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「あー、あったあった。ほら」


「白真珠」


「こいつは調合用で調度品としては品質は劣るが、リッチがやたら喜んでたろ? あっちじゃ貴重なんじゃないか?」


「あっちにあるのは緑青色なんだ。カイルの目のような」


 リコはそう言いながら棚の品を眺めている。

 カイルが自分の目の色で例えたのを聞いて少しだけ意外そうな、そして嬉しそうな表情を浮かべたのは見ていないようだった。


「あとはそうだな……なんか面白そうなのあるか?」


 カイルは棚ではなくリコの横顔を見ながらそう尋ねる。

 リコは真面目に棚の商品を吟味しているようだった。


「この青い石はなんだ?」


「それはサファイアだな。これはオーブの浄化用か」


「ピンクではないのか」


「こっちにもピンクはあるが青の方がメジャーだな。じゃあそれも。あとは?」


 リコが店内を回りならがこれ、これと指を差したり、時折質問しながらいくつか品を選ぶと会計を済ませ店を出た。

 かなりの額に店主は大喜びしたようだ。


「じゃあこれはリコのな」


 店の前で買った物を革袋に押し込むと、その中から一つだけ小さな包みを取り出した。

 リコが黙って受け取り中を開ける。

 袋をさかさまにし、手のひらに出て来たのは白真珠と小さな青いサファイアが鈴なりに垂れ下がった耳飾りだった。


「なぜ?」


「前にリッチにあげちまっただろ? その代わり。白真珠と青サファイアならそっちだとレアっぽくないか?」


「レアだが…」


 リコが困惑の表情を浮かべる。「似合うと思うぞ」と言われさらに困惑した。

 持ったまま突っ立ているわけにもいかず、小さく揺らぐ声で「ありがとう」と言うといつもの緑青色の真珠を外し耳につける。

 鈴なりの宝石はリコが動けば小さく揺れた。


「お、いいな。やっぱ目の色と合うな。なんか魔法効果があるらしいがろくに聞いてなかったな。なんだっけな……」


 大柄なカイルはそう言いながら屈んでリコの耳飾りと目を交互に見た。満足そうな顔で頷くとさっさと歩き始めてしまった。

 リコも急いで歩き出す。顔が熱いような気がして思わず押さえたが、革手袋の上からではよくわからなかった。


 ダンジョンまでの僅かな距離を行く間に素材を売買する露天商に声をかけられた。

 カイルは露店の前を歩けば大体どこかしらの店主に捕まるのが常だった。

 頼めば彼は容易く素材を手に入れてくるので、品薄になれば誰でも彼に声をかけてくるのだ。


「おいカイル、ダンジョン行くのか?」


「まあな」


「暇だったら“結晶化した大腿骨”頼むよ。大陸でバカ売れでさ」


「悪ぃ、二、三日戻らないんだわ」


「なんでえ、随分潜るな。今が売り時だからな、一攫千金だぞ」


 露店の主の言葉に手を振るだけで応えると、ダンジョンへと入った。

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