第9話:決戦への序曲
レオンの隠れ家で準備が整うと、エイデンたちは緊張した面持ちで最終確認を行った。レオンが用意した地図と端末を前に、全員がその場に集まっている。通信が遮断される中枢エリアに向かうには、正確な手順が必要だった。
「ルートは一本しかない。ここを通るしかない。」レオンは地図上の細いラインを指し示した。「この地下トンネルを抜けると、中央管理棟の下層に出る。その後、エレベーターシャフトを使って中枢に侵入する。」
カレンが画面を見つめながら言った。「でも、このエリアは完全に監視下にあるはず。どうやって気づかれずに進むの?」
「内部の協力者が動いている間に、監視を一時的に無効化する。それが成功すれば、10分間だけ動ける隙間が生まれる。」レオンは冷静に説明を続けた。「その間にエレベーターシャフトを制圧し、上層にたどり着くんだ。」
ミカエルは心配そうに眉をひそめた。「10分なんて短すぎる。もし何か問題が起きたら?」
「その場合は自力で突破するしかない。」エイデンは迷いのない声で言った。「時間内に動くことが最優先だ。中枢にたどり着けば、プロトコルを直接停止できる。」
「わかった。」ミカエルは小さくうなずきながら、覚悟を決めた様子を見せた。
レオンが端末のボタンを押し、通信を暗号化する。「協力者からの合図を待つ。合図が来たら即座に行動を開始するぞ。」
エイデンは目を閉じて深く息を吸い込んだ。これまで数々の危険なミッションを乗り越えてきたが、今回の挑戦はそのすべてを超えるものだった。都市の命運がかかっているだけでなく、彼自身の過去とも向き合わなければならない。
しばらくの沈黙が続いた後、端末が微かに振動した。レオンが画面を確認し、短く告げる。「合図が来た。準備はいいな?」
エイデンは立ち上がり、スタンガンを手に取った。「行こう。」
カレンとミカエルもそれぞれ武器を手にし、後に続いた。隠れ家を後にし、彼らは地下トンネルへと足を踏み入れた。通路は薄暗く、冷たい空気が肌を刺す。水滴が時折壁を伝い、静寂を破るように音を立てて落ちる。
「このトンネルを抜けると、すぐに中央管理棟の下層だ。」レオンが後ろを振り返りながら言った。「そこからは慎重に動け。監視を無効化できるのは短時間だけだ。」
エイデンは無言で頷き、前方を見据えた。彼らが進む道は、アルカディアの未来を決定づけるものとなる。どんな危険が待ち受けているか分からないが、彼らにはもう後戻りする時間は残されていなかった。
やがてトンネルの終点にたどり着くと、そこには巨大な鉄扉が立ちはだかっていた。レオンが端末を接続し、暗号を解読しながら扉のロックを解除する。
「あと少し……よし、開いた。」鉄扉が重々しい音を立てて開くと、その先には中央管理棟の下層が広がっていた。
エイデンたちは静かにその空間に足を踏み入れ、周囲を確認した。巨大なパイプやケーブルが張り巡らされ、かすかな機械音が響いている。
「ここからが本番だ。」エイデンは小声で言いながら、全員を促して先へ進んだ。
彼らの目の前には、アルカディアの命運を握る中枢エリアが待ち受けている。その場所で何が起きるのか、誰も予測することはできなかった。ただ一つ確かなのは、彼らがこの戦いに全てを賭けているということだった。