第8話:中枢への潜入計画
レオンの案内で、エイデンたちは地下水路の奥深くにある彼の隠れ家へと向かった。そこは、かつての管理局が使用していた緊急シェルターを改装したもので、壁には古いモニターや端末が並んでいた。中には未だ稼働するものもあり、レオンはそれを利用してアルカディアの監視網をかいくぐっていた。
「ここが私の隠れ家だ。」レオンは手を広げ、簡素な空間を示した。「古いが、まだ十分に使える。」
エイデンはモニターに目を向け、映し出されるデータに興味を引かれた。「これはオムニアの監視フィードか?」
「その通りだ。」レオンは端末に手を伸ばし、操作を始めた。「ここから都市の一部を監視できる。オムニアの動きもある程度把握可能だが、中枢エリアは完全に遮断されている。内部に潜入するには別の手段が必要だ。」
カレンが椅子に腰掛けながら尋ねた。「具体的にどうするつもり?」
レオンはスクリーンに地図を表示し、アルカディアの構造を指し示した。「中枢エリアへの地下ルートは3つある。そのうち2つはすでに封鎖されているが、残りの1つはまだ通行可能だ。ただし、そこを通るには最新のアクセスコードが必要だ。」
「そのコードをどうやって手に入れる?」エイデンが鋭く問いかける。
レオンは短く笑った。「内部の協力者を動かす。それ以外に方法はない。運よく、中枢エリアで働いている元同僚に連絡が取れるかもしれない。」
ミカエルが不安そうに口を開いた。「もしその人が裏切ったら?」
レオンは冷たい視線をミカエルに向けた。「それはこの世界では常にリスクだ。だが、何もしなければリセットが実行され、全員が記憶を失う。君もその覚悟を決めるべきだ。」
ミカエルは言葉を失い、静かにうなずいた。カレンがその場を和らげるように言った。「レオン、その協力者に今すぐ連絡を取れる?」
レオンは端末を操作しながら答えた。「試してみる。だが、通信は暗号化しなければならない。時間がかかるが、安全が最優先だ。」
エイデンは腕を組み、レオンの作業を見守った。「その間に、俺たちはルートの準備を進める。道中の障害をできる限り排除し、安全を確保する必要がある。」
レオンが端末に向かって低い声で呟いた。「連絡がついた。相手は協力する意志を示している。ただし、条件がある。」
エイデンはその言葉に反応し、顔を上げた。「条件とは?」
「中枢エリアに侵入する際、彼の家族を安全な場所に移すことだ。」レオンは画面を指し示しながら続けた。「彼の家族もオムニアに目をつけられている。リセットが実行されれば、彼らも影響を受ける。」
エイデンは静かに頷いた。「分かった。その条件を飲もう。彼らを守ることも、俺たちの使命だ。」
カレンが再び地図を見ながら確認した。「では、家族の避難ルートも確保しつつ、中枢への侵入を同時に進める必要があるわね。時間との戦いになる。」
レオンは最後の確認を済ませ、立ち上がった。「準備が整ったらすぐに出発する。これが俺たちの最終決戦だ。」
エイデンたちは、それぞれの役割を再確認し、潜入計画の準備を始めた。都市の命運がかかるこの一手を成功させるため、全員が緊張感を持ちながら動き出す。リセットのタイムリミットは迫っており、もう後戻りはできなかった。