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「リコ、隊長が戻るまでシェアハウスにいなさい。あっちじゃ落ち着かないでしょ? たまにはそうやって自分の気持ちに向き合うのも悪くないわよ。考えても答えなんて出ないのだけどね」


「答えが出ないのに向き合うのか? カイルには考えても意味のないことは考えるなって言われた」


「今はいいのよ。その工程が大事なの。隊長が戻ってきたらあなたがシェアハウスにいるって伝えるわ。たまにはツンツンしてないで甘えちゃいなさい」


「あ、あまえ?」


「そう、甘え」


「甘えるとは?」


「んー、抱っことかかしら?」


「子供ではない!」


「あら、隊長の包容力はなかなかよ。私も随分お世話になったから」


「はぁっ!?」


 そう言うとニーナは妖艶な笑みを意味有り気に残し本部に戻った。

 その姿をリコが茫然と見送る。


 ちょっと意地悪な言い方だったかな、とニーナは思うがリコが素直に甘えられればいいかと思う。

 リコがいつも寂し気な表情を浮かべているのをニーナは知っている。

 そしてカイルがどんな目で彼女を見ているかも知っている。


「リコ、どうだったにゃ~?」


「思春期ちゃんね。心が迷子なのよ」


「多分リコは私たちよりとんでもなく年上にゃよ」


「人生が長いことと経験が深いことは別でしょ? 甘え方を教えてきたわ」


「甘えにゃ? よしよしでもするにゃ?」


「そう。私たちも隊長によくしてもらったでしょ、抱っこ」


「子供の頃の話にゃ…」


 自分の体をぎゅっと抱きしめるニーナにキャスが呆れ顔を浮かべた時、怪鳥クゥが鳴き喚いた。

 ウォーレンが無言でオーブを確認し、ハーキスが装備を整える。


「依頼者は……ああ、砂漠で砂集めの連中か。……まさかアリジゴクじゃないよな!?」


 ウォーレンが無言のまま救助用ロープを体にかけ、さらに特殊な杭を装備する。

 ハーキスも同じ物を装備し、キャスが砂漠対策用のポーチを二人に渡した。


「無理しちゃだめにゃよ。契約上アリジゴクは含まれないにゃ」


「まあやれるだけはやる。別件なことを祈っといてくれ」


 二人はクゥが鳴いてから三分後、大急ぎで救助地点へと向かった。


 一方現場に居合わせたカイル達は一足早く救助を開始する。

 救助用の装備があるわけではない上に、要救助者の数は六人。

 居合わせたからと言って絶望的な状況はあまり変わらないように見えた。


「フィル、あと十五分もしないでハーキスたちが来る。要救助者を引き渡してくれ」


「分かりましたけど隊長は!?」


「ちょいと潜って来る。絶対真似すんなよ」


 本部でクゥが鳴き喚いた頃、カイルは呼びかけが間に合わず六人全員がアリジゴクの巣に落ちたところで到着した。

 最後に落ちた一人は手が届いたのでそのまま引き上げたものの、五人は既に道具無しでは無理な場所まで落ちていた。


 最初の一人が落ちた時、慌てて二人目が助けようとして自分まで落ちた。

 三人目と四人目はそれがアリジゴクであると気づかぬまま踏み入れてしまい、最後の二人はまだ手が届くと思い手を繋いで一人が下りた。

 だがその時巣の主が現れ、それに驚いた五人目が手を離し落下、六人目も驚きうっかり足を一歩踏み入れたら最後、そのまま飲まれてしまった。

 アリジゴクの巣には絶対に近付かない、作業をするなら命綱を付けておくのが鉄則というのを無視したルーキー集団のミス。

 

 真似するなと言ったカイルはフィルが返事をするより早く自らアリジゴクの元へ飛び込んだ。

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