死者の墓を荒らす不法者とされたが。
時代が進むにつれ、各地ではグールの対策として紫外線ライトを設置したり、夜間は石炭を燃やしてその煙を炊くことで追い払うなどの対策が取られることにより、グールによる墓荒らしの被害は年々減少していったのだ。
17世紀に記載された書物に、グールの起源が記されたものがある。
それによれば、グールとは執念を持った死者の魂が現世に留まることで生まれる魂の怪異だとか。
死者の肉体を操り、死者の魂を喰らうと言われている。
また熱に弱く、太陽光や炎でその魂を消滅させることが出来るらしい。
グールによる墓荒らしが減った影響で、グールの目撃は非常に少数となっていった。
だが、墓を封じられたグールは、今度は自らの手で人間を殺し、その死体を喰らうようになってしまったのだ───。
「グールの対応は、起きてからじゃ追いつきません。
奴らは夜の闇に紛れ、ヒソヒソと忍び行動する忍者ですよ。」
「やはり我々はグールに対し、"徹底抗戦"に踏み切るべきではないでしょうか?」
そう声を出したのは、ピシッとスーツを着こなすハワード長官の秘書兼代表取締役員の男性、トーマス・リチャード。
ハワードはリチャードの言葉に頭を悩ませる。
「とは言ってもなぁ…全州の支部と協力して監視体制を強化しても、グールは突然現れて人を襲う。
2日前の話だが、セントジョージのホテルに宿泊していたフランス人夫婦が、部屋の中で死体で発見された。
防犯カメラには人の姿すら影も形もなかったのにだ。」
「現場からは破れた窓ガラスと、グール特有の腐った小便みたいな激臭が漂い、その際火災報知器が発動して、アパートの住民が通報したことで判明した事件だ。」
ハワードはキャスターを回し、ペンを取り指で回していた。
「こっちが出来る限りのことはやってるが、未だ碌な情報もありゃしない……"徹底抗戦"となりゃ大統領の許可や、各省庁の長官達の協力が不可欠だし、それを受けるにはこっちも情報が必要だ。
徹底抗戦となれば軍が動く、その他費用も洒落にならない額だ…俺1人の権力で決められる問題じゃないんだよ。」
ハワードとリチャードは互いに沈黙している。
キャスターの回転する音が、唾を飲む音に合わさった。
ハワードは机に置かれた資料をざっと見渡すと、その内のとある新聞記事に目がいった。
「これはなんだ?地方の新聞か?」
新聞を手に取り、リチャードに聞く。
「あぁ、それはセントジョージでたまたま拾った新聞ですよ、おそらくセントジョージから30kmほど北西に離れた位置にある、アダマエロヒートという町の新聞だと思われます。」
ハワードは新聞の見出しから読んでいた。
喉を鳴らしながら新聞を読むハワード。
「聖なる炎から生まれた悪魔……か。
また地方宗教のオカルト記事か?──って言っても、この世の中マジであり得そうなのが恐ろしいな。」
冗談混じりのガラガラ声でそういうと。
新聞を机に置き、リチャードの方へ顔を向ける。
「これまだ名前ないんだろ?一応記憶には入れとこうと思ってな。
聖なる炎から生まれた悪魔…Demon holy flame……Holy Demon!あっいやDemonの響きが良くないな…Demon…悪魔…Devil──?
Holy Devil!これだ!!」
ハワードは机を叩き大きな声でそう叫ぶ。
するとハワードが新聞を持ち、リチャードにこう言った。
「リチャード!せっかくなら俺たちで見に行こう、これは業務上重要な休暇だ。」
そう言いながらリチャードの肩を軽く叩く。
「それって…その分の費用は出るんですか?」
リチャードが聞くと、ハワードは笑みを浮かべながら答えた。
「ん?そんなもの出ないぞだが、お前なら付き合ってくれるだろ??」
リチャードは半ば諦めと強制でそれを承諾した。
「ひさびさの旅…あー、現場勤務だ。」
ハワードが浮かれている中、リチャードは口を閉じながら部屋を退出し、その場を離れる。
ハワードは羽を伸ばす気分で、リチャードから渡された資料を読み漁っていた────。
───ユタ州 アダマ=エロヒートから約東に8km離れたメサの小さな遺跡跡────
外は暗い夜の闇が、真っ赤なメサを冷やしていた。
暗闇の中、少し離れた位置に白く輝くライトが見える。
土埃を立てながら近づくそれは、車体の大きなオフロードカーだった。
オフロードカーは遺跡の前に来ると停車する。
車の扉が開かれると、中からは茶色のローブを羽織った男性が現れた。
「もう被る必要もないだろ、陽は落ちた…これから6時間は安全だ。」
遺跡の中から1人の男性が現れる、それは青白い肌に爛れた皮膚を持つグールだった。
その言葉に、男性が反応しローブを脱いだ。
男性の肌は白い色をしていながら、カビのような緑色が混ざっていた。
「クセになるんだこれを被ると……まるで人間に戻った気分を味わえる。」
男性は遺跡から出てきた彼にそう言った。
彼は男性に対し喋りかける。
「まだ人間に戻りたいなんて思ってるのか?」
グールの彼は男性の言葉を鼻で笑い、言葉を続けた。
「いくら生きた鮮血を飲もうと、そんなものまやかしに過ぎない、鏡で見てみればいいお前の皮膚は腐っているんだから…俺たちと同じグールだ、もう自由だ人になりたいなんて言うな。」
彼の言葉を聞きつつ、男性は優しく答えた。
「違うんだボルト……私は人に戻りたいのではなく、人と"同じ"になりたいんだ。
人とグールの"メリットのみ"を共有したい…ただそれだけだ。」
男性はそう言うと、ボルトの手にとある新聞を握らせ、遺跡の中へと歩みを進める。
ボルトはその新聞を開いた───。
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【炎の悪魔が出現!!】
『神父を襲おうとするが逃亡』
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「いいネタだな....これは。」