大事。 2
「大丈夫だ。多分、大事に、されている、はず?」
ラウラとリゼルは同時に顔を見合わせた。
本当に大事にされていなければ由々しき事態だし、大丈夫と言いながらこの歯切れの悪さ。
「ねえ本当に大丈夫? どんな風に勇者は接してるの?」
「私ちょっと心配になっちゃった。リコ様の大事にされてるエピソード聞かないと納得できないわ」
何か話してと言われ困惑する。
日常生活のことでいいのだろうか。
日常生活で彼女たちが納得できるような出来事はあるのだろうか。
「カイルはあちらではダンジョンで窮地に陥った冒険者を助ける救助隊をしている。私はそれに同行することが多い」
「それってやらされているの?」
「いや、ダンジョンの見回りも兼ねているし……」
「どんな救助なの?」
「どんな……成り損ないに襲われている少年を助けたことがある。少年は今はカイルに懐いて救助隊候補として一緒にいる」
二人は顔を見合わせると「ガラは悪いと聞いたけど人は良い?」と囁き合う。
「あとは?」
「あとは? ……えっと……危険な採掘に行く女を救助に行った時、依頼料の方が高くついてしまうとこだったのを、わざわざ目当ての石のありかを教えていた」
二人が「お人好し?」と囁く。
「生活面では? 救助以外はどうなの?」
「生活? ……うーん……あ、少し前にエルフ風の料理を作ってくれた。人間界の材料で器用に再現していた」
二人が顔を寄せ合い「生活力が意外とある?」「しかもわざわざエルフ風に」と吟味する。
さらに他を促す。
「私がビーハットの香りを探していたら人間界で似た香りの物を教えてくれた。言ったことがなかったのになんで分かったのか今もわからない」
「リコ様いつも湯浴みで使ってない? 髪から香りがするわ」
「確かに使っているが……でもカイルにしてみれば十五年前の話だぞ?」
「その十五年前の記憶で料理も作ったんでしょ?」
「確かにそうだが……」
「ねね、何かプレゼントされたりとかはないの?」
「プレゼント……この髪飾りと耳飾りなら……」
二人がリコの耳で揺れる飾りと、髪色に同化しそうなアクアマリンのコームを見る。
「リコ様の色に凄く似合ってる」
「エルフなら皆似たようなものだろう」
「違うわ、勇者はリコ様しか知らないんだもの。リコ様を見て選んだのよ。それに私ならアクアマリンは目立たなくて好きじゃないけど、リコ様は目立つものはあまり好きじゃないでしょう?」
「そうよ、ちゃんとリコ様の好みを把握した上だわ」
「ねえ、ねえ他は!?」




