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「サーベルか。俺のコレクションにはこのタイプはまだなかったな……サーベル……サーベル?」


 どこかで見た記憶は自分のものだっただろうか。

 つい最近このサーベルをどこかで見た気がする。

 雪原、狼、氷の居城……あれは夢だったはず?


「どうした?」


「俺はサーベルを見るのは初めてだよな?」


「コレクションにないのならそのはずだろう? ……やはり何か記憶が?」


「また小骨がひっかかっちまったな」


「ちょっと振ってみたらどうだ? 使えば思い出すかもしれない」


「だったら手合わせしたいとこだな」


 リコは“そう来なくては”という顔をして「勿論」と言った。


 数分後、二人は広い中庭の真ん中で対峙した。

 どこから聞いたのか城の兵やら使用人やらがどんどん見物客として集まって来る。

 カイルとリコの間に立ったエルヴィンまで澄ました顔を取り繕ってはいるが興味津々のようだった。

 十五年ぶりの魔王と勇者の対決となればそうだろう。


「純粋に剣だけのぶつかり合いだ。それでいいか?」


「それでいい。ただ打ち合っても面白くないな。何か勝敗がつくもんでもないか?」


 リコも乗り気らしい。

 十五年前に一戦を交えたと言うが、一体どんな戦いだったのだろうか。


 リコが周囲を見渡すと、女官がつけているリボンが目に入った。


「そこの二人、そのリボンをくれないか」


 指定された女官二人が顔を見合わせ、不思議そうにリボンを差し出す。

 リコはその一本をカイルに渡すと、服のボタンホールに端を通して結んだ。ちょうど心臓のあたりからリボンが垂れている。


「こうしてリボンの一部でも切り裂いた方が勝ちというのはどうだ?」


「いいねえ」


「リコ様、それは流石に危険ではないでしょうか」


 エルヴィンが口を挟んだが、リコもカイルももうやる気だった。

 仕方なしにエルヴィンが両者の間で「はじめ」と声をかけると、両者睨み合い……などということはなく、すぐに中庭に金属音が響いた。


「重っ。お前なかなか一撃が重いな」


「当たり前だ。体は小さいがこれでも一応魔王だからな」


「十五年前の雪辱、晴らさせてもらうぜ」


 リコの愛用するショートソードが、それを受け止めたカイルのサーベルから離れた。

 家臣たちが湧きたつ中、その細い腕のどこからそんな攻撃を出すのかはわからないが、一撃一撃が重い斬撃が最初からカイルを押した。

 

 傍目には大柄な男が子供の剣術ごっこで負けてやっているように見えるかもしれない。その異様なスピードさえなければ。

 カイルがあっという間に庭木に追い詰められると、リコが勝機とばかりに大きく胸元を薙ぎ払った。

 だがカイルもその攻撃は予測していたのか、斬撃が届く前に避けるとリコの剣は木の幹に一筋の傷を残した。

 少し動きに隙が出来たところで今度はカイルの反撃が始まった。


「歳は取ったはずだが若造の頃より技術は高いな」


 エルヴィンが隣で一緒に戦局を見守る狼の獣人、イェディルに話しかける。

 イェディルが生まれた時すでに先王はいなかったが、剣を寄贈したのは彼だ。

人間換算で70歳近い彼は老齢だが、今も狼の鋭い眼光は衰えを感じさせない。


 各領地は前魔王がダンジョンに消えるその前に全て代理人がたてられていた。

 イシャスの代理人はすぐに亡くなってしまい、後からリコがたてた代理人が彼だ。

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