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フィル:まだダンジョン島に渡って来たばかりのルーキーの少年。にも関わらずソロでダンジョンに挑んでしまう無謀さ。低レベルのモンスターならテイム出来る様子。

「ほら、そいつとバイバイしな」


「そうしたいんですけど、なんか爪でおもいっきり掴まれちゃって……」


「びびりだなあ。同じ種でも個体差あるからな。もう少し見てテイムするといい」


 フィルが赤子をあやすように背中を撫でてやるが、臆病なクリーピングストーンは離れる様子はない。

 仕方なくそのまま外の景色が広がる入口まで撫でてやっていたが、それでもまだしがみついていた。


「ねえ、君はもうここでお別れしないと」


 クリーピングストーンはまだあの成り損ないがその辺をうろついているとでも思っているのか、とっくにテイムは解除しているというのに戻りたくないようだった。


「ほら、びびってねぇでこっちに来い。入口近くならあんなもんと出くわさねえよ」


 カイルがクリーピングストーンに手を伸ばすと、フィルの顔を一度見上げてから素早くカイルの腕にしがみついた。こっちの方が安全そうとでも思ったようだ。


 ダンジョンで生まれたモンスターは、大きく分けて二種類になる。

 

 その分け方とは、人語を操るかどうか。

 例え岩陰を這いまわりエサを探しているようなスライムでも人語を話すものはいる。

 数はそう多くないが、人語を操れるモンスターは多くの場合真層界の住人になることを選ぶ。

 先ほどのリッチたちは、ダンジョンでの生活を選んだようだった。

 そして人語を操らないほとんどのモンスターは人間界で言うところの野生動物のような扱いで、それらはダンジョンを住処とし外へ出る事はまずなく、冒険者に狩られる対象でもあった。

 そしてテイムできる対象は通常はこの野生動物扱いのモンスターの事を指す。


 カイルはフィルから自分に乗り換えたクリーピングストーンを何故かそのままリコに差し出した。


「なぜ私に」


「背中なでなでしてやってくれ」


「なぜ私が」


「一番効果ある」


 リコが眉を寄せつつその背中を撫でる。

 言葉が聞こえたとしたら、物凄い勢いで「ありがとうございます! ご褒美ありがとうございます!」と言っていたかもしれない。


 石のようなトカゲはやっと安心したのか、地面に降ろすと礼でも言っているかのように頭を何度か振って、あっという間に岩の間に潜っていった。


「あの、リコさん? ですか? って、エルフなんですよね?」


「そうだが」


「どうしてテイムされているんですか? 普通ヒトはテイムできないんじゃ…」


 フィルがカイルの顔を見る。

 モンスターを従属させるテイマーにはテイムされたモンスターの区別がつく。

 リコは真層界の住人だがヒトであり、当然人語を操る者なので本来ならテイムすることは出来ない。


「ちょっと色々な」


「それに、一体をテイムしていたら他はテイムできないのにどうしてさっきリッチに命令できたんですか? あのリッチだって人語を話していたし」


「まあそれも色々な」


「あとオーブも無しにどうやって魔法使ってるんですか。エルフには出来るんですか」


「質問多いなっ」


 帰り道ひっきりなしに質問され、曖昧な返事を返すうちにようやく本部に到着した。

 フィルは救護室で一泊させてもらうことになり、リコに怪我を診てもらった後すぐ寝てしまった。

 随分と質問攻めにしていた割に疲れていたらしい。


「お前も休め」


「うむ……」


 リコは何か考えている様子だった。

 棚に救助用オーブを戻す手は、心ここに在らずと言う感じで随分とゆっくりだった。

 カイルの手が横から伸びて、オーブの入っていた革袋を取り上げた。


「成り損ないのこと考えてんだろ。今考えてもしゃーねぇよ。寝ろ」


 残りのオーブを戻しながらカイルが言った。出動中に別の救難信号が入った時のために、救出時に他の隊員がいない時にはこうして持ち歩く。何かあればオーブに反応が出る。

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